「人間界へ降りよ、と?」
問いかけに対し『是』という意思が下る。
それは絶対的な意思。言葉というにはあまりにも圧倒的なソレ。
人間界は穢れに満ちた恐ろしい場所だと私達は聞いていた。
そのことを思い出し、『私達』の中の私という存在が小さく震える。
「私は…堕天することになるのでしょうか」
問いかけに対し『否』という意思が下る。
その意思は私をこの上なく安心させてくれた。
父は『私達』の中の私を見放して人間界へと堕とすのではないのだ。
震えも収まった。
父がそう言うのであれば、それは絶対だ。
私が恐れることなど何も無い。
「承知致しました、お父様。私は人間界へと降り、お父様の意思に従います」
私のその言葉を受けて、父は私へと必要な情報を一気に送りつける。
あまりにも膨大な情報量に一瞬パニックを起こしかけるが、何とか持ち堪えることができた。
父の前で醜態を晒さずに済み、心底ほっとする。
「ではお父様、行って参ります」
私がそう語りかけると、私は『私達』から私自身がが切り離されるのを感じた。
落ちる、堕ちる、おちていく。
くるくると、ふわふわと。
穢れに塗れた人間界へ。
私という存在が降ちていく。
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