真実の鏡<前編>

私の家には大きな古い鏡がある。
だけどいつも布がかぶさっていてどの様な物なのかさっぱりわからない。

えっ? なんで鏡だって解ったのか?
・・・これはね、秘密なんだけどね。 じつは・・。




              ・




白い雪が舞う峠道。 そこを俺たちは、慣れない雪道に悪戦苦闘して歩いてた。

「ちっくしょー。 なんで俺がこんな山奥に行かないといけないんだよ。
だいたいこの仕事はお前だけの奴なんだろうが」

「僕だって知らないですよ。 団長が勝手に決めた事ですから」

声を張り上げながら仕事の文句を言う俺を簡単にあしらう様にして前の男性が歩いている。 あいつの名は、ジャック。 俺の2こ年下で後輩的な存在だ。

「ライガンさん? 何さっきから呟いてんですか。 とうとう頭のネジが取れましたか?」

そして、俺にだけ毒を吐く。
そんな2人が何故こんな雪の峠を歩いてるのかというと、数十時間前にまで遡る。






「ライガン君。いつも君は酒を経費で落としてるけど、どういう事なのかなぁ?」

「それには訳がありましてね。 情報を探るべく地元の方に話しを聞く為、仕方なく。 うん、仕方なくなんですよ」

「へぇー、・・確か君、家で飲む酒の量がずいぶんと減ったそうじゃないか。
奥さん、心配していたぞぉ? 『何処かで飲んでるんじゃないか?』と」

「・・・・・・」

「それと前回の禁具の依頼品の事でもそうだが我々は、収入がないと活動できないんだ。
 ・・・簡単に言えば、酒を飲ませるのも飲むのも抑えろと言う事だ」

「・・・・・・・」

「そんな顔するな。 酒は家で飲めば良いだろう、それよりも君に良い仕事の話があるが乗ってみる気は無いかい?」




「で、まんまと騙されこんな場所に来たのさ。 しかも、お前と一緒に」

「うっさいんで黙ってて下さい。 それと、目的地に着きましたよ」

ジャックが止まった前には幾つかの民家が建っており目の前にプレートで≪ヨーデルンにようこそ≫と彫られていた。

「ここが今回の依頼の場所か。 確か『真実の鏡』だっけ?」

「えぇ、写す者の本当の事が鏡に浮かぶと聞いてます。 最初は反魔物領で人間に化けた魔物を見つけるために使われてたんですが、忽然と消えてしまったらしいそうです」

「それが、なんでこんな所にあるのか。 謎だらけだな」

「とりあえず、まずは情報を探りましょう。 ライガンさん、お酒は控えて下さいね」

「・・・・・・・」


そんなこんなで俺達は町の人たちに鏡の事、不可解な事件などあらゆる情報を聞きまくった。 しかし帰ってくるのは全てハズレばかりで空は闇に覆われそうになっていた。




「聞きに聞きまくって結局情報はゼロ。 本当にここで合ってるのか?」

「まだ全員に聞いた訳じゃないんですから、明日また聞き込みですよ」

「・・・だったら、あそこで聞いてみないか?」

夜道を歩く俺は近くにあった宿屋を指差す。 

「今日はどうにも出来ませんし、仕方ないですがここで泊まりますか」

そうして俺達は足早に宿屋に入って行った。









「いやぁ。 こんな山奥に沸き湯があるなんて、今度アンズ達と来ようかな」

「私情は慎んで下さい。 それよりも面白い事が解りましたよ」

風呂上りで気分が高ぶっている俺は、部屋に入るなりジャックに一喝された。
そのジャックはと言うと、目の前にあるテーブルの上に何かの紙を広げて見ている。

「面白い事? ・・・禁具についての何かか?」

「簡単に言えばそうかも知れないですね。 これはこのホテルが出来てからの生い立ちが書かれているパンフレットです。 今から25年前にこのホテルが設立。17年前には初代当主が亡くなりました」

「それで、これのどこが面白いんだ?」

生い立ちを述べるジャックに俺が横槍を入れる。 その時の顔は、苛立ちの表情が少しだが現われていた。

「問題はここからです。初代が亡くなってからこのホテルは1回改装を行なったみたいなんですよ。で、その中にこのような家具があったのだとか」

パンフレットにはホテルの前に並ぶ家族の写真。その周りに家具の写真が貼られている。 ベットに洋服タンス、シャンデリアに大きな鏡。・・・鏡?

「あれ?この鏡って、もしかして・・」

「もしかしなくても、禁具ですよ。 このホテルの中にあるんですね。
そうと解れば、明日から情報を集めます。 その為には、今日はもう寝ましょう」

そう言って、ジャックは自分のベットに潜り込んですぐに寝息を立てる。
俺も後を追うようにベットに入って目を閉じる事にした。





13/08/11 00:48更新 / カウント
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