私はあなたが好き

「せっちゃん…あはは、まだ寝てる♪」


なんだ、声が聞こえる…もう朝なのだろうか?もう少し寝ていたい


「ん〜…可愛い寝顔、もうちょっと観察してよっかな♪」


「…もう朝、か?」


「あは、せっちゃん起きた?」


目を開けるとそこには見慣れた女の子の顔が間近に写っていた、青く長い髪を左右で小さく括っているまだ幼さが残る顔立ちの彼女は俺の上に乗っているようでそれ相応の重さがある


「…うみ、重いから退いてくれない?」


「えー?そんな重くないでしょ、せっちゃんなら大丈夫大丈夫♪」


「大丈夫じゃないの、重いの。はい退いた退いた」


「ぶー」


しぶしぶと這うように俺の上から彼女が退いた、そしてベッドから降りるとそこにある車椅子に乗った


彼女は別に足が不自由だから、とかそういうわけではなく…彼女の場合足と呼んでいいのだろうか?本来足が伸びる下半身は鱗に覆われた魚の尻尾になっている


そう、彼女はマーメイド…所謂「人魚」と呼ばれる魔物だ。本来海に住む彼女は陸では自由に動くことが出来ないので、車椅子に乗ることで陸での生活に適応しているのだ


「あーあー、もうちょっとせっちゃんの寝顔見たかったなぁ」


「俺、お前に起こされたんだけど」


俺、高橋(たかはし)セイヤがマーメイドの彼女…水島(みずしま)うみは、まぁ幼馴染ってやつだ


俺がまだ小さい頃に、隣にうみが引っ越してきて…それまではただのご近所さんの付き合いだったんだけど、ある日を境に俺とうみはいつも一緒にいるようになった


魔物であるうみは人とは異なった姿で…幼い頃は人とは違う見た目だからと言って周りからいじめられていたのだ


それを幼い頃の俺は、特に何も考えずに間に入ってうみを庇った…あぁ、お隣さんでよく顔を合わせるし話したりもするから〜って言うのはあったかもしれないな


それから何故かうみはいつも俺にくっついて行動するようになった、周りからはよくからかわれたが…まぁうみがいじめられることは無くなったので特に気にしてはなかった


そしてある程度の年月が経った今ではこうして勝手にうみが部屋に出入りするようにまでなっている


「つーかこんな朝早くから何しに来たんだよ、今日は学校無いだろ」


「せっちゃんいるところに私在りって言うじゃない、私とせっちゃんはいつも一緒なの!」


「お前なぁ…わざわざ車椅子に乗ってまで朝から来るかよ普通、家のプールにいたほうが楽だろうに」


「最近の車椅子はハイテクになってるからそこまで大変じゃないもん、それにプールよりせっちゃんの側にいたいんだもん」


こういってうみはいつも朝から俺の側にいる、いくら家が隣だからって面倒くさいはずなんだがなぁ


「まぁいいか、朝ごはんは食うだろ?」


「うん!せっちゃんの作った美味しい料理食べたいな♪」


「はいはい…」


俺はベッドから出て、うみの乗っている車椅子を押してリビングまで連れて行く。彼女の今の車椅子は自動でも進むのだが、昔の自動ではなかった頃から押してあげていたせいか、押すことが普通になっている


「じゃあさっさと作るから、大人しく待ってろ」


「私はいつでも大人しいよぉ〜」


「さぁどうだか」


俺は棚から二人分の食器を用意する、その途中で最近新しく買い換えた俺の箸が無くなっていることに気づいた


「…またか、うーみー?」


「な、なぁにせっちゃん?」


「最近新しく買い換えた筈の俺の箸が無いんだけどさー、何か知らないかなー?」


「な、なん、ん〜?」


「こら、お前隠し事苦手なんだから隠そうとするなよ」


「はい…」


全くなんでうみは毎回俺の箸を持っていくんだ、箸に困っているようには思えないんだけど


「なんで箸なんか持ってくんだよ、別に箸に困ってないだろ」


「いやぁ折角せっちゃんの涎が染み込んでるのに、使わないのは勿体なくて…」


「朝からナニ言ってんだお前は、頭ハッピーセットかよ」


「えへへへ」


朝から反応しにくいギャグをかましてくるなぁ、たぶん本人はギャグじゃないんだろうけど…てか今じゃ慣れたけど魔物とはいえ本能に忠実過ぎなんだよなぁ


まぁまだ一線は越えてないからいいとして、お互い年頃の男女なわけだから何か間違いがあったら困るだろ…と思ったが、うみは俺にヤバいくらいの好意を示してくるし俺自体…まぁうみの事は好きではあるから問題ないのかもしれないが


本人の前で言ったら問答無用に押し倒されそうだから言わないけど…あれ、人魚は穏やかな魔物だから無理やり人間は襲わないと聞いたんだけどなぁ


「毎回無くなるごとに箸を買い換えるのは面倒だしもう徳用の割り箸買ったほうがいいのかも」


「あっ、そしたら
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