「ご主人様〜、お夕飯の支度ができましたが…って寝てらっしゃいますね」
…誰か女の人の声がする、誰かいるみたいだ
「…母、さん?」
「ご主人様?私です、ブランシェですわ。」
「え?ぁ…ごめん、寝ぼけてた」
家で女性の声がしたから、てっきり母さんかと思ったぜ…もう随分聞かなくなったんだけどさ
「いえいえ、それよりもお夕飯の支度ができましたわ」
「えっ、わざわざ用意してくれたのか?」
夜飯はコンビニで何か買おうかと思ってたんだが…
「当たり前ですわ、ご主人様のお世話のためにいるのですから。…ご主人様、さては今夜も買って済まそうとしていましたね?」
「うっ…するどい」
「ご主人様にはちゃんとした栄養のあるものを食べてもらわないとダメですわ、さぁさぁいきましょう」
「へいへい…」
ブランシェさんに背中を押されてリビングまで降りてくる
「食事などの生活費の仕送りはローラ様からいただいていますので、明日からは食べたいものなどがありましたら仰ってくださいね♪」
と、彼女は言うが今のリビングのテーブルに並んでいる料理を見れば言葉など出ないだろう
「すげぇ…これ全部ブランシェさんが?」
「はいっ、腕によりを掛けさせていただきました」
今まで俺は雑な料理しか作ってこなかった、しかしいまテーブルの上に並べられた料理を見よ
彩り豊かな料理の数々は素人目に見てもかなり手が込んでいることが分かる
「な、なぁ、食べていいか!?」
「はいっ、たんとお召し上がり下さい♪」
「い、いただきますっ!」
待てから解放された犬のように料理に手をつけようとして、ある事に気づく
俺の箸とかスプーンとかはブランシェさんの手にある
「どうぞ、口をお開けになってください」
ブランシェさんが俺の横で料理を箸で取り、こちらへ…
こ、これは…仲の良い男女のみに許される「あーん」というやつではないか
漫画とかでよくある風景だけどコレかなりこっ恥ずかしいというか何というか
「どうぞ〜」
でもこの、すっごい期待に満ちた表情で差し出されるブランシェさんを断る度胸はなくて…
「あ、あーん…?」
「はい、あーん♪」
め、めっちゃくちゃ美味ぇ…
けど今は恥ずかしさでいっぱいいっぱい
「お口に合いますか?」
「あ、あぁ…凄い美味しいよ」
「っ〜!」
料理を褒められて嬉しがっているのだろうか、耳と尻尾がブンブン動いている
「た、たくさんありますからっ!いっぱい食べてくださいね!」
「う、うん、じゃあ箸を俺に渡して…」
「はいっ、あーん♪」
「…あーん」
…うん、美味しいなぁ
「さっきから食べさせてもらってばかりなんだけど、ブランシェさんは食べないのか?」
「そんな、メイドがご主人様と食事を共にするなんてありえませんわ。ブランシェはご主人様に給仕する立場ですから」
ブランシェさんはそういうが、どうにも食べさせられているだけなのは忍びないが…
「ご主人様にご奉仕するのが私の何よりの喜びなので、ご主人様は何も気負わずに給仕されてくださいませ♪」
ブランシェさんのこの笑顔を見てると、なんかどうでもよくなってきた
まぁ当人が幸せならいいのだろう
「じゃ、箸をそろそろ俺に…」
「はい、あ〜ん♪」
「…あーん」
食べるのもいいが飲み物も欲しくなってきたな…
「はいご主人様、お飲み物をどうぞ!」
「あ、ありがとう…」
すごい丁度いいタイミングで飲み物をくれる、まるで心が読まれているみたいだ
「ご主人様の意図を読み取るのはメイドの嗜みですわ」
「メイドってなんだよ(哲学)」
「さぁさぁ、そんなことよりまだまだありますから沢山食べてくださいね♪」
「あ、ありがとう…」
箸でつまむ料理が皿からなくなり、食事を終える
丁度満腹で、絶妙な料理と俺好みの味付けだったがそれもメイドの嗜みなのだろうか
「ご主人様、お皿をお下げいたしますわ」
「あ…それくらい自分で」
「いえいえ、メイドの仕事ですから」
しかし、何もかもブランシェさん任せというのは…
「ご主人様、御入浴の準備はすでに整っていますがいかがなさいますか?」
「…わかった、それじゃあ入っちゃうよ」
「はい、すでに寝巻きとタオルは洗面所に用意してありますわ」
この仕事の完璧っぷりは驚くばかりだ、メイドというのは全員こんな感じなのだろうか
「洗面所まで綺麗にされてるし…」
洗面所も綺麗に掃除されていて、その仕事ひとつひとつに手を抜いていないことが素人目に分かる
「俺には勿体無さすぎるよなぁ…ち
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