朝、農場の鶏が一斉に鳴きだした頃に当ホテルの1日は始まる。
1階の釜戸に薪がくべられ、食器棚からは綺麗は装飾のティーカップが出された。 薪が燃える頃には、水の入った大なべが釜戸を覆いその中に様々な野菜が大量に入れられる。
釜戸の隣のコンロには、胴のやかんが白い湯気を出していた。
「さて、と 朝食のスープの下ごしらえはこれで良いとして・・そろそろ、紅茶の準備とメインの仕上げかね」
そういって、冷蔵庫の中から大きな肉の塊を取り出しオーブンの中にぶち込み、戸棚からは数種類の茶葉を取り出しお湯を注いだ。
この街スレージ・ナックは、つい先日までは鉄・採掘が盛んな街だった。
それから魔物が押し寄せてきて親魔物領へと変わってしまった。
そして、親魔物領になってから街は改装・改築が進み、今となっては賑わいが絶えない街に変化した。
そんな中、大きく変わった街にも関わらず宿屋が1つしかないのが、この街の特徴だろう。街の長によるとあの宿以外に泊まる気が無いからとの事だとか。
そんなホテルの中を、忙がしく歩いている青年。
目の前のカップやティーポットなどが置かれたワゴンを押しながら扉の前で止まって、ノックを数回鳴らした。
「お早うございます。 モーニングティーをお持ちしました」
青年の声が終って、しばらく経ってから眠たそうに目を擦りながら幼い女性,
アリスが出てきた。
「ん〜〜。おはよーございましゅう」
彼女は、未だ寝ぼけているのかはっきりとしない言葉がより幼さを引き出している。
「お早うございます、リムア様。 本日のモーニングティーです。
少し熱めにしてますので、ゆっくりお飲みください」
リムアの部屋に入ってからカップに注がれた紅茶を彼女に差し出しそれを彼女は口に含む。
「ん、・・ふぁ〜。やっぱり朝は、淹れたての紅茶よね。 君が淹れる紅茶は相変わらず美味しいわぁ」
青年は、リムアの言葉に一礼をし部屋を後にした。
その後しばらく経った頃、各部屋から続々と宿泊客が出て1階の大部屋に入っていく。 そこには、二人掛けのテーブルが数十台と沢山の料理が並んだ台があり、料理の上に名前が書いていた。
朝食が終ると、部屋に帰る者、コーヒーを飲む者と自由に行動しだすお客をよそに青年は、片付けを始める。 朝食の準備を1人でこなしていた彼にとってこの作業が大変なのだ。するとフロントの方からベルが鳴り響くのが聞こえた。
「お待たせしました。 本日のお帰りのミーヌ様ですね。 今回は、1泊2食でしたので銀貨2枚になります」
宿泊客のデュラハン夫婦を見送りフロントでの作業を終えた青年は、すぐさま食器の片付け・部屋の掃除に向かった。 案の定、布団からは夥しい位の精液と愛液の痕が残されている。しかし、こんなのはいつもの事なのか青年は顔色変えずに片付けに取り掛かった。 しばらくすると、ホテルの仕事も一段落し夕食の準備に取り掛かり始めようとした時、調理場の勝手口のドアが開いた。
「こんにちは、クルト農場です。 ご注文の特濃ホルスミルクをお持ちしました」
「どーも、魔界青果っす。 今週分の野菜でーす」
「先日依頼した洗濯物をもって来ました」
そこには多様な業者が一斉に声を出して叫ぶ。 その光景は鳥の雛みたいだった。とりあえず一人ずつ相手をして最後の洗濯屋に朝の洗濯物を渡して青年も夕食の準備へと取り掛かる。
夕食も無事に済み、明日の朝食の献立を考えてながら洗い物との戦いにくれている時、フロントの方からベルが聞こえた。 夜の来客は珍しく無い為、青年は急いでフロントへと向かった。そこに立っていたのは、ラミア種の夫婦。 服装からして、ここではない遠い街からの旅行者なのだろう。 そんなことを考えながら青年は、優しい笑顔で話し出した。
「いらっしゃいませ。 当ホテルにようこそ」
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