ちっちゃなキキーモラお母さん

俺、仲垣チカラは少人数の会社で働くしがない会社員だ


「タックスの件、ミックスしてフィックスしといて下さい!」


「例のクライアントからのオーダー、要求事項通りにクリアして!」


こんな感じの意識が高そうな言語が飛び交う職場で、少ない人数ながらも上手くやっていけている


仕事が辛いこともあるが、それを含めてやりがいを感じて楽しんで仕事が出来ていると思う


しかしながらうちの会社は少人数なので忙しい、休日自体は多めだが殆どが休日出勤なんていうのも珍しくない


なので家に帰って何かをする、なんて時間はあまりない


しかし何もしなさ過ぎる、というのも色々と問題があるのだ


「ただいまー…」


俺は仕事が終わり誰もいない家に帰ってくると、無造作に靴を脱いでそのままリビングでインスタントラーメンを飲み込むように食べて、すぐ部屋へと行きベッドに寝転ぶ


ここのところずっとこんな生活を送っているわけで、家はロクに掃除が出来ていなく散らかり放題だ…そもそも物が少ないからラーメンのゴミくらいだけど


部屋の隅には埃だって溜まっているし、一人暮らしの男の家と言ったら大体こんな感じなのだろうが…


「家事なんてする暇ないしなぁ…家政婦とか、そういうのがいればなぁ」


家政婦、いやメイドがいいなぁ…メイドかぁ…


メイド…そうだなぁ、まずは大人っぽい美人な人で…おっぱいは大きいほうがいいな、大事なことだ


それで包容力がある人がいいなぁ、こう、優しく包み込んでくれるような…するとある程度大きい身長もほしいか


「…はは、夢物語だなぁ」


そんなメイドいるわけないし、仮にいたとしてだ…俺の給料だけじゃ雇えないし


あぁ、でももしメイドならキキーモラっていう魔物がいるな


人じゃないけど、人によく似た姿をしていてメイド家業を生き甲斐としたメイドの魔物で、理想のご主人様を見つけたらその人のメイドになってくれるのだ


前にテレビで紹介されていたが、あれは美人さんだったなぁ…胸も大きそうで、優しそうで包容力がありそうだった


もしキキーモラがやって来てくれたらなぁ…


俺は昔から父子家庭で、母親がいなかったから…母親みたく優しく甘やかしてくれたりしたらもう望むことはないよ


「…はは、それこそ夢物語か!俺のとこにキキーモラみたいな魔物が来るはずないよなぁ」


さてくだらないことを考えてないでさっさと寝よう、明日も仕事なんだから…いや、明日は確か珍しく普通の休みだったか


明日休みなら、まぁ家の掃除でもするかなぁ…


「あ…眠くなってきた…うん、寝よ…」





ピンポーン


「ん…?」


朝、俺は久しく聞いていなかった家のチャイムで目を覚ました


なんだろう、こんな休日の朝から…宅配は何も無いはずだから、何かのセールスだろうか?


ピンポーン


「あーはいはい、今出ますよー…」


眠気まなこを擦りながら俺は玄関までやってくる、そして玄関を開けると…


「おはようございます、ご主人様ぁ♪」


そんな声がした、がしかし奇妙なことに目の前には誰もいなかった…キョロキョロと周りを見渡すが声の主は見当たらない


「あのー、ご主人様?」


しかし声はまだしている、寝ぼけているからだろうか…いやこの奇妙なことに眠気は吹っ飛んでいる


「…もうちょっとだけ、視線を下げてくださいませんか?」


「ん、下?」


俺が声の通り下に視線を向けると…


「えへぇ、おはようございますご主人様♪」





ちっちゃいメイドさんがいた。


「へっ?」


よくよく姿を確認してみる、メイドキャップにフリルのエプロン、そして地味な黒いロングワンピース…うん、メイドさんである


しかしよく見ると普通のメイドとは違う点がいくつが見受けられた


ふわふわとした髪に溶け込むように紛れた垂れた犬の耳と、手首の羽毛のようなふわふわした部分に、後ろから見えるもさもさと膨らんだ尻尾…そしてチラリと長いスカートの裾から見える、鱗に包まれたおみ足


これが示すことは、つまりこの子はただのメイドではなくキキーモラという種族の魔物だということだ


「あの、どうかしましたか?」


俺が頭の中でグルグルと思考していたら、上目遣いで宝石のような瞳で覗き込んできた


「えっと…どこかの近所の子かな、それともお母さんかお姉さんの真似事かな?」


冷静に物事を考えた結果、この子は親がキキーモラでその真似事をしている子供キキーモラちゃんだということに至った、完璧な推理だろう


「ちがいますよぉ、真似事じゃありません〜」


「じゃあ遊びかな?ごめんねー、お兄さん疲れてるから公園にでも行ってね」


「ちがいますぅ!ちゃんとしたメイ
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