目の前にある二つの男女の遺影に手を合わせて、御線香を炊く
ついこの間、俺…恋染(こいそ)フミヤの両親が他界した…目の前にある二つの遺影は両親のものだ
俺は一人っ子だった、つまりはもう俺に家族がいない…ということになる
「…はぁ、なんで俺を置いて死んじゃったんだよ…」
死因は交通事故によるものだと聞いた、親は同じ会社で働いていたので車で一緒に出勤をしていたところを…といったところだ
頼れる親戚も俺にはいない、まだ俺は学生だ…一人で生きていくには若過ぎるのではないだろうか?
なぜこの世界はこんなにも辛いのだろう、これならばいっそのこと死んで両親の元へ行った方が良いのではないか
「…そう、かもな」
俺は遺影に焚いた御線香が燃え尽きるのを見届けて、自分の部屋に戻った
部屋についてパソコンを立ち上げる、遺書というのを手で書くのも面倒臭い…パソコンに打ち込んでおこう
インターネットは繋がっているが、親が死んでお金を払う人がいないのでじきに止まるだろう
俺は最後にパソコンに届いているメールを確認することにした、メールフォームを開くと一件だけ新着で届いている
「…なんだこれ、迷惑メール…?」
件名には悪魔を信じますか?…と書かれている、何か怪しい迷惑メールのようだ
俺は最近巷で噂にやっている、「デーモンメール」という都市伝説を思い出した
いつの間にか届いているメールで、そのメールが届くと悪魔が現れて魔界へと連れ去ってしまう…という、まぁ普通ならば信じられないような話だ
「もしかして、これが?」
もしそうだとしたら、俺の元に悪魔が…いやなんて非現実的な!悪魔なんてこの世に存在するはずがない
しかし、どうせ死ぬつもりなのだから…その前に検証をしてみてもいいかも知れない
悪魔、という存在が本当にやってきてきたら…俺を死なせてくれるのではないだろうか?ならどっちにしろ死ぬことに変わりはない、ダメで元々…俺はメールを開いた
「…あれ、これは…」
開くと本文には、「はい」と「いいえ」と書かれていた…どうやらクリックで答えられるようだ
「…はい、っと」
カチッと「はい」をクリックすると…急にパソコンの画面が真っ黒になった
「はぁ…?」
何かヤバいウイルスでも感染したのだろうか、ともかくやはり「デーモンメール」などというものは存在しなかったということだ
パソコンは黒い画面のまま反応がない、動いている様ではあるのだが…しかしこれで今はパソコンで遺書を書くことが出来なくなった
…仕方ない、手書きで遺書を書くかとパソコンから目を離した瞬間にパソコンから眩い閃光が走った
「わぁっ!?」
あまりの眩しさに俺は目を閉じ、驚いて尻餅をついた
「いたた…」
光が収まり、尻を摩りながら俺は目を開けた
そこには…
「…っ、っ!?」
「人間よ、よくぞ我を呼び出した…褒めてやろう」
深い紫色の長い髪から捩れた二本の角が伸び、青い肌の整った顔に色を反転させたような黒と赤の目
スタイルの良い豊満な体には申し訳程度に隠すような蝙蝠みたいな服を着て…その後ろからは黒い羽や尻尾が生えている
そんな、まるで悪魔のような美しい美貌の女性が佇んで俺を見下ろしていた
「あ、あ…悪魔だ…」
本来ならば、おかしな格好の女性…のはずだが彼女の出すオーラが俺の本能に教えてくれる、人間より強大な力を持つ者だと
「ふふ、そうだ…悪魔さ」
唇を舌で舐める動作一つで、俺の体は萎縮する程の威圧感を感じる…本物だ
「え、あっ…その、俺…」
「そう怯えるな、とって食うわけではない…人食は流行らぬからな」
微笑を浮かべる彼女は俺の様子を見て、少しだけ威圧感を無くしてくれたようだった
「我を呼び出したのだ、望みを言え…悪魔の契約を交わそう」
「あの、だったら…俺を…殺して…」
「そうか、では契約を…って、は?」
俺が告げると、彼女がぽかーんとした表情で止まった
「待て…我の聞き間違いか、今殺してと聞こえたが…」
「あぁ…殺して、ほしいんだ…悪魔さんなら、簡単だろ…?」
俺が再びそう告げると、彼女は急にうろたえ始めた
「み、見たところまだ若い身空ではないか?し、死に急ぐには早いだろう?まだこれからの人生で楽しいことが沢山あるはずだろう、なっ?」
「いや…もう良いんだ、親が死んだから…もう一人ぼっちだし…どうせなら俺も両親の所へ…」
突然彼女は俺の身体を抱き寄せて、俺の身体をキツく抱き締めた…あぁ柔らかくて暖かくて気持ちいいなぁ
「ば、馬鹿者!し、死ぬなんて言うな…っ!つ、辛かったのだろう…悲しかったのだろう、だ
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