ちいさなゆきおんなのお母さん

「…嘘だろ」


夏の中旬、平均気温は30度を余裕で超え時には40度を超えるこの灼熱の季節


外に出れば容赦ない陽射しが身を焦がし、蛇口を捻ればお湯が出て…この時期は正に地獄と言えよう


そんな地獄を天国に変える人類史上で最高の発明品、エアコン…その力に救われた人類は数知れず


そんな人類の救世主、真夏の勇者が…奇怪な音を立て活動を停止した


「ダメだ、動かない…」


俺、栢山(かやま)マサキは動かなくなったエアコンをどうにかしようかと奮闘していた


「エアコンが無いと夏が乗り切れないぞ…」


高校生の俺は、田舎の実家から出て都会の学校に通っているため一人で暮らしている


幸いにも実家が裕福なので何不自由なく一人暮らしを満喫しているわけだが、夏休みの中盤にエアコンがいきなり壊れてしまった


「…えぇ、どこも修理で忙しくて近日中にはこれない?」


電気屋さんに電話してみるが、どこも似たような状況で修理に来るのは一週間待たないといけないらしい


さっきまで天国だった家はあっという間に灼熱の地獄と化した、この地獄をあと一週間?冗談じゃない


「くそ、仕方ない…冷蔵庫の中に頭を突っ込みに行くか」


本来ならばあまりやりたくないが、こうも暑いとこういう奇行に出てしまうのも仕方がない


「あ、電話だ…」


冷蔵庫に頭を突っ込みに行くという奇行に走る前に電話が鳴った、もしかしてさっきの電気屋さんが特別に直してくれるとかの連絡だろうか


「はい、栢山ですが…」


《おおマサキ!元気にやっているか!》


電話の相手は実家の父親だった、実家の方は夏でも涼しいのですごい元気そうだ


「元気じゃないよ…エアコンが壊れて暑いのなんのって」


《都会は大変だなぁ、こっちは過ごしやすい気候だからいいぞ!》


まったく他人事だと思って…息子が暑さで苦しんでるってのに


《まぁ丁度いいかもな、もうそろそろお前に届くと思うんだが…》


「え、何か送ったの?新しいエアコン?」


《うーん、なんて言ったらいいか…まぁ楽しみにしておけ!それだけ伝えたかっただけだ、じゃあな!》


言いたいことだけ言って切られてしまった、まったく自分勝手な…一体何を送って来たというんだ?


「父さんの方はいいなぁ、山の方は涼しくて…今度遊びに行こうかな」


昔は俺もそっちの方に住んでいた、あそこは冬になると大雪が降って山ごと一面真っ白になるのでよく遊んだものだ


遊びに行くなら冬にしようかな、あぁでも夏の山の自然もいいよなぁ


暑い中そんなことを夢想していると、ピンポーンと家のチャイムが鳴った


「え、もう来たのか?」


俺は玄関まで行きドアを開けると宅配便のお兄さんが荷物を持って立っていた、その荷物を受け取り確認するとクール便で送られてきていた


「クール便…まぁまぁ大きい荷物だけど、なんだろうか?」


何かの食べ物だろうか?俺は荷物をリビングにある冷蔵庫の近くまで運んだ、なんか結構重たいなぁ


「ふぅ、暑いな…とりあえず開けてみようかな」


俺が包みを開けた瞬間、まばゆい閃光がリビングに広がった


「うわっ!なんだなんだ!」


目を開けるとそこには…


「うふふ…やっと着きましたよぉ
#12316;」





この暑いのに長く青と白の着物をきて、前髪を揃えた雪のように美しい白い髪の女の子が立っていた…背丈は、俺の半分くらい…いやもう少し大きいくらいだろうか?


人間のように見えるが、肌の色が青く明らかに人間ではない…それにその女の子からひんやりとした空気が漂ってきている


「あ、ああ…」


俺は驚いて腰を抜かしてしまっていた、情けないと思うがこんな明らかにおかしいことが起きたら腰も抜かすだろう


「あらあら、驚かせてしまいましたか?」


驚いて腰を抜かした俺に、しゃがんで目線を合わせるこの子は…


「あ、あぅ…えっと…」


「ふふ、大丈夫ですよー?こわくない、こわくない♪」


頭を撫でられてしまった、ひんやりとしてて気持ちがいいなぁ…ってそうじゃない、なんなんだこの子は


いやでも父さんが言ってた贈り物の包みから出てきたし…父さんの知り合いか?


「まぁまぁ…まだ少し戸惑ってますねぇ、ほらほら…ぎゅーってしてあげますよぉ♪」


「わ…」


ぎゅっとその小さな胸に抱き寄せられてしまった、ひんやりと気持ちいいのになんだか暖かくて…気持ちが落ち着いてきた


それにすごい懐かしい気がする、前にもこんなことがあったような…


「落ち着きましたか?」


「え、あ…うん…」


「ふふ、いきなり来てしまいましたからね…驚かせてごめんなさい」


抱きしめるのが離れて、目の前の女の子がぺこりと
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