今日も俺…上月(かみつ)ジュキヤはいつも通り、通っている高校から誰もいない家へと帰ってくる
何故誰もいないのか、それは小さい頃に交通事故で両親が亡くしてしまったからだ
それからしばらくは親戚の人と暮らしていたが、高校を入るのを機に独り暮らしだ
親戚の人からこのまま一緒に住まないか、という話もあったが俺は迷惑をかけたくないから…と一人暮らしを強く希望した
親戚の人は俺の意見を尊重してくれたので、俺は一人暮らしをしている
うちはそうでもなかったが、親戚の家はかなりの大金持ちらしく多大な仕送りのおかげでかなり自由な暮らしをさせてもらえている
最初の頃は一人暮らしは大変だったが、まぁやれば慣れたものだ。
飯を作るのが面倒くさい時はコンビニとかに買いに行けばいいし洗濯物も男なのでそこまで多くはない
時折寂しさや人恋しさを感じるが、やはり気楽な一人暮らしを選択して良かったと思う
「ただいま」
一人暮らしでも俺はこの言葉を言う、誰も返してくれるはずは無いが一人の寂しさは少しだけ誤魔化せる気がするからだ
「おかえりなさいませご主人様!」
「…は?」
家に入ると、なぜかメイドさんが出迎えてくれた
おかしい、俺の家には誰もいないはずだ
いや、たまに親戚の人が様子を見に来ることがあるので必ずしもいないわけではないが…
「ご飯にしますか?お風呂にしますか?それとも、私にいたしますか?」
少なくとも俺の親戚に、こんなメイドさんはいなかったはずだ
「…あ、あの…どちら様でしょうか?」
「あら?ご連絡に不備があったのかしら…あの、とりあえず玄関先ではなんですから、リビングの方へ」
「え、あ、はい…」
見知らぬメイドさんに、見知った家のリビングへ通された
「ではまずはご挨拶を、本日よりこの家…ジュキヤ様の身の回りのお世話をさせていただきます、メイドのブランシェと申しますわ」
メイドさん…ブランシェさんは優雅にスカートを広げ一礼をする
「えっ?…えっ?」
「私はジュキヤ様の家系の親戚に辺りますローラ様の命により、この家へ仕えることとなりました」
ローラさん…俺の一人暮らしの援助をしてくれている、親戚の叔母さんだ
母さんの兄さん…つまりは叔父さんの嫁として来た人で、エキドナと呼ばれるラミア種の魔物だったはずだ
最近は魔物も随分と社会に馴染んでいてそこまで珍しい存在じゃないが、小さい頃初めて会った時は驚いたものだ
「あ、あのブランシェさん…」
「ブランシェさんなどと…私のことはブランシェと呼び捨てて構いませんよ?私はご主人様のメイドなんですから」
「い、いやそんな…だって見た感じ年上だし…それよりもさ、ブランシェさんも魔物だったりするのか?」
ブランシェさんの姿をよく見てみる、年は20歳くらいだろうか?
無地の黒いワンピースに白いフリルつきエプロン、メイドキャップというよく見るメイドの姿ではあるが少し違和感がある
ふわふわした白に近い水色で短めの髪、身長は…俺より少し低めだ
メイドキャップからはみ出るように垂れた犬の耳と腰あたりからもふもふした尻尾、ロングスカートの裾からはチラリと見える足は鱗のようなものに覆われていた
明らかに人間ではない部分があるし、魔物なのであろう
「ええ、私はキキーモラという種族の魔物ですわ。…ご主人様は魔物の姿を見ても大丈夫な方と聞いておられたのですが、もしかして情報に間違いが…?」
「あ…いやいや、違うんだ!その、叔母さんの知り合いらしかったからちょっと気になっただけで別に魔物に対して何かあるわけじゃないぞ!」
魔物は人間とは異なる姿をしているものがほとんどなので、社会に馴染んだ今でも差別があるとか…俺はそういうのは気にしないけど
「良かったですわ…もしそうなのだとしたら、私はご主人様に仕えることが出来なくなるところでしたから…」
「そ、それより詳しい情報を教えてもらえないか?急にメイドとか言われてもどうすればいいかわからないし…」
「ブランシェのことが聞きたいのですか!?ご主人様がそういうのであれば何でもお答えしますわ!スリーサイズは上から…」
状況を聞こうかと思ったらとんでも無いことを言い出すブランシェさん
「な、何言ってんだよ!違うから!状況がよく分からないから叔母さんからなにか聞いてないか、とかそういうことを聞いてるんだよ!」
「なるほど、そうでしたか…ブランシェはちょっぴり悲しいです。ローラ様からは、男の子の一人暮らしは何かと大変だろうから…と伺っていますが」
「そんな…もう大分一人暮らししてるんだから大丈夫だってのに…」
「…えーとですねご
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