灰色の飾りっ気のない箱のような部屋で僕はただ虚空を見つめる、そんなことにももう慣れてしまった
僕がこの病院で寝たきりになってしまってからもう数ヶ月が経った、いや看護婦さんの話によるとその前に二年間意識がなかったって話だったから実際にはもっとだ
何でこんなことになったのか、僕の最後の記憶は親と車で出かけたことだけだった…途中から意識がなくなって気がついたら病院で目覚めて二年が経っていた
看護婦さんから聞いた話によると不幸にも車で事故が起きて、両親は即死…重症の僕だけが運ばれたらしい
「何よアンタ…また薬飲んでないんだから」
そういって病室に入ってきた彼女が件の看護師さん、僕が運ばれた時からずっと付きっ切りで看病をしてくれたのだとか
実際僕は二年間意識がなかったから、僕にしてみれば数ヶ月の付き合いなのだが…まぁそれだけあれば男女が結ばれるのは別に変ではない
看護師さんの彼女と、患者の僕は…お互いに両思いで結ばれていた
「うん…メアリーに飲ませてもらいたくて…」
「もぉ…世話の焼ける子だこと、しょうがないわね…とりあえずご飯持ってきたから食べさせてあげるわね。お薬はその後飲ませてあげる♪」
ただ僕と彼女の関係はただの男女関係じゃなくて…
「ほら、お口あ
#12316;んしなさい。ママが食べさせてあげるわ♪」
「うん…あーん」
母親と息子としての…母子関係にもなっている
…
さてどうして僕と彼女はそういう関係になったのか、それは僕が目を覚ました時まで遡る
「よかった…大丈夫?アンタ、二年間ずっと意識がなかったのよ?」
そんな言葉を掛けられて初めて彼女を見たときは意識が朧げながら驚いたことをよく覚えている、何故ならば彼女の姿が僕の知っている看護師さんとはかけ離れていたからだ、いや格好はたしかにナース服だったのだけど…
蛇…第一印象はそれだった。二つに結んだ水色の髪が数匹の畝る蛇になっていて、琥珀のような綺麗な瞳に、下半身は人間のものではなく長い蛇の身体を持つ彼女は自分のことをメドゥーサだと言った、見た目から推測するに多分僕よりかずっと幼く見える
魔物…そんな生き物が世の中にいることはなんら珍しいことではない、しかしメドゥーサという魔物が看護師をやっているということは珍しいだろう
メドゥーサという魔物はプライドが高いことで有名で、誰かの看護をするなんて考えられないのだから…事実彼女もそのような性格で、病院でも患者との問題が多々あったらしい
そこで意識がなかった僕の看病に回されたらしい、意識が戻ったらまたトラブルになると思ったから変わる予定だったらしいが…
「…はぁ、アンタ…また薬飲まなかったのね?まったく、二年間意識なかったの自覚しなさいよね…ただでさえまだ身体を自由に動かせないんだから、アンタも早く動けるようになりたいでしょ?」
しかし彼女は意識が戻ってからも僕の看病をし続けた、二年間も看病をしてるうちにやりがいを感じて途中で投げ出したくなかったそうだ
「…いらない、身体も動けなくてもいい」
当時の僕は事故で一人生き残ったこと、事故のせいで身体がロクに動かせなかったことから自分の殻に閉じこもっていた…支給された薬も飲まなかったしご飯もロクに食べなかった
しかしそんな僕にもメアリーは世話することをやめなかった
「何言ってるのよ、そんなわけないでしょ?ほら、今からでも飲みなさいよね…それともなに、何かあるの?話聞いてあげるわよ?」
プライドが高いはずの彼女だが、僕のことを本当に心配してくれているのかベッドの隣に並んで寝たきりの僕に目線を合わせてそういってくれる
メドゥーサの気持ちは髪の蛇の様子で分かるというが、その髪の蛇も心配そうに僕に擦り寄ってくる
「…いい、薬が嫌いなだけ」
しかしそんな彼女にも当時の僕は反抗的な態度を取った、流石にカチンときたのかメアリーは僕に詰め寄ってこう叱った
「あのねぇ、好き嫌いの問題じゃないのよ!これを飲まないとアンタのせっかく治ってきてる身体が治らなくなっちゃうの!ようやく意識が回復してアンタの身体は確実に回復に向かってるのよ!アンタの身体は絶対治るの!いいから飲みなさい!」
ここで僕は初めてメアリーのメドゥーサらしいところを見た、患者に対する看護師さんの態度とは到底思えない、そんな強気な態度だった
そんな彼女に僕の気持ちが爆発した、知られたくない僕の本当の気持ちが…
「うるさいなぁ!どうせ僕の身体が治ったところで僕は一人ぼっちなんだぞ!大好きな母さんもいない!仕事で世話してるだけのメアリーに僕の気持ちが分かるか!?どうせ一人きりなら死んで母さん達のとこに行った方がい
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