愛しい人、大切な人

「えー、君たちの先輩はそろそろ卒業シーズンを迎え進学や就職の準備をしている」


週末の学校終わりのHRにそんな話が担任から出た、もうそんな季節か…上の学年の人たちは大変だなぁ、関わりがないからよくわからないけど


「と、いうわけで君たちにもその時の為にも今から将来について悩んでみてほしい!でも将来像なんてまだわからないだろうから、漠然と進学か就職か…どんな大人になりたいかなどでも構わない。月曜日にスピーチを発表してもらうから、ちゃんとやっておくんだぞ」


「「ええ〜っ!」」


急な宿題に皆不満の声を上げた、しかしそんなことで宿題を無くすことはできない。皆騒ぎながらも帰り始めた


「将来について…か」


俺の将来、どうすればいいんだろうか…就職?進学?いやそもそも俺は何になりたいのだろうか、どんな大人になればいいのだろうか


俺は親がいない、親戚の人のお世話になっていて出来るならばこれ以上迷惑を掛けたくはない…となると就職か?


いや進学してよりいい仕事に就いたほうが将来的にいいのだろうか


「う〜ん…」


「おうジュッキー!何唸り声上げてるんだ…って言わなくてもいい、宿題だな!」


俺が考え込んでいるとコウキが話しかけてきた、ハイテンションで宿題については特に気にしていないように見える


「…お前は、悩んでる様子がないな」


「そりゃ、俺はもう決まってるからな」


「え」


コウキのやつ、もう決まってるだって…馬鹿な!何も考えてねぇようなコウキが!?


「なんで驚くんだよ!俺は会社を継がないといけないの、うちは俺しか子供がいないからな」


「え…あ、そういやお前大企業の御曹司って設定だもんな」


「設定!?いやマジモンだから!そういうお前は…いや、決まってたら唸り声なんて上げないか」


「いや今現在そう将来決まってるのはお前だけじゃないのか…」


「まぁな、逆に俺は悩めるお前が羨ましいよ…あ、いや嫌味じゃないぜ?勘違いしないでくれよ、ただ俺はそう人生で自由に決められることがないから…」


「…知ってるよ、お前はお前で苦労してんのも、お前が金持ちなことを鼻に掛けないってことも…いちいち気にすんな」


全く、普段はおちゃらけてるくせに変なところで真面目なヤツだなこいつは


「コウキの場合は会社を受け継いだらどうするんだ?」


「そうだな、俺は会社をもっと広げて世界に知れ渡らせたいな。最近は魔物との協力も増えてきて魔界でも名を広めてやるんだ」


「目標もちゃんと持ってるのか、お前立派だな…俺はどうすりゃいいかわからねえや」


「そういうのは同い年の俺に聞くモンじゃねえな、近くにいい相手がいるだろ。ほら、身近で大人で仕事に就いてるって言ったら…」


あ、そうか…ブランシェさんに聞いてみようか。ブランシェさんはメイドとして俺のとこで仕事してるわけだしな


早速家に帰って聞いてみるか


「わかった、ありがとなコウキ」


「おうよ、月曜日に期待するぜジュッキー」





「え、ご主人様の将来について…ですか?」


「あぁ、学校で宿題になって…ブランシェさんは大人だし、参考にさせてもらいたくて」


俺は帰ってきて、夜飯を食べたり風呂に入って…後は寝るだけになった状態でリビングにいたブランシェに聞いた、ソファーに向かい合って座り話し合うことになった


「そうですねぇ、魔界と人間界ではまた違うのですけど…私の場合は種族として奉仕する職についているわけですから」


そういやそうか、魔物は種族によって職業がある程度決まってるのか…


「ご主人様は、何をなされたいのですか?」


「う〜ん…まだよくわからなくてさ、俺は今の生活が気に入ってるんだ。ブランシェさんがいて、学校があって…コウキと馬鹿やってるこの生活がさ」


しかしずっとは続かないだろう、ずっと学生でいられるわけじゃない


「でも、学費とか生活費とか…今は全部親戚のローラさんに任せっきりだから、これ以上迷惑を掛けないようにしたいんだ。それに…」


「それに、なんでしょうか?」


「ぶ、ブランシェさんの、ことも…あるから、ちゃんと自分の力で、ブランシェさんと暮らしていけるようにも…したいんだ、ブランシェさんの…主人として」


恋人として、と言おうとしてやめた。俺はまず、メイドのブランシェさんの主人として…ちゃんと立派になってから、言おうと思った


「まぁ、まぁまぁまぁ!ご、ご主人様…そ、それは…あらあら、まぁまぁ…♪」


「だ、だから、し、就職かなって…でもいい学校に進めばいい就職が…」


「ご主人様、ブランシェは…ブランシェは幸せ者ですわ!こんな素敵なご主人様がいて、ブランシェはとても嬉しいです♪」



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