相変わらず男臭い教室だ。右を見ても、左を見ても、前を見ても、後ろを見ても男がいる。どいつもこいつもむさ苦しい。いい匂いのしそうな女は、ほとんど見当たらない。当たり前だ。ここは工業高校の教室だ。
そろいもそろって女には縁のない奴らだ。当然のことながら、俺も女には縁が無かった。俺たちはやりたい盛りだと言うのに、やらせてくれる女はいなかった。ズリネタを見ながら扱く毎日だ。
まあ、教室に女がいたとしても、俺は女にはモテないだろう。小学校、中学校を通して女には嫌われていた。だったら、女かいない方が気楽だ。せいぜい男臭い学校生活を楽しんでやるさ。
突然、俺の背中に抱き付く奴がいた。そいつは柔らかい体を押し付けながら、俺の首元の臭いを嗅ぐ。
「ああ、たまらないよー。剛士のえり元の臭いだ。臭えよ、臭えよー」
俺は、そいつを振り放そうとする。だが、そいつはヒルのようにしがみついて離れない。俺が体を揺さぶるとそいつの小柄な体は揺れるが、揺れるだけで離れない。そして俺の臭いを嗅ぎ続ける。
前言を修正した方がいいだろう。学校には、女が全くいないと言うわけでは無い。ここ数年のことだが、工業高校に入学してくる女もいるのだ。結構なことだと言う奴もいるかもしれないが、そいつらは人間の女ではない。魔物娘だ。
俺にしがみついている奴も魔物娘だ。青葉美央という名の女で、あかなめという魔物娘だ。俺と同じクラスに所属し、何かと俺に付きまとってくる。俺の臭いが好きなのだそうだ。恥ずかしげも無く「やらせろ」と俺に言ってくる。俺は先ほど、女には縁が「無かった」と過去形で言ったのは、こいつが付きまとってくるからだ。
だったらいいじゃないか、文句を言うな、と俺に言う人もいるだろう。その人たちは、あかなめという魔物娘のことが分かっているのだろうか?
「ああ、いつまでも臭いを嗅いでいたいよ。あんたの垢を舐め回したいよ」
青葉は、うっとりとした顔で言いやがる。口からはよだれがこぼれそうだ。まわりにいる野郎どもは、引いた表情で俺たちと距離を取っている。
あかなめという魔物娘は、男の臭いを嗅いで垢を舐めることを喜ぶ魔物娘なのだ。外見は人間の女と同じだが、何十センチもある舌を持っており、その舌で男の体を舐めようとするのだ。呆れたことに、腋やチンポの臭いを嗅いで舐め回すことが好きなんだそうだ。
うちの工業高校に来る魔物娘は、こんな癖のあり過ぎる奴ばかりだ。同じクラスには、ベリンダ・エルカ―ンという名の魔物娘がいる。こいつはハエの魔物娘ベルゼブブだ。席に座りながら深呼吸をして「男の臭いがたまらねえ」と言ってやがる。
確かに、俺たちはモテない男だ。だからと言って、「チンカス最高!」と人前で叫ぶあかなめやベルゼブブに付きまとわれなくてはいけないのか?俺たちはそんなに罪深いのか?
俺は、青葉を離そうと努力を続けた。だが青葉は、俺の顔に頬ずりをしながらしがみつく。柔らかく滑らかな感触が、俺の左頬を覆う。お前は何なんだと、俺は怒鳴ってしまう。
「それは、臭い男を愛する魔物娘さ。あんたが臭いを振りまいているのが悪いのさ。諦めなよ」
俺はうんざりした。俺は、太っているために汗をかきやすい。そのために体が臭ってしまう。しかも時間にルーズなため遅刻しそうになり、朝は自転車を力いっぱいこいで登校する。そのために学校では汗臭くなってしまうのだ。
学校に来てからは、休み時間にボディーシートで体を拭き、制服やシャツには消臭スプレーを吹き付ける。もちろん家に帰ったらシャワーを浴びるし、母はまめに洗濯をしてくれる。制服もクリーニングに出している。それでも学校では臭ってしまうのだ。
俺は、仕方なく香水を付けようとして、グリーン系の香水を買った。だが、遅かった。青葉に目を付けられて、付きまとわれる羽目になった。「体臭の尊さが分からないの!」と怒鳴られ、俺の香水は青葉に取り上げられしまった。分かるわけねえだろ!
「あたしは誰でもいいわけじゃないんだよ。ちゃんと選んでいるんだからね」
どういう基準で選んでいるんだと、俺は問いただす。
「あんたが汗臭くて、土や泥で汚れていないからさ。いくらあたしでも、土や泥は舐められないからねえ」
青葉によると、男の汗と垢を舐めたいが、外で活動する体育会系は無理なのだそうだ。ラグビー部の部員は汗まみれになり臭くなるが、土と泥が付いているために舐めることは出来ない。だからと言ってシャワーを浴びさせれば、汗と垢も取れてしまう。
汗まみれになっているが土や泥は付いていない俺のような奴は、青葉のようなあかなめやエルカーンのようなベルゼブブの好物なのだそうだ。つくづく迷惑な話だよ。
ちなみにラグビー部のマネージャーは、土の精霊である魔物娘ドロームだ。ラグビー部の部長は
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