夢を、夢を見ていた…
夢の中の俺は、いつもいつも見知らぬ女性に怒られ、罵倒されていた
lt;私の言う通りにしなさい!
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lt;そんなこともできないの?ダメな子ね!
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なんでいつもこの女性は自分に対して怒っているのだろう、なにか悪いことでもしてしまったのか?
lt;泣く子は嫌いよ
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lt;何度言ったら分かるの!?
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やめろ…やめてくれ、そんなに怒鳴らないで…それ以上言わないで…
lt;お隣さんの子を見習いなさい!あの子はね…
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lt;なんて馬鹿な子…どこで育て方を間違えたのかしら
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やめて…
lt;あなたなんて産まなきゃよかった!
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「うあぁあぁぁぁぁっ!?」
俺は絶叫してベッドから飛び起きる、どうやらあの夢から醒めたようだった
「はぁ…っ…はぁ…っ…!」
心臓が飛び出しそうなほど強く鳴っている、息苦しくて潰れてしまいそうになる…あの夢を見るといつもそうだ
あの夢の女性が出てくるたびに、何か…何かを思い出しそうな気がする
「りゅー…?また、あの夢を見たの?」
「あ、あぁ…か、母さん…?」
「よしよし、怖かったな…大丈夫だよ、ママはちゃんとここにいるからな…」
「う、うぅ…うぅうぅぅ…っ!」
俺が飛び起きた騒ぎで隣にいた母さんが俺を優しく抱きしめてくれた
俺…中里リュウの母さんはゲイザーである。幼い少女のような姿をしていて肌は灰色、その身体には服と言った服は着ておらず黒い液体のような物が大事なところを隠している
ふわふわとした髪の隙間からは大きな一つ目がくりっと覗いて…そして背後からは単眼のついた無数の触手が伸びていた
彼女の名はアイズ、もちろん人間ではない…しかし俺の母さんである。気がついた時には俺は母さんと二人で暮らしていた、多分血は繋がっていないんだと思う
俺があの夢を見るようになったのはつい最近だ、ただ見知らぬ女性に怒られる夢…しかし理由が分からないがその夢を見るたびに俺は何かを思い出しそうになって、胸が苦しくなる
「母さん…っ」
「よぉーしよしよし…落ち着いて、息吸って…吐いて…」
取り乱す俺を母さんがその小さい体で抱きしめて背中をさすってくれる…母さんに宥められてようやく落ち着く、乱れた呼吸が次第に治って頭がスーッと冷静になる
「ぅう…母さん…」
「怖かったな、もう大丈夫だから…ほら、ママがりゅーの怖い怖いのないないしてあげるから…ママの目を見て…?」
抱きしめられた状態で俺は頭を上げて母さんを見上げた、大きな一つ目と視線が合うと次第に俺の中の恐怖心が消えていく…母さんの目を見ると何故か怖いのも苦しいのも全部無くなるんだ
「大丈夫?もう怖くない?」
「あ…うん、大丈夫…夜中に騒がしくして、ごめん…」
「謝らないの、ママはりゅーのママなんだから…いっぱい迷惑をかけていいんだぞ。ただでさえりゅーはあんまりわがまま言わないんだから…」
ここのところ毎日同じ夢に俺はうなされる、一体いつも俺を罵倒するあの女性は誰なんだろうか…俺の記憶にはいない人のはずなんだが…
「誰なんだろう…あの人は…」
「りゅー、もう夢のことを思い出すのはやめよ?あんなの思い出しても何の価値もないんだから、な?ほら、まだ夜中だしいい子にねんねしような」
母さんの言う通りだった、確かにあんなの考えても何の得にもならないだろう…俺は再び布団を母さんと被り直して寝なおすことにした
しかし一度目が冴えてしまったらしく、眠気が一向にやってこなかった…目を瞑っても暗闇が広がるだけで眠くならない
「ん…んー…」
「…りゅー、眠れないのか?」
隣で横になっている母さんと目が合った、俺はこくりと頭だけを動かして返事をする
「ん、じゃあほら…ママが抱きしめて寝かしつけてあげるな…おいで♪」
「…ありがとう」
また母さんが俺をぎゅっと抱きしめてくれる…小さい体だけど、とても落ち着く…髪を梳かすように撫でられると擽ったいけど心地よくて…
あぁ、俺の大好きな母さん…子供のような見た目で一つ目がとても魅力的な、母さん…母親にこんな感情を抱くのはいけないことかもしれないけど、俺は母さんが女の子としても、好きなんだ
「ほら、ママの目を見て…眠くなってきたろ?いい子にねんねしような…♪」
顔を上げて母さんの目を見る、するとすぐに睡魔がやってきて俺は自然と意識を手放していた
そのあと、あの悪夢を見ることはなかった…
…
「…ふぅ」
ようやく穏やかな寝顔を見せる息子、りゅーにアタシは安堵して息を漏らした、どうやら悪夢は見ていないような
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