俺がシロ姉と結ばれてから数年、魔界の研究所でシロ姉と共に働いていた
まだ籍は入れられていないけど、もう親も公認で結婚しているようなものだ
しかし仕事が忙しく、恋人であるシロ姉と二人の時間があまりとれないことがある
仕事でずっと一緒にいるとはいえ、恋人と個人的な時間がとれないのは辛い
でもシロ姉はそういう素振りを見せずに、俺の仕事を一生懸命に手伝ってくれている…本当に自分には勿体無いほどできる女性だ
「タクマさん、大丈夫ですか?ボーッとしてますが…」
「…ん、あぁ、どうにか効率よく仕事できないもんかと思ってな」
「うーん、これ以上の効率上昇は望めないと思いますよ?ただでさえタクマさんがありえないくらい効率上げてるんですから…」
「…そうやけど」
仕事を早くこなせばそれだけシロ姉との時間が増えるし…それにもう一つ仕事を早く済ませてしまいたい理由がある
もうすぐ俺とシロ姉の結ばれた日、いわゆる婚約記念日みたいなものだ
以前までの記念日は研究の仕事が忙しくて、シロ姉に何かをしてあげるなんてことができなかった
…たしかその日は仕事が終わった後にいつもより交わっていたくらいか
だから今回こそは、シロ姉に何かしてやりたいのだ
何か特別なプレゼントでもしてあげれば、シロ姉も喜ぶはず
「タクマさん、そろそろ仕事を切り上げて大丈夫だと思いますけど…」
「もうそんな時間か…じゃあ、シロナさんは先に部屋に戻ってて大丈夫やで」
「タクマさんは、またお出かけですか?」
そう、俺はシロ姉に贈るプレゼントのために仕事が終わってから毎日のように出かけているのだ
そのため、帰りがかなり遅れてしまうからシロ姉には先に寝るようにいつも言っているのだけど
「まぁ少し…研究を手伝ってくれてる魔物からの打ち合わせがな。ご飯は帰ってきてから食べるから先に寝といて大丈夫やで」
「…はい、美味しいご飯作って待ってますね」
シロ姉はいつも俺が帰ってくるまで寝ないで、しかもおいしいご飯を作って待っていてくれる
そんなシロ姉だからこそ、俺はシロ姉が喜ぶようなプレゼントをあげたい
「じゃあ、行ってくるでシロ姉」
「…いってらっしゃい、たくまちゃん」
俺は研究棟から出て、少し先の繁華街へと足を運ぶ
プレゼントのためにある魔物と待ち合わせをしているのだ
「来た来た、おーい!」
「あ、すいません今来たところで…」
「なに、気にするでないぞ。お主は我がサバトの研究によく貢献してくれているからのぅ」
子供のような小さな身体に頭の大きな角、そして四肢は動物のようにフサフサの体毛に覆われているこの魔物はバフォメットのメルルさんだ
俺たちの魔界での研究に協力してくれている、サバトという組織のトップで魔界でもかなり地位が高い魔物だ
「早く済ませてしまおうかの、嫁さんが待っておるのじゃろう?」
「えぇ、まぁ…」
俺はメルルさんと繁華街のある店を尋ねる
「おー、らっしゃい!今日も生が出るねにーちゃん!」
「ええ、もうすぐですからね」
これまた小さな身体で身に合わない金槌を軽々持ち上げているこの魔物はドワーフのアムさん
繁華街で装飾品や金属加工を取り扱っている店の職人で、研究機材などにもお世話になっている
「しかし、にーちゃんの奥さんは幸せ者だな!こんなプレゼントを用意してくれる男、なかなかいないぞ?」
「いえ、俺個人じゃできないですし…お二方の協力で初めてできるものですから」
「ふむぅ、確かにお主一人では魔力の結晶化は無理ではあるが…そう謙遜することではないのじゃよ?お主の発想はもしかしたら今後のアクセサリー界に革命をもたらすかも知れないんじゃ」
俺はシロ姉に、世界で二つと無い俺だけが渡せるプレゼントを渡そうかと思っている
魔界では大気中や地中にも魔力という力が含まれており、それが積み重なると魔石という塊になり結晶化する
それを人間の中にある魔力でもできないかと思ったのだ、そうすればその結晶を使った装飾品などは他には無いただ一つの特別な物になるだろう
というわけで、研究で知り合った魔力の扱いに長けたバフォメットのメルルさんと装飾品や金属加工に長けたドワーフのアムさんに協力を仰ぎシロ姉に内緒でしばらく前から製作しているのだ
「いままで魔力を込めた装飾品などは腐るほど見てきたが、純粋に魔力を結晶化させて作る装飾品などはあまり聞かんからのぅ…あったとしても自然から発掘された魔石を使ったものであって自らの魔力なんて発想はなかったのぅ。」
「魔力の扱いを知らぬ世界から来てるにーちゃんからそんな発想が出るとは普通思わないよなー」
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