死姦遊戯

 譲治はオナニーをしていた。自宅の部屋で1人っきりでいそしんでいる。譲治は若い男だから、オナニーをしてもおかしくは無い。問題はズリネタだ。
 譲治の前には、写真の載った本がある。下腹部に棒を突き刺された女の写真が乗っていた。腹が裂けて内臓が飛び出ている。譲治の前にある本は、東南アジアで行われた戦争と虐殺について書いている本だ。虐殺された女の写真を見てオナニーをしているのだ。
 譲治はうめいた。ティッシュの中に精液をぶちまけた。しばらくの間、荒い息を吐いていた。
 「また、やってしまった」
 譲治の顔には嫌悪が浮かんでいた。

 譲治には異常な性癖があった。虐殺に対して性的興奮を覚えるのだ。
 鬼畜な性癖に目覚めたのは、中学生のときだ。アニメやコミックで、女が痛めつけられるのを見て欲情するようになった。血で汚れていく女を見て興奮した。臓物が吹き出るシーンがあると、ペニスが猛り狂った。なぜ、虐殺で性欲を感じるようになったのかは分からない。気がついたら、鬼畜な性癖を持っていた。
 高校生になったら、ますます性癖がエスカレートした。ホラー映画がズリネタとなった。人間が、斧やチェーンソで虐殺されるシーンを見ながらオナニーをした。戦争や虐殺を撮影した写真もズリネタとなった。下半身が吹き飛ばされた人間の写真を見ながら、ペニスをしごいた。
 譲治は、高校生時代には世界史を熱心に勉強した。世界史の教師は譲治に感心し、賢者は歴史から学ぶと言う、お前もがんばれと励ました。譲治は、そんな殊勝な心がけで歴史を学んだわけではなかった。歴史にはおびただしい数の虐殺が記録されているから、熱心に学んだのだ。高校生時代の譲治な愛読書は、スエトニウスの「ローマ皇帝伝」だ。この本には、ネロやカリグラといった暴虐な皇帝の悪行を詳しく書いていた。陵辱と虐殺に励む暴君たちの姿に、譲治は興奮した。
 自分が異常だという自覚はあった。譲治は、自分の性癖を隠した。クラスの男子と猥談をする時は、でかい胸がいい、太ももがそそるなどと普通のことを言った。本当は切り開かれた胸や血で汚れた太ももに興奮するのだが、人前では決して言わなかった。
 大学生時代は、自分の性癖を必死に押さえなくてはいけなかった。大学時代に、1人の恋人が出来た。話をしている時は良かった。問題はセックスだ。恋人の血みどろの姿を想像して興奮した。恋人の腹を割き、臓物にペニスを突っ込む事を想像して欲情した。想像するだけではなく、実際にやりたくなった。実行に移さないように、自分を抑えなくてはいけなかった。恋人を虐殺する事を恐れ、セックスをする事はできなかった。セックスレスの譲治との関係をつまらなく思った彼女は、他の男と付き合い始めて譲治を振った。
 まともなセックスができる様になりたいと思い、譲治は風俗に行こうとした。バイトでためた金を持って風俗店の前まで行ったが、頭の中に浮かぶのは風俗嬢を絞め殺しながら犯す自分の姿だった。結局、風俗店には入らずに引き返した。
 譲治は、自分の性癖を10代の不安定な時期に起こる一時的なものだと思いたかった。譲治の期待は裏切られた。20歳を過ぎても、鬼畜な性癖は収まらなかった。ひどくなるばかりだった。いつか実行に移すのではないかと、譲治は自分を恐れた。

 譲治は、窓口での対応にひとまず区切りをつけた。譲治は、正規雇用の職員として市役所の国保年金課で働いていた。今対応していた人は、退職後の健康保険の切り替えの手続きに来ていた。譲治は、その人が国民健康保険に入った場合の保険料を計算した。健康保険時代の保険料を聞き出し、国民健康保険の保険料と比較した。その結果、国民健康保険に入ったほうが、健康保険を任意継続をした場合よりも保険料が安い事が分かった。譲治は、窓口に来た人に分かった事を噛んで含めるように教えた。説明が終わると、退職後の年金の切り替えをするつもりなのかを尋ねた。相手の意思を確認すると、年金の担当者の所に誘導した。窓口に来た人は、感謝しながら席を立った。
 譲治の職場での評価は良かった。市民に対して、分かりやすく丁寧な対応をした。それでいて仕事をするスピードも、そこそこの速さを保っていた。市民に対してだけでなく、同僚に対しても丁寧に対応した。
 「頼まれた資料を持ってきました」
 紺色のスーツを着た青年が、譲治に話しかけた。
 「ありがとう、助かるよ」
 譲治は、にこやかに礼を言った。譲治の前にいる青年は、譲治の部下のようなものだ。半年前に、臨時職員として市役所で働き始めた。最低賃金より少しましな賃金で働いている、いわゆる官製ワーキングプアだ。待遇が悪いにもかかわらず、青年は喜んで働いていた。譲治が、辛抱強く丁寧に仕事を教えたからだ。青年は上司と同僚からいじめを受けて、前の職場を追い出さ
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