ドラゴンのお姉ちゃんが慰めてくれるお話

私には弟がいる、父側の方にできていた血の繋がっていない弟だ


複雑な家庭…というやつなのだろうがそんなことはどうでも良いではないか


母がどうあれ私にとって弟は大事な弟であり男でもある、最初はドラゴンの私からしたら人間なんて下等な生き物だと思っていたが…まぁあれだ、一目惚れしてそのまま強引に私のものにしたのだ。


弟は学校という学問を学ぶ場所に通っているらしく、夕方までは家にいない。早く帰ってこないかといつもソワソワと待っている


「…ただいま」


「おぉ、おかえり弟よ!…おい、何があった?何やら顔が暗いぞ」


「…いや、なんでもない」


「馬鹿、何もない奴がそんな顔をするものか。…もしや、この姉にも話せないようなことなのか?」


ようやく待ちわびていた弟が帰ってきた、私は思わず尾をくねらせ羽を広げて弟を出迎えた


しかし帰ってきた弟の顔は只ならぬ表情をしていた、まるで絶望の淵にいるかのような淀んだ顔をしている


普段ならば学校から帰ってくるなり私に笑顔で返事をしてくれるのだが…一体どうしたと言うのだろうか?


「…いや」


「ならば話せるのだな、話せ」


私の可愛い弟のこのような顔を見てはいられない、原因を聞きだすために少し強めの口調になってしまった


あぁすまない、怒っているわけじゃないんだ…だからそんな顔をしないでくれ


私が見たいのはそんな顔じゃない、いつもみたいに笑って欲しいんだよ…


「…実は、テストの結果があまり良くなくて…」


「…ふむ、それを出せ」


「はい…」


私は弟にテストを出すように命じる、震える手で私に数枚の紙渡してくれた


…ふむ、なるほどな。確かにお世辞にもいい点数とは言えん、ただ悪い点数と言うほどでもないのだがな


しかしここで弟に「別に悪い点数じゃないぞ」と励ましたところで何になる、何もなさないだろうな…ここは姉として意見を言わせてもらおうか。ドラゴンの私としての意見だから、それがこいつのためになるか分からないが


「確かにお世辞にもいい点数とは言えんな」


「…うん」


「しかし、それで落ち込んでいて何になるのだ?」


「…」


「別に落ち込むな、と言うわけではない。時にはそれも必要だろう、だがそれからどうするのかが一番大事なんだ」


私も何か失敗することや、物事に満足できる結果を残せなかったことぐらいある。しかしそれで落ち込んでいるだけでは何も解決しない、失敗や間違いを反省して今後に生かしていく事が大事だ


「お前はどうするのだ?このまま絶望してやめるのか、それともまた頑張って努力してみるのか…」


「…また、頑張ってみるよ」


「よく言った、それでこそ私の弟だ」


笑った、やっと笑ってくれた。ようやく私の大好きな弟の顔に戻った、まだ気分は晴れてないようだが…そういう時にはこれだな


「こい、お姉ちゃんが抱きしめてやろう!」


「わっ…」


私は弟の手を引き、強引に抱き寄せる。こうでもしないと照れて逃げられてしまうからな、念の為羽根と尻尾でも抱きしめておくか


「聞こえるか?私の鼓動が、雄大な力を持つドラゴンの心臓の音が…」


「…うん、あったかくて…凄い力強い音で…身体に芯にまで響いてくる」


「お前はこの私の弟だ、雄大な力を持つドラゴンのな。だから次は絶対に、出来るはずだ!」


「…姉さん」


「いいか、覚えておけ。自分以外に敵なんてほとんどいないものだ、最大の敵はつねに自分自身であることを知れ!判断を誤ったり、無駄な心配をしたり、絶望したり意気消沈するような言葉を自分に聞かせたりすることによって最大の敵となるのだ!」


「…うん、分かったよ!」


弟の顔が晴れる、やはり弟にはこの顔が一番似合うな。こいつが悲しむ顔や苦しむ顔は見たくないからな…


「ならば良し、だ。もう大丈夫か?」


「うん、ありがとう…姉さん」


「なに、気にすることじゃない。弟な何かをしてあげることが姉の喜びなのだからな、お前の方こそちゃんと理由を教えてくれて嬉しかったぞ?」


デリケートな問題かもしれなかったので、あそこで黙ったままだったら私は無理に聞くつもりは無かったが…こいつはちゃんと言ってくれた。


だから私も教えを伝えることができた、それだけで姉冥利に尽きるというものだ


「…姉さん、今日は一緒に寝てもいいかな」


「なんだ…いつも私が言うと部屋を閉めて閉じ篭るくせに」


「…ダメ、かな」


「まったく…仕方ないやつだな。いいぞ、お姉ちゃんが一緒に寝てやる」


まさかこいつからこう言われるとは思ってもいなかった、いつも私が言うと顔を真っ赤にして部屋に閉じ篭ってしまうのだが…あぁ言われるとどうやっても断れ
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まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33