何かが空を斬るような音が聞こえて目が覚めた…朝、だろうか?
まだ外は完全に明るくはなっていないらしく、微量の光が部屋に差し込んでいる
周りを見ると他の姉たちはまだ寝ていたが、一番奥で寝ていたはずのシャクヤ姉さまの姿が見えない
「この変な音と関係があるんか…?」
隣で寝ていたシルクねぇちゃんとエルねぇねぇを起こさないように布団から抜け出すと俺はこの不思議な音のするところへ寝ぼけ眼をこすりながら向かった
「うーん、なんやろうなぁ…何か風を斬るような音なんやけど」
音の出どころはどうやら中庭の方のようだ、誰かいるのか?
「…ぁ」
そこにいたのはシャクヤ姉さまだった、何かの拳法の型だろうか?真剣な顔で身体を動かしていた
音の正体はどうやら姉さまの身体を動かした時の音だったようだ
「わぁ…」
蹴り上げた脚が残像を残して弧を描き、まるで月のようだった
身体を動かすたびに飛ぶ汗の玉が薄暗い中庭で星の様に煌き、「武」というよりは「舞」のような神秘的なものを感じる
「むっ…おや、たー坊ではないか。すまぬ、起こしてしまったのか」
「あ、こっちこそごめん…邪魔しちゃったんかな」
シャクヤ姉さまがこちらに気付き「舞」を中断した、邪魔しちゃったらしい
「別に見られて困るものではない、気にするでない」
「姉さま、今のって武術か何か?なんやめっちゃ凄かったんやけど」
「む?いや、あれはただ単に身体を動かしてただけじゃが…」
なんと、てっきり何かの武術かと思ったが…ただ身体を動かすだけであんなに美しいものなのか
「あれでか…凄いなぁ、綺麗で思わず見惚れてしもうたわ」
「お前、恥ずかしいことを言うやつだな…そういうのは妹達に言ってやれ、喜ぶと思うぞ?」
「いや喜ぶ喜ばないじゃなくて、姉さまが綺麗だからそういったんやけど…」
「む、むぅ…そうか」
頬を染めて俯いてしまった姉さま、いつも凛とした姉さまらしくないな
「姉さま、どうかしたんか?」
「わっ…ふ、不用意に近づくな馬鹿者!あ、汗かいておるから…だ、ダメじゃ…!」
「えー?そんな気にするほどやないで、俺姉さまのこの匂い好きやけどなぁ」
「ば、馬鹿者っ、変なことを抜かすな!ふ、風呂に入ってくる!」
姉さまが目にも留まらぬ速さで中庭からいなくなってしまった、何か悪いことでもしただろうか?
とりあえず日も昇ったし、みんなが起きてきそうだから飯の準備しておこうかな
…
みんなが起きてきて各々が準備した朝ごはんを食べ始める
「いっけなーい、遅刻遅刻ー!いただきまーす!」
「…姉さん、騒がしいの」
「たくまちゃん、あ〜んしてくださいね♪」
「あらあら、お仕事の時間だわぁ」
みんなが揃うと一気に騒がしくなった、あぁ…確か10年前も毎日朝はこんな感じだったっけ
「こらお前たち、もうすこし静かに食えんのか?それに本当に時間が不味いんじゃないのかのぅ」
そうそう、それで姉さまが注意して…懐かしいなぁ
「…たくま、なんだか嬉しそうな顔してる?」
「あー、本当だ!」
「え、そうやったか?」
「たくまちゃん、もしかして叱られるのが好きとか…」
「たっくんってば変態さんねぇ♪」
「たー坊…人の趣味をとやかくは言わないがそれはどうなのじゃ?少なくともワシはいかんと思うが…」
しまった、なんだか違う方向で話が盛り上がってしまったぞ
「ち、違うって…こういう風な日常が懐かしくて、ほら…今まではこういう風にみんなで和気藹々と朝ご飯とか無かったから…」
「たくまちゃん…寂しかったんですね、大丈夫ですよ!これからはお姉ちゃんが一緒ですっ!」
「そうだよタク、私がいるから大丈夫だよ!」
「…たくま、安心してね」
「あ、ありがとう…」
なんだかみんなが優しくしてくれた、やっぱ家族って暖かいなぁ
「あらあら、もう時間ね。ごちそうさま、仕事に行ってくるわね」
「あ、私も学校!」
「…私も」
「私もいってきますねたくまちゃん!」
そういって食べ終えたみんなが次々に家を出て行った、最後に残ったシャクヤ姉さまはまだのんびりと食事をしている
「姉さまは仕事やないんか?」
「ワシはまだ道場に行かなくても大丈夫じゃ、たー坊は今日は暇なのか?」
「まぁやることは特に無いし家事やっとくくらいかな」
「ふむ、だったらワシの道場の見学に来るか?いいや来い、ワシが鍛えてやろう!」
姉さまの道場か…姉さまに鍛えられるというのはちょっと怖い気もするが、見学はいい体験になるかも知れないな
「まぁええけど、面白そうやし」
「ふむ、では
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