飯の時もずっとシルクねぇちゃんは俺を見張るようにじっと側にいた
その空気に耐えきれなくなった俺は、さっさと飯を済ませて部屋に戻ったわけだ
流石に部屋までは来ないか
(出かけた時からのあの妙な態度…昔のことに関係あるって姉さまは言っていたけど)
何せ10年前の話だ、俺その時6歳だぞ…迷子になってねぇちゃんに迎えに来てもらったくらいしか覚えてない
「うーん…」
考えていると、コンコンと控えめなノックが聞こえた
「はいはい、誰や…ってねぇちゃん?」
「…たくま」
部屋には来ないと思っていたが、どうやら見当違いだったみたいだ
「…たくまっ!」
「おわっ!?」
ねぇちゃんが胸に飛び込んできた、じんわりと暖かい体温が伝わってきて女性特有の柔らかさにドキドキする
「…たくま、好き…っ!」
「は、え、ぇぇ!?」
急に部屋に訪問されて、急に告白された…?
何言ってるんだ俺、しかし事実である
「…だから、いなくならないで…!」
「な、何言ってんやねぇちゃん!いくらなんでもおかしすぎるで!」
「…いなくなっちゃ、やだぁ…」
「いなくなるって…何言ってんや…?」
顔を上げたねぇちゃんは泣いていた、一体どうしたというのだろう…
(ん…?そういえば前にもこんなことあったような…)
ええと…そうだ、確か10年前か
俺が迷子になった時…ねぇちゃんが俺を見つけてくれた時に、同じようなことがあった
あの時は見つけてくれたねぇちゃんがすごい泣いてて…そうそう、確かその時からねぇちゃんと手を繋ぐようになったんだよね
いや、思い出したはいいがねぇちゃんがこうなった理由がわからない
「…たくまを守るの、私が…いなくならないように…」
「ねぇちゃん…?」
「…たくまが好きだから、もうあんなことには…!」
泣きながら言葉を紡ぐねぇちゃん、少しずつ分かってきたぞ
多分ねぇちゃんは昔のことを引きずってる、だからやたらと俺を見張ったり過保護になっていたんだ
なんで急にそうなったかというと、多分俺が商店街までの道を覚えていなかったことと…決定的なのがひったくりの件だ
で、いまねぇちゃんに告白されたのは分からないけど…つまりねぇちゃんはいま泣くほど俺に対して過保護になっているわけだ
なんと言うか、うん…
「ねぇちゃん…俺も、ねぇちゃんが好きやで、だからいなくなったりせえへんから…とりあえず泣き止み?」
「…たくま、本当?」
「マジマジ、俺ねぇちゃんのこと大好き」
「…たくま、うれしい…」
ねぇちゃんが泣き止み、珍しく笑みを浮かべる
「ねぇちゃん、落ち着いた?話聞けるか?」
「…ん」
「よし、じゃあ…なんでやねん!」
かるーくチョップ
「うぁ…っ?」
「なぁ、ねぇちゃんアホか?アホやろ、ツッコムで?」
いや、もう頭にツッコんだあとだけどさ
「…っそ、そん、なっ…!たたっ、た、叩く事っ…!」
「え、いやただのツッコみ…」
やば、また泣き始めちゃった
「…い、いつからっ…そん、な子にっ…なったの…!」
「え、ぃゃ…ご、ごめんなさい」
「っふ、ぅ…ぁぁ…!」
きゃーマジ泣きになり始めたー!
「あ、ああああ!ゴメン!マジでゴメンなさい!マジで、マジで今のは俺が悪い!ゴメン!」
女の子、ましてや姉を泣かせるなんて…!
「ねぇちゃん…っ」
強く抱きしめる
「…私っ、たくまの事っ、大好きでっ!私、守るって…ぅ、うぅぅぅ〜…」
「あー…うん、でもさねぇちゃん…俺もこうやって泣いてるねぇちゃんを抱きしめられるくらいには大きくなってる、だからもうそんな過保護にされなくても大丈夫なんやで」
「でも、でも…!」
「もう何もできない小さな子供やない、ねぇちゃんに負んぶに抱っこやなくて…ねぇちゃんの後ろやなくて、ねぇちゃんの隣を並んで歩きたいんや」
昔から俺はねぇちゃんの背中ばかり見ていた、それは俺が小さくて何もできなかったからだ
だから、大きくなった今はねぇちゃんの隣を歩きたい
「大好きなねぇちゃんの隣で、同じ道を歩みたいんや」
「…っ!」
「確かに魔物からしたら、人間やから守られる立場かもしれへん…けど、自分で何かをできるくらいには…俺も大きくなったから」
「…たくま」
「だから、ねぇちゃんには…弟だけじゃなくて、一人の男として扱ってほしいんや」
ねぇちゃんの突然な告白でムードも何もなく始まってしまったが、そもそも告白のムードなんて分からないしこれでいい
「…ごめん、ごめんね…たくま、おねえちゃん…たくまに迷惑ばかりかけてた…」
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