ジェラシーフィーバー

「むむむ…!」


「ぬぬぬ…!」


俺の眼の前では今、二人の魔物の女性が睨み合っている


片方の透けるような白髪の…嫉妬の炎を宿した紅い目をした、白い蛇の下半身をくねらせている女性は小さい頃からお世話になっている近所に住む白蛇という魔物のミハクねぇ


そしてもう片方の…これまた透けるような白髪で、黒いドレスを身にまとった青白い肌の女性、下半身の先の方は轟々と燃え盛る炎でそれを押さえ込むように檻のような物で閉じられている彼女はユウミ


ユウミ…姉ちゃんは俺、古川(ふるかわ)タマキの実の姉である…そしてミハクねぇはユウミ姉ちゃんの、親友だった


しかし…姉ちゃんは俺がまだちいさい頃、交通事故で亡くなった筈だ


そして悲しみに暮れていた俺を慰めてくれて、姉代わりとして今まで俺を支えてくれたのがミハクねぇだったのだが…


死んだ筈のユウミ姉ちゃんは少し姿が変わって、魔物…ウィル・オ・ウィスプとなって帰ってきた


それはとても嬉しいことなのだが…


「あらあらユウミさん、まさか魔物になって帰ってくるだなんてびっくりですよ…」


「えぇ…私も驚いてるわ、まさかこんな形で帰ってくるだなんて想像してなかったから」


お互いを睨み合い、そして牽制するように言葉を交わす二人…二人共仲がすごい良かった筈なのに何故こんなにも険悪な雰囲気を出しているのかというと


「いままで”うちの”タマがお世話になったわね、私が帰ってきたからにはもう貴方は必要ないわ」


「あらあらぁ?何年も”私の”タマちゃんに寂しい思いをさせといて何を言っているのでしょう、私とタマちゃんはもう切れない縁で結ばれてるのですよ…ユウミ”お義姉様”?」


「あ?」


「ん?」


ミハクねぇは血こそ繋がっていないものの本当の姉のように俺を支えてくれて…ユウミ姉ちゃんは血の繋がった本当の姉で…その二人がいまどちらが俺の姉に相応しいか…どちらが俺の一番なのかなんてことで揉めているのだ


俺からしたらとてもくだらないことで、どっちも大事な”姉”なのだが…二人の中ではそうじゃないらしい


ミハクねぇは確かに付き合いも長く、姉代わりとしてずっと側にいてくれた…でも血は繋がってなくて


ユウミ姉ちゃんは血は繋がっていてこそ、長い間いなくて…だけどいまこうやって帰ってきてくれた


「あの…二人とも、喧嘩しないで…」


「あらタマ、喧嘩なんてしてないわよ?だって姉ちゃんとミハクは親友だから、ねぇ?」


「はい、ただちょっと大事なお話で意見が食い違ってるだけですから」


二人はにっこりと俺に微笑むが、その目は全く笑っていなかった…まさに一触即発で殺し合いでも始めそうな勢いだ


「いいですか、ユウミさん。貴方がいない間、私はずっとタマちゃんの側にいました…貴方を失った悲しみに暮れていたタマちゃんの姉代わりとして、です」


「知ってるわよ、それについては感謝してる」


「その過程で、私はタマちゃんと深い関係になりました…言わなくても分かりますよね?タマちゃんと私は相思相愛で、お互いを愛し合ってるんです」


確かに俺とミハクねぇとはお互い肌を重ね合った仲だ、悲しみに暮れていた俺を優しく受け入れてくれて…俺を”男”にしてくれたんだ


「はっ、どーせ落ち込んでるタマをなし崩しにエッチしたんでしょ?まともな思考ができないタマに、いろいろ変なこと吹き込んだりして…ちがう?」


「…っ…!」


「ほら、言い返せないんでしょ」


確かにあの時はミハクねぇに導かれるままに交わってしまって、その快楽に呑み込まれてしまった…あの時の俺に拒むことなんて出来なかったんだ


「ま、待ってよ姉ちゃん!確かにあの時はそうだったけど…ミハクねぇにそんなこと言わないでよ!」


「あ…ごめん、そうよね…ちょっと興奮しすぎちゃった…」


「タマちゃん…」


「で、でも…タマ、姉ちゃんがいなくて寂しくてそんなことになっちゃったんだよね?もう大丈夫だから、姉ちゃん戻ってきたから…」


そういってユウミ姉ちゃんは抱きしめてくれた、魔物となった今でもその抱擁は昔と変わらない…少し力強くて苦しいが


「あらあら、まるで私が悪者みたいじゃないですかぁ…確かにあの時は済し崩しでしたが、あの後からも何度も交わっているんですよ?タマちゃんから求めて来てくれますしね」


「ふーん…じゃあタマ、私が戻ってきたんだしもうミハクは必要ないでしょ?タマの全部、これからは私が受け止めてあげるから…」


「えっ、えっ…」


「…確かに、最初の私はユウミさんの代わりだったのでしょう…けど、もう違うんですよ?タマちゃんは私のモノですから、後から来たくせに都合の良いことばっかり言わないで下さい」


ユウ
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