朝、全身を心地よい圧迫感に包まれて目が覚めた
その正体は俺を…尾田(おだ)ヒロキを抱きしめながら幸せそうな顔で寝ている彼女、ミシロねぇやで間違いないだろう
「…ねぇや、ミシロねぇや」
心地よい圧迫感は全身に巻きついているミシロねぇやの下半身の白い蛇の体だ、ねぇやは白蛇という種族の魔物なのである
俺は基本的にこうやってミシロねぇやに巻きつかれて1日を過ごす、ねぇやがいないと外にも出ない
白蛇は嫉妬深く、好きな男を手に入れる為には手段を選ばないというが…別にねぇやに監禁されているわけではない、俺がねぇやがいないと外にも出れないってだけだ。
「ミシロねぇや、起きて」
「…ん、んん…ぁら、ヒロくん?おはようございますぅ…♪」
俺が声を掛けると、眠気まなこを擦りミシロねぇやが目を覚ました。ねぇやは朝に弱いのでしばらくは夢うつつの状態だ
「はぅ…♪ヒロくんはあったかいですねぇ…おねーちゃん、ぽかぽかで気持ちいいですよぅ…♪」
「ねぇや、朝だってば」
「んぅ…ふふ、まだ暗いじゃないですかぁ…♪」
確かに遮光カーテンで部屋は薄暗いが、もう既に日は昇っているのだ…俺はミシロねぇやの身体を少しだけズラし腕だけを自由にしてカーテンを開ける
すると容赦無い朝の日光が俺とねぇやに差し込んだ、ねぇやは朝に弱いのでこうしないと起きないのだ
「きゃあっ!?ま、眩しいですよぅ…朝なんですかぁ…?」
「もうとっくに日は昇ってるよ」
「はふぅ…仕方ありません、起きるとしましょうか」
もぞもぞとミシロねぇやが布団から這い出る、それに伴い拘束されている俺も布団から出ることとなった。
「はいお着替えしますからいい子にしていてくださいねぇ」
「ん」
まず起きるとミシロねぇやは絡みついたまま器用に俺の服を着替えさせる、それから自分の服を着替えるのだ
「はい、いい子いい子ですよぅ♪」
そしてちゃんと着替えさせると、俺の頭をなでなでしてくれる。初めのうちは慣れなかったり照れてたりで迷惑を掛けたなぁ
俺がこのようにミシロねぇやから離れられなくなったのは、ここ数年のことだ
ミシロねぇやは元々、俺の近所に住んでいた魔物で生まれた頃から俺はねぇやにお世話になっている所謂近所のお姉さんってやつだ
数年前に俺が学校を卒業して就職する、となった時に父が急病で亡くなってしまった。
子供が出来て早々に何か事情があり離婚してしまっていた父は俺が小さい頃から男手一つで育ててくれて、俺の憧れだった
父が亡くなったことにより、保険金などが入るはずだったのだ…俺はそれでミシロねぇやに恩返しをしようと思っていたのだが…
昔、父が離婚した「母」と名乗る見知らぬ女性がその財産をすべて徴収してしまっていたのだ。弁護士やら警察やら引き連れて何か色々と言っていたが…法とか何とかよく分からなかった
その出来事により俺は強い人間不信に陥ってしまい、誰かと話すこともできなかった。すぐに駆けつけてくれたミシロねぇやにも俺はしばらくまともに会話をすることもできなかったのだ
俺はまだ人間不信が残ってしまって一人で外に出ることもままならないが、ミシロねぇやの献身的なカウンセリングにより信頼できるねぇや、その知り合いの魔物さんとは会話ができるようになった
あとで聞いた話だが、ミシロねぇやがその事件に憤怒してあらゆるコネを使ってその「母」を法で裁き、牢屋に入れて財産は無事取り戻すことができたのだという
「ふふ、ヒロくんはちゃんと朝起きられるだなんてえらいですねぇ」
「ま、まぁ朝に弱いわけじゃないからなぁ…」
「ねぇやにはそれが羨ましいですよぅ、低血圧なので朝に弱いんですよぅ…」
「あげられるならあげたい、俺…ミシロねぇやには迷惑かけっぱなしだから…」
「あらあら、迷惑だなんて一度も掛けてもらったことないですよぅ?朝から晩までずっと四六時中ヒロくんとくっついていられるなんて…あぁ、至福ですよぅ♪」
ミシロねぇやはそういって俺を撫でる、いつもそうだ…ねぇやは俺のためだったら何でもしてくれるし、どんな失敗をしても笑顔で撫でてくれる
あの時だってそうだった、ミシロねぇやは真っ先に駆けつけてくれて暖かく抱きしめて頭を撫でてくれた
そんなミシロねぇやに俺は恩返しの一つも出来ていない、結局財産はねぇやには受け取ってもらえず…ねぇやが管理する俺の財産となってしまった
「でも俺、もう大人なのに働きもしないでこうやってミシロねぇやに面倒見られてるだけだし…ねぇやに恩返し出来てないよ、せめて就職くらいできれば…」
「何言ってるんですかヒロくん、おねーちゃんはヒロくんとずっと四六時中いちゃいちゃし
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