「はぁ…」
俺、玉木シンは今日で何度目になるかの溜息を吐く
今日は…いや生まれてからずっと、俺は最悪な日を送っている
俺は物心がついた頃から親はいない孤児で施設暮らし、頭の出来は少しだけ良かったようで学校はまぁまぁいいところに行ったがそこでは孤立して…そして就活では何度も失敗して、ようやく入れた会社は倒産…
会社は給料を払わないし、ついでに借りていた会社の寮は火事で全焼したよ
あぁなんで俺はこんな不幸の下に生まれてきたのだろう、確かに俺は顔は良くないし鈍臭いけど…こんな不幸な人生を送らされるほどの罪を重ねた覚えはないのに
「愚痴ってても仕方がないんだよなぁ…これからどうするかな」
帰る家も仕事の当てもない、財布には少しばかりのお金だけ…俺はこれからどう生きていけばいいのか
そんな俺はフラフラと何処かを歩いていた、いつの間にか街を離れ自然に囲まれていた山道に入っていたのだ
「何処ここー、もうアレかな、ここら辺でのたれ死んだ方が楽って身体が無意識に動いたのかなぁ」
こんなに辛い人生なら確かに死んで生まれ変わった方がいいのかもしれない、次はもう少しマシな人生を送れるかも…
「…お?」
そんなことを考えながら、足を進めていたら高い石段がある坂道にやって来ていた。
上に小さく鳥居が見えるってことは神社があるのだろう
「…せっかくだし、お参りぐらいはするかな」
神様に頼んだらきっと次はいい人生を歩ませてくれるだろう、そう考えた俺は長い石段を登り上の神社へと目指した
石段を登りきると、そこには小さいながらも綺麗に掃除された神社と、そこを管理してる人が暮らしているであろう小屋が見えた
いまは人に会うような気分ではないし、お参りしてさっさと行こう
「えーっと、次の人生では…贅沢は言わないので、ちゃんと親がいて、もう少しだけ運の良い人生を歩ませてください…」
俺は神社の前で手を合わせてそう願う、作法とかよく分からないが願いは聞き取ってもらえただろうか
「あ、そうだ賽銭…どうせ死んで使わないから…」
神社の前に置いてある小さな賽銭箱に俺は財布をそのまま置いた
どうせ使わないまま死ぬから、いいだろう
「…さ、行こうかな」
俺はそのまま踵を返し石段を下ろうとする、流石に神社の近くで死ぬのはダメだろうからもっと山奥の誰にも見つからないようなところを目指そう
そう考えて石段を何段か降りたところで…
「あー!待ってくださ
#12316;い!」
と、鈴の音が鳴るような聞き心地のいい声が後ろから聞こえた…多分声を掛けられたのは俺だ
人に会う気は無かったけど、もしかしたら何かやってしまったのかもしれない…俺はまた石段を登って、そこで自分の目を疑った
そこにいたのは、見た目はまだ小学生くらいの女の子だろうか?透き通るような白い髪で、おかっぱに切り揃えている…宝石のような真紅の瞳に、白と薄い紫の巫女のような格好…これだけでも浮世離れしているかのようだ
しかし決定的なのは視線を降ろした際に目に入る、その子の下半身…彼女の腰から下はなんと長く畝る白い蛇の身体だった
魔物…そういう種族が人間と同じように社会に出ているのは知っていた、しかし俺は実物を見るのはこれが初めてだった
知識として知っているが多分この子は白蛇と呼ばれる種の魔物なのだろう
「良かったぁ…もう、びっくりしちゃいましたよぉ」
そういって俺を見るなり安心したかのように一息つくこの白蛇の少女、この神社の関係者の子供だろうか?
「ほらこれ、お財布がお賽銭箱の上に置きっぱなしでしたよ?無くしたら大変ですよ、ちゃんと持ってなくちゃダメです」
「えっ…あ…」
そういってさっき賽銭箱に置いた財布を手渡された…どうやら忘れ物と思って渡しに来てくれたらしい、随分としっかりした子だ
「あはは…お賽銭のつもりだったんだけどな」
「ええっ?財布ごとですか、中身も色々入ったままなのに…」
「もうそんなの使わないからさ…」
「もう使わないって…大事なものじゃないですか、個人情報が漏洩しますよ」
最近の子供は随分と難しい言葉を知っているなぁ、言葉遣いもちゃんとしてるしいい教育を受けているのだろう
こんないい子にこんなダメなやつの姿を見せちゃうなんてなぁ…この子の教育に悪いしさっさとお暇しよう
「…あの、なんだかとてもお疲れの顔をしていますよ?自暴自棄になっているようにも見えますし…何かお悩み事なら私が聞きますよ?」
なんて出来た子なんだろう、俺なんかを心配してくれている…子供に相談出来るようなことじゃないけど
「あはは…相談することなんてないって…ただ
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