1.英雄降誕

魔界が淫魔に支配されて数百年
全ての魔物が淫魔の様に、人間の精を糧とする時代

度重なる魔王軍の進行に人々は疲弊し、後退を余儀なくされていた

人と魔物の個々の力の差は歴然、人類は苦戦を強いられた
そこで、教団は人外の力を持つ魔物に対抗するべく、世界中から、生まれながらにして神の祝福を受けているといわれる、「勇者」と呼ばれる存在に望みを懸けた

勇者は神の祝福を受け、様々な恩恵を行使し、人ならざる力を得ることができた

人類は救世主とも呼べる存在に、湧いた

勇者を育成するための学校を国家は設立し、あらゆる武術、戦術、知識を詰め込んだ
世界中の希望を背に満を持して勇者部隊を設立、数多くの勇者が戦場を駆けた


しかし、それでも魔王軍の優勢は変わらなかった
勇者部隊が初めて投入され、数ヶ月は魔王軍を追い払うことができたが、相手は淫魔、数多くの勇者が虜にされ、堕落し、魔王軍の手に堕ちた


教団は苦悩を強いられた
このままでは教団の切り札である勇者に魔王を討伐してもらうどころか、勇者に人類が屈するという最悪のシナリオまで浮かんだ



そして教会は求めた、勇者を超越する、「英雄」を…



-レスカティエ教国-

レスカティエ教国

主神の信仰を国教としており、教団の力が非常に強く、国家の要職は基本的に、教団の上層部や実力者で占められていた。
教団勢力の国家の中では二番目の戦力を誇る巨大国家であり、その大きさや人口以上に、子供の頃から教団のために戦う使徒を育て上げる機関や設備が非常に充実しており、また、神の加護を受けた勇者が大量に現れる、世界一の勇者産出国であった。

人類の希望を託されている国といっても過言ではないこの国で、教団は新たな「英雄」を召喚しようとしていた…

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-レスカティエ教国・大聖堂-

カストール「…ついに、この日が来たか……」

静かに呟く老人は、蓄えた顎髭を静かに撫でた
彼の名はカストール・ビストア・レスカティエ
レスカティエ教国の国王である

今日、この日、レスカティエ教国は世界の命運を左右するであろう、大きな儀が実行されようとしていた


大司教「………では、これより、英雄降誕の儀をとり行う!皆、魔法陣にて構えよ!」


大司教の声が聖堂に響くと、数十人の勇者が、魔法陣に向かい剣を、杖を構えた

ミミル「こんな儀式、ミミルちゃん一人でもできるのになぁ〜」

集められた勇者の一人、ミミル・ミルティエが小さくボヤいた
彼女は幼い容姿ながらも強大な魔力を有しており、将来を有望視される勇者だ


ウィルマリナ「ほらほらボヤいてないで、大司教様に怒られるよ?」
ミミル「は〜い」


ボヤくミミルを諌める白髪の美しい少女
彼女はウィルマリナ・ノースクリム
類まれな剣術と魔術の才能を持ち、若干17歳でありながら、多数の勇者を排出するレスカティエ教国において現在最も強い勇者であるとされている。

二人は軽く言葉を交わし、ミミルは杖を、ウィルマリナは剣を魔法陣に向ける

サーシャ「………」
一人、静かに杖を構える女性、サーシャ・フォルムーン
神の声を聞ける信仰者であり、高度な魔法を扱える勇者でもある彼女は、世界の情勢をしっかりと理解しており、この儀式がどれだけ重要なものかも、理解していた。

大司教「………この儀をとり行う前に、この、レスカティエ教国の国王であるカストール・ビストア・レスカティエ様より一言、お願いします」
カストール「うむ…」
カストールが重い腰を上げた
それだけで周りの空気が引き締まった、そんな感覚に襲われる

カストール「皆の者、今日はこの儀をとり行うに、これだけ優秀な魔術師が力を合わせてくれたことに、心より感謝する」
国王の声が聖堂に響く、見た目からは想像がつかぬほどの大きな声量、深みのある低音の声が聖堂にいる者たちに届く

カストール「今からとり行う儀は人類の命運…果ては世界の命運を左右する、重大な儀である。皆、期待しておる!どうか、この儀を成功させて、人類を魔の手から救って欲しい!!」

そう…これから行う儀は、世界を救う特殊な召喚魔法の儀…「英雄降誕」

カストール「…私からは以上じゃ、長く話しては集中も途切れてしまうだろう。大司教、あとは任せる」
カストールは椅子に座り直すと、側に控えていた大司教が一礼し、前に進みでた


大司教「では、これより英雄降誕の儀をとり行う!皆、魔力を魔法陣に捧げよ!!」
大司教の言葉を皮切りに、魔術師全員が魔法陣へと魔力を注ぐ

大聖堂が青に染まり、魔法陣を中心に魔力が集約していく
魔力はみるみるうちに集約、凝縮され、静謐な大聖堂は神秘的な空気に満たされる


―――時はすぐにやってきた


大司教「皆!呪文を唱えよ!
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