ハイオークは少年の肉奴隷

 モニカは、畑の中を通る道で馬車を進めていた。領主であるアガタが領内の見回りをするのに、付き従っているのだ。アガタは、馬車の中でふんぞり返りながら畑を見回している。
 畑では、農民たちが麦の種を植えていた。みな忙しそうに働いている。だが時折、馬車の方を見ていた。その度に、モニカの顔は赤くなってしまう。
 彼女たちが乗る馬車は尋常では無かった。白く塗られた馬車は、金でふんだんに装飾してある。それは華麗を通り越して悪趣味なほどだ。馬車を引くのは白馬であり、その馬も金で装飾されている。田舎道でこんな馬車を走らせたら、正気を疑われるだろう。
 アガタのそば仕えにして御者であるモニカの格好も、まともでは無かった。彼女は、革とベルトで出来た「鎧」を着ている。鎧と言っても、露出度が高すぎて防御の役には立たないものだ。伝統的なオークの格好だからという理由で、アガタに着ることを強要されているのだ。しかも、その上に赤いマントを羽織っている。これもアガタの命令だ。
 モニカは、羞恥を煽る遊びをさせられている気持だった。残念ながら彼女は、このような遊びで性的興奮を得る性質ではない。顔を赤らめているオークは、うつむきながら馬車を操っていた。
「今日は良い天気だ。気持ちが良い」
 モニカの主君であるハイオークは、満足そうに言い放った。

「止めよ!」
 アガタが大声で命令した。モニカは、手綱を引いて馬車を止める。彼女は、何事かと思い後ろを振り返る。
「あれを見よ」
 モニカは、アガタの指さす方を見た。そこにはオークの木がある。ハイオークであるアガタの領内では、オークの木が数多く植えられている。自分にふさわしい木だという理由で、アガタは植えることを命令しているのだ。その木に1人の人間の少年が登っている。
「他の者が真面目に仕事をしているのに、遊んでいるとはけしからん」
 それはあなたのことでしょう、と言いそうになる。だがモニカは、かろうじて言葉を飲みこむ。
「子供ですから、遊んでいるのでしょう」
「子供でも働くことが、我が領内の決まりだ。怠け者にはお仕置きをする必要がある」
 そう言い放つと、アガタは馬車から飛び降りた。アガタは、ふんぞり返りながら体を日に晒す。彼女は、大柄な体をしており、豊かな胸が目立ち肉付きが良い。褐色の肌は健康そうであり、彼女の筋肉を際立たせている。肉感的な顔は整っており、傲然とした表情が似合っている。彼女の豊かな銀髪の下から、黄色い瞳が強い光を放っている。これだけならば、領主にふさわしいかもしれない。
 だが、その格好は領主とは思えない物だ。黒革と猪の毛皮、そして猪の骨で出来た服を着ている。しかも、肌のほとんどを露出させている。頭には、猪の頭蓋骨を兜のように乗せているのだ。そして目が悪くないのに、左目には黒い眼帯を付けている。アガタによると、これらの格好はハイオークの伝統的な格好なのだそうだ。その格好で、金糸を刺繍した紫のマントを羽織っている。
 モニカは、アガタから目をそらした。いつ見ても恥ずかしい格好だ。アガタは諸侯の1人であり、皇帝に謁見することが出来る。彼女は、この格好で皇帝に謁見するのだ。そのお付として、モニカも宮廷に出た。露出度の高い「鎧」を付けてだ。モニカが泣きそうになったのは、1度や2度ではない。
 アガタは、少年が登っている木にズカズカと歩いて行った。彼女の獣毛の生えた耳は震え、尻尾は左右に揺れている。木の下に着くと大音声を上げる。
「怠け者よ、降りて来い!他の者が働いているのに不届きな奴だ!仕置きしてくれる!」
 少年は体を震わせた。そのまま木にしがみつく。
「貴様、領主である私の命令に従わぬか!早く降りて来い!降りろ!」
 アガタはわめき散らすが、少年は木にしがみついている。
「アガタさま、あの子は怯えていますよ。もっと優しく声をかけた方がよろしいですよ」
 だがアガタは、臣下の者の話を聞かない。後ろに10歩ほど下がると、前かがみになる。そして木に突っ込んで体当たりをした。派手な音をして木が揺れる。少年は悲鳴を上げる。
「おやめ下さい!あの子が落ちてしまいます!」
「バカか?落とすためにやっているのだ!」
「落ちたら、ただではすみませんよ!」
 アガタは、モニカを突き飛ばした。そして再び木に体当たりをする。
 少年は、木から手を離してしまった。彼は落ちてしまう。少年の体は、アガタの真上に落ちる。
「フギャッ!」
 アガタは、猫が踏みつけられたような声を上げた。彼女は、そのまま伸びてしまう。少年も目を回している。
 モニカは、ため息をつきながら見つめていた。

 モニカは、まず少年の方を見た。アガタは後回しだ。少年は目を回しているが、外傷は無い。頭も打っていないようだ。モニカは安心する。
「君、話は出来る?」
 
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