空は、相変わらず七色に光っていた。赤く染まったかと思うと、黄色に変わり、緑色に変貌する。少し空から目を離せば、色は変わっている。雲は、青色になったりオレンジ色になったりしているのだ。
アランは、空から目をそらした。彼は警備の仕事をしているのであり、空を見ていなければならない。だが、見続ければ目がおかしくなりそうだ。時々、目をそらさなくてはならない。
前方には大型の岩が浮いており、その上には建物が建っていた。鳥の魔物であるジャブジャブたちが住んでいるのだ。彼女たちは、アランに向かって桃色の翼を振って挨拶をする。彼も手を振り返す。アランのいる警備所は、ジャブジャブの家同様に空に浮かぶ岩の上に建っている。彼は、そこで警備をしながら暮らしているのだ。
「今のところ異常はないな」
アランの同僚が言った。彼女は、辺りを睥睨している。
「俺には異常だらけに見えるけれどな」
アランは苦笑する。彼は、よその国から流れてきた。この「不思議の国」の日常は、彼にとっては狂気に見える。
彼は、同僚である女を見た。赤紫色の長い髪を持ち、褐色の肌をした大柄な女だ。彫の深い顔立ちをした美女であり、豊かな胸の目立つ肉感的な体をしている。ただ彼女の特色は、それらでは無いだろう。
彼女は、赤色と黒色の角を頭から生やしていた。背には赤と黒の翼が生えており、尻からは黒い尻尾を生やしている。手足は、爬虫類のような鱗で覆われ、赤い爪を生やしている。極めつけは、背から二本の赤紫色の触手が伸びており、それらには口が付いているのだ。
アランは、この魔物そのものの姿をした女の背に左手を回した。彼女は、アランを一瞥する。彼は、そのまま背から腰にかけて撫でる。そして尻を愛撫する。
「痴れ者め。仕事の最中だぞ」
「いつもの事だ。お前だってやりたいだろ」
アランは、尻を揉み解しながら言う。
翼と触手を持つ女は、爬虫類の怪物を思わせる右手を伸ばした。アランの股間に手を当て、ゆっくりと揉み解す。人間離れした手だが、巧みな技によりアランに快楽を与える。
人間の男と魔物の女は、七色の空の下で互いの体を愛撫し合っていた。
アランの暮らす「不思議の国」は、人間たちの暮らす普通の国とは違う。魔力が満ちあふれた国であり、その魔力を異常な形で活用している国だ。人間たちの暮らす国では考えられない事が起こる。
空は七色に輝き、色のついた雨が降り注いでくる。オレンジ色の空からオレンジ色の雨が降っていたかと思うと、紫色の空に変わって紫色の雨が降る。雨が止むと虹の橋が出来て、空に浮かぶ岩と岩を橋渡しする。猫やウサギの耳のついた女たちが、虹の橋を談笑しながら渡っているのだ。
地を見渡すと、豊かな木々ときれいな花畑がある。そこでは歌が響き、踊る者たちがいる。ただ、歌い踊る者が人間とは限らない。赤い花や青い花が合唱し、緑の木々が踊っているのだ。銀色に光っているバラが恋の歌を歌い、青色の葉をした木が飛び跳ねながら体をひねって踊る事も珍しくは無い。
この不思議の国には、人間たちが大勢暮らしている。それ以上に多いのが魔物たちだ。紫色と黒色の耳と尻尾を持った女が歩いている。猫の魔物娘チェシャ猫だ。赤色の長い耳を持ち、桃色の獣毛に覆われている足をしている女が飛び跳ねている。ウサギの魔物娘であるマーチヘアだ。彼女たちのような者は、この不思議の国では当たり前の存在だ。
この奇矯な国で、アランは警備の仕事についている。共に警備をしているのは、ジャバウォックという魔物であるジュリアだ。ジャバウォックとはドラゴンの一種である。角と翼を生やし、強靭な肉体を持っている。体だけではなく優れた頭脳の持ち主であり、不思議の国では高位の魔物として知られている。
二人は、空に浮かぶ岩の上に立っている家に住み、そこから周辺の地域を警備している。ジュリアは、優れた飛翔能力を持っており、住処から広い地域を監視する事が出来る。彼女の働きによって、地域の治安は守られているのだ。
ただ、他の国から見れば、治安が保たれているとは言えないかもしれない。ジャブジャブは、空を飛びながら伴侶と性の交わりをしている。空に浮かぶ数々の岩の上では、チェシャ猫やマーチヘアが飛び跳ねながら性技をひけらかしている。地上では、キノコの魔物であるマッドハッターが、お茶会の場で踊るような動作で性の快楽に耽っているのだ。これらは、不思議の国では問題になるどころか推奨されている。
アランたちも、不思議の国の日常に染まっている。二人は、所かまわず快楽に耽っているのだ。ジュリア達ジャバウォックは、高慢である事で知られるドラゴンだ。だが、不思議の国の女王の手により、普通のドラゴンとは違う性質になっている。他を圧倒する淫らさを持ち、それを誇示する事を誇る存在となって
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