僕は、畑に麦の種をまいている。季節は秋であり、麦の種をまく時期だ。冬を越したあと、春になれば芽が出る。夏になれば収穫できる。僕は、その日を楽しみにして種をまいているのだ。
僕から少し離れたところで、お母さんが種をまいている。白い馬の下半身をかがめながら、慣れた手つきで種をまいている。お母さんは、僕なんかよりも麦を育てることがはるかに上手だ。僕は、お母さんの手伝いをしているだけだ。
お母さんは、いろいろなものを育てている。ニンジンや玉ねぎを育てているし、ハーブを始めとする薬草も育てている。僕は、お母さんからそれらの育て方を教わっている。
僕は、ついお母さんに見とれてしまう。プラチナのような色の髪は、作業用に抑えられていても日の光で輝いている。頭からは、白く輝く角が生えている。お母さんの肌は、農作業で少し日に焼けている。それでもその肌はきれいだ。白い馬の毛並みとよく合っている。流れている汗で光るお母さんの体を、僕はつい見とれてしまう。
僕は、お母さんから目をそらして作業を続けた。
僕は、お母さんから生まれたのではない。僕は、都にある施設で暮らしていた。その施設は、親のいない子供を育てている所だ。親から捨てられたり、親が死んでしまった子供が引き取られている。僕は、捨てられていたらしい。なぜ捨てられていたのかは、僕には分からない。僕の親がどのような人なのかも分からない。
僕は、5歳の時にお母さんに引き取られた。施設で初めてお母さんを見た時は、馬とかん違いしてしまった。僕の目には、お母さんの下半身しか見えなかったからだ。長い4本の足と、白い毛並みが僕の目を奪った。
お母さんは、僕の前にしゃがみ込んだ。その時に、僕はお母さんが馬ではないと分かった。馬であるのは下半身だけで、人間の上半身を持っていたのだ。お母さんは水色の目で僕を見つめて、その柔らかそうな顔でほほ笑んでいた。
僕は、お母さんに見とれていた。僕は、そんなにきれいな人を見たことが無かったのだ。僕は、何も言えずにお母さんの顔を見つめ続けた。
「私の名前はソフィアというの。あなたの名前は何というのかしら?」
お母さんは、柔らかく落ち着いた声で僕に話しかけた。
僕は、あわてて自分の名前を教える。お母さんは、僕の名前をつぶやく。
「私と一緒に暮らしてみないかしら、ジュール。私がお母さんになって、あなたは子供になるの」
僕は、初めお母さんの言っていることが分からなかった。でも、お母さんの微笑んでいる顔を見つめているうちに、うなずいてしまった。
僕はその日から、お母さんと家族になったのだ。
お母さんに引き取られて、都の西にあるこの村に来た。村の人たちは農業をやっている。僕は、この村で育てられた。お母さんは、僕に生きていくことが出来るように、小麦や野菜、薬草の育て方を教えている。
また、料理や洗濯、掃除などの家事についても教わっている。これも生きていくために必要なことだ。村の人と協力してやることについても教えてくれる。畑と村の見回り、柵や橋の修理、村の家の修理などについて教わった。お母さんは、噛んで含めるように生きるために必要なことを教えてくれた。
この村は、女の人はユニコーンしかいない。人間の男とユニコーンの女が暮らす村だ。他の村の人からは、「ユニコーンの村」と呼ばれている。
村には、僕と同じように施設から引き取られた男の子が多い。また、人間の家から引き取られたり、家のない子供が引き取られている。この子たちも男の子だ。僕たちは、ユニコーンのお母さんに引き取られて一緒に暮らす。一人の男の子が、一人のユニコーンのお母さんと暮らすのだ。お父さんはいない。
僕は、僕と同じような男の子たちと遊ぶ。女の子たちとは遊ばない。人間の男とユニコーンの女が結婚すれば、ユニコーンの女の子が生まれる。でも、その子たちとは遊べないのだ。僕たちは、村の東側で暮らす。女の子たちは、村の西側で暮らす。東と西の境には、柵が設けられている。僕たち子どもは、柵を越えることは禁じられている。
僕が合うことが出来る女の人は、大人のユニコーンだけだ。彼女たちは、みんなが僕のような男の子と一緒に暮らしている。
僕は、近ごろ困ることがある。僕とお母さんは、畑仕事が終わると風呂に入る。僕たちは一緒に入り、お母さんは僕を洗ってくれる。お母さんは、スポンジと手で僕の体の隅々までていねいに洗ってくれる。その時に困ることが起こるのだ。
お母さんに体を洗ってもらうと、すごく気持ちがいい。畑仕事の疲れが消えそうになる。お母さんの手は、畑仕事をしているのに柔らかい。魔物の体は人間よりも丈夫なうえに、ユニコーンには癒しの力がある。だから、お母さんの手は柔らかい。僕は、その手で体を洗ってもらっている。
お母さ
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