ポールは、泣きながら道を歩いていました。たきぎを拾ってくるのが遅いからと言って、お父さんに殴られたのです。ポールの左側の頬ははれています。お父さんは、いつもポールを殴ります。お母さんもポールをよく殴ります。お姉さんは、殴られるポールを見て笑っています。
ポールは、森の中に入り込みました。もう、家には戻りたくはありません。ポールは、お父さんもお母さんもお姉さんも大嫌いです。顔も見たくありません。森の中は危険だと言われています。ですが、お父さんたちの所にいるよりはましだと、ポールは思いました。
森の中はどんどん暗くなります。ポールは、周りをよく見ないで歩き続けます。もう、どうなっても構わないと思っているのです。こんな所にはいたくない。どこか別の所に行きたい。そう思いながら歩き続けます。
「おやぁ、新しいお客さんだねぇ」
突然、ポールは声をかけられました。ポールは驚いて辺りを見回します。すると左斜め前にある木の枝に、女の人が座っています。
ポールは、ポカーンとしながら女の人を見上げました。見たことのない変な格好の女の人です。右側の髪は黒い色、左側の髪は紫色をしています。黒と紫が交差している色合いの服を着ています。髪や服には黒いリボンを付けています。こんな格好の人は、村では見たことがありません。
「こんな森の深くに来たら戻れないよぉ」
女の人は、いじわるそうに笑いながら言います。
「戻りたくなんかない」
ポールは、吐き捨てるように言いました。
すると女の人は、木から降りてポールを誘います。
「それじゃあ、こっちへ来なよ。おもしろい所へ連れて行ってあげるからねぇ」
女の人は、ポールを手招きして前へ進みます。
ポールは、女の人を見て気が付きました。頭には、猫のような耳が付いています。右側は黒い毛でおおわれた耳、左側は紫色の毛でおおわれた耳がついています。お尻には、黒色と紫色のしま模様のしっぽが付いています。女の人は人間なのでしょうか?ポールは、村の人が話していた魔物のことを思い出しました。
ポールは、前へ足を踏み出します。もう、元の所には戻りたくはありません。女の人が魔物でも構いません。彼女に別の所へ連れて行って欲しいのです。
ポールは、前を歩く女の人についていきます。森はどんどん暗くなっていきます。それでもポールは前へ進みました。
「さあ、ついたよぉ」
女の人は、ポールに笑いかけました。
暗い森が終わり、ポールたちは開けた場所へ出ました。突然、光が差し込んだために、ポールは目を閉じてしまいました。彼は、がんばって目を開けます。
ポールは、口を開けたまま閉じることが出来なくなってしまいました。見たことも、想像したこともない光景が広がっていたからです。辺りには草地であり、その向こうにはお花畑があります。ただ、その草が普通ではないのです。草はオレンジ色をしており、日の光に輝いています。草の匂いもポールの村の草とは違います。どこか甘酸っぱい匂いです。
ポールは空を見上げました。空は黄色とオレンジ色に光っていて、雲は水色をしています。太陽は、ピンク色をしています。太陽が輝くたびに、空の色が黄色からオレンジ色へ、オレンジ色から黄色へ変わるのです。
立ち止まってしまったポールを、猫の耳が付いた女の人は手を引きました。ポールはわけの分からないまま、手を引かれて歩きます。そうして二人は、お花畑に足を踏み込みました。赤、青、黄、ピンク、白といった様々な色の花が咲いています。ただ、その花はどこかおかしいのです。葉っぱは緑ではなく、オレンジ色や紫色をしているのです。踊るように動いたり、飛びはねたりします。
ポールは、ぼんやりとしていました。花から漂ってくる甘い香りを嗅いでいるうちに、頭がうまく働かなくなってきたのです。花が話をしたり歌ったりしているのを、立ったまま聞いています。
「ようこそ不思議の国へ」
猫の女の人は、おどけた態度で一礼をしました。
ポールは、うまくものを考えることができません。不思議の国と、オウム返しに言うだけです。
「そうだよ、ここはハートの女王さまの収める世界だよ。みんなが楽しくみだらに生きることができる世界なんだよぉ」
猫の女の人は、ポールの肩を抱きながら言いました。そして頬をすり寄せたり、腕をなでたりします。はれた左の頬を優しくなめます。
「坊やはいい匂いだねぇ。旦那がいなければ、食べちゃうところだったよ」
食べるという言葉を聞いて、さすがにポールも体を震わせました。そんなポールを見て、猫の女の人は面白そうに笑います。
「残念だけど、坊やは他の女にゆずらないとねぇ」
そう言うと、猫の女の人は離れます。
「すぐに他の女が来るから、楽しみに待っているんだよぉ」
猫の耳を震わせて、しっぽを
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