下っ端兵士は、魔物にお持ち帰りされました

 俺が、ここで暮らすようになったいきさつを聞きたいのかい?それだったら、里に同じような境遇の奴がいるから、そいつに聞けばいい。俺の話を聞きたいだって?う〜ん、俺は、話をするのが苦手なんだけどなあ…。
 まあ、酒をおごってもらったんだし、話してみるか。ただ、うまく話せないと思うから、その辺は勘弁してくれよ。

 俺は、北にある国で暮らしていたんだ。海を渡った北の国さ。俺はその国で農奴だった。毎日、領主さまの家来に殴られながら畑を耕していたのさ。
 もう3年前になるが、ある日、俺の所に領主さまの家来が来たんだ。いきなり俺を殴ると、俺を引きずって荷馬車に放り込みやがった。そして領主さまの城まで連れていかれたんだ。
 城に着くと、俺のような農奴たちが大勢集められていたよ。みんな、いきなり連れてこられたらしい。俺たちは、オドオドと辺りを見回していたね。そんな俺たちに、えらそうな態度の兵隊が怒鳴り散らし始めた。俺たちを兵隊にしてやると言い出したんだ。
 俺は、腰を抜かしそうになったね。俺の回りには、本当に腰を抜かした奴もいたよ。いきなり兵隊になれと言われたら、そりゃあ驚くだろ?第一、畑はどうなるんだ?家には俺の親父とお袋がいるが、2人だけでは畑は荒れちまう。領主さまは、情け容赦なく税を取り立てる。親父もお袋も飢え死にしちまうよ。
 だが兵隊たちは、俺たちを鞭で打ち、棒で殴りやがった。俺たちは黙るしかなかったよ。
 それからは、俺は城で兵隊の訓練を受けた。集団で動いたり、槍を前へ突き出したりする訓練を受けたよ。俺は、不器用だからよく殴られたよ。おかげで顔が膨れ上がったね。その上、鼻がつぶれちまった。ほら、ごらんの通りさ。
 城での訓練はひと月程度だ。その後、戦場へ引きずられて行ったのさ。あの程度の訓練で戦場へ放り込んでも、ろくに役に立たないよ。まあ、俺たちは盾代わりだったんだろうね。
 その戦場に行く途中で、俺たちの目的地は魔物が支配している国だと分かったよ。それを知った時は、本当に腰を抜かしたね。俺たちに魔物と戦わせようとしているんだ。俺はただの農奴だぞ。まともな戦い方なんて知らねえよ。ちょっと訓練を受けただけだ。
 俺は逃げることを考えたよ。魔物に食われて殺されるくらいなら、どこでもいいから逃げだしたかったんだ。でも兵隊たちは、俺たち農奴の兵隊を見張ってやがる。逃げたくても逃げられやしねえよ。逃げようとした奴もいたが、捕まって首を吊るされちまった。
 俺は神さまにお祈りをしたよ。どうか生きて帰らせてくださいってね。でも、神さまに祈っても無駄なのかな?今まで、祈っても何にも良くならなかった。それに、軍についてきた神父は、これは神さまのための戦いだと言ってたよ。神さまは、俺を戦場に叩き込んだらしいね。
 震える俺たちにとっては、軍に勇者さまがいたことは数少ない希望だったよ。少し見たことがあるけど、立派に見えたな。銀色に輝く鎧を着て、白馬に乗って進んでいたよ。俺たち農奴のようにヒョロヒョロしていなくて、立派な体をしていたな。騎士たちは大勢いたけれど、勇者さまの立派さにはかなわないね。
 おまけに、勇者さまには3人の女が仲間にいたんだ。1人は聖騎士、1人はシスター、そしてもう1人は魔術師さ。みんなきれいな顔をしていたよ、こんなきれいな女が戦えるのかと思ったけれど、これがどれも強いんだ。勇者さまと女たちが戦うと、魔物たちはすぐに逃げていった。俺たちは、バカみたいにあんぐり口を開けて見ていたね。
 俺たちは、「勇者さまに栄光あれ!」って叫んでいたね。だけど、勇者さまたちにとっては、俺たちのことなんてどうでもよかったらしい。たまたま、勇者さまたちが俺のそばを通りかかったことがあったよ。俺はすぐにひざまずいた。でも、勇者さまたちは見向きもしなかった。たぶん、石ころみたいな物と見なしたんだろうね。
 まあ、勇者さまがいても、俺たちはあっさりと負けたよ。俺たちは逃げていく敵を追いかけていたんだが、いつの間にか魔物たちに囲まれていたんだ。どうやら、俺たちは敵に誘い込まれたらしいね。魔物たちは、負けたふりをしていたんだ。
 それからは、わけが分からなかったね。どっちに敵がいて、どっちに味方がいるのか分からなかった。俺は、戦うことも逃げることも出来ずに、戦場をフラフラしていた。そうしたら、下半身がヘビの魔物につかまったのさ。そこで俺はションベンを漏らしながら気を失っちまったよ。

 気が付いた時は、魔物たちの捕虜になっていたよ。その時は混乱したね。なぜ、すぐに殺してしまわないのか分からなかったんだ。だが、俺を食うために殺すのを先延ばしにしているんじゃないかと思いついた。俺はブルブル震えてしまったね。
 俺のすぐそばには、俺を捕らえたヘビの魔物がいた。俺は、そいつ
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