赤くて白い帽子のママ

「うへへ、ようやく捕まえたぞ
#12316;♪」


この俺、西藤ナツキの今の現状を説明しよう


赤い帽子を被ったのゴブリンのような女の子に急に拉致られて、路地裏の廃墟に連れてこられていた


仕事からの帰り際に後ろから小さな女の子に声を掛けられたと思ったら、その手に持っていた大きな包丁のような物で切りつけられた


死んだと思った、しかし俺自身に外傷は無かった…切りつけられたところは怪我をしていないはずなのだが何故だか俺は切りつけられたところが熱く疼き、体の自由が効かなくなっていた


俺は傍目から見ても体格がゴツく、顔を厳ついと自分でも分かっている…よく子供や友人からはゴリラとか言われているくらいなのだ


本来ならこんな子供にいいようにされるわけが無いのだが…このおそらく魔物であろう赤い帽子の少女に俺はなす術が無かった


「い、いったいなんなんだ…?悪戯なら、すぐにやめてくれないか」


「悪戯?違うなー、アタシはお前を旦那様にする為にこうして誘拐したんだぞ♪」


「は、はぁ?」


旦那?俺を?…今一度この赤い帽子の彼女をよく見てみた





吊りあがりギラついた目…肩まで伸ばした白い髪、額からは二本の赤黒い角が生えていて、乾いた血のような赤い帽子をかぶっていた

そして幼い少女の未成熟な身体…よく見なくても彼女は可愛い女の子だ、しかし見た目が幼すぎる。


魔物だから見た目より歳上だろうが、いくら歳上でも見た目が幼すぎて…可愛ければなんでもいいわけじゃ無い


とりあえず彼女は俺を攫って無理やり旦那にしようとしているらしい


よく分からないが気に入られているようだから、どうにかして嫌われて解放してもらわないとな…しかし素直に言って聞くとは到底思えない


…よし、一か八か試してみよう


「ま、ママ…」


「えっ、ママ?何言ってんだよー、アタシはママじゃないぞー?」


「ママに、似ているんだ…いなくなったママに…」


そう、これはデタラメだ


そもそも元々俺は身寄りの無い孤児だったので、母親がどんな人だったのかもしらない


気がついたら一人でどうにか地を這いつくばってこの歳まで生きていた、だから俺が攫われようと気にする人は誰もいないのだがそういう問題では無い


しかし俺だってそれなりに苦労があって、あの人並みの生活を送ってきたのだ…勝手に攫われていいようにされるなんておかしいだろう


そこで街で小耳に挟んだ、マザコンの男性は女性からしたら嫌悪されるらしいというのでこうやってみる事にした


母親として見る、ということはつまり女として見ていないことど同じ…ましてや小さな子供の姿の女の子にママーっと甘えるなんて幻滅の対象だろう、即刻解放してくれるはずだ


「そうだったのか…よしよし、寂しかったんだな…」


フッと少女のギラついた目つきが優しい慈しむような目つきに変わった、そしてぎゅっと抱きしめられて頭をなでなでされてしまった、いや解放されるはず…はずだったのに…


「うんうん♪これからはアタシを本当のママだと思って甘えていいんだぞ
#12316;♪」


「え、あの…」


「遠慮するなよー、ほらママだぞ
#12316;♪ぎゅーっ♪なでなで♪」


いかんな、更に好かれている気がするぞ…こうなったら相手が引くぐらい甘えてみるか


「ま、ママーっ!」


「わっ、甘えんぼさんだな♪そんなにぎゅーってしなくてもママはいなくならないぞ
#12316;♪よしよし、今までの分たくさん甘えような
#12316;♪」


まずいな、精一杯引かれるように甘えているというのに…それどころかこれは俺自身が彼女の母性に溺れてしまうぞ


しかしやっておいてなんだが、これはすごく恥ずかしい…なんで俺がこんな恥ずかしい思いをしているのに彼女はなんであんな幸せそうなんだろうか


「よしよし、何かママにして欲しいことないか?なんだってしちゃうぞ
#12316;♪お腹すいた?眠くない?何でも言って♪」


「…じゃあ」


解放してくれ、と言おうとして口をつぐんだ。よくよく考えてみればそこまでして解放される必要があるんだろうか?


たった一人、地を這って泥を啜るように生きてきたが…それでようやく掴んだ人並みの生活と、可愛らしい女の子に好かれて生きるのと…どっちが幸せだろうか


この様子を見ると、きっと彼女は俺を大事にしてくれるのではないだろうか。わざわざ旦那にする為に攫ってくる、そこまでして思ってくれる彼女が俺に酷いことをするとは思えない


だったらこのままこの可愛らしい彼女に、甘えてもいいんじゃないだろうか…女としては見れないかもしれないと思うけど


「それじゃあ…名前を、教えてほしい」


「名前、名乗って
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まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33