「………さびしいなぁ……。」
『………。』
「………若いのにずっと寝るって…すごい退屈な事だと思わないか?」
『………………。』
「だからさ、そろそろ動いてもいいと「はいはい、病人は起きようとしないで回復に専念しな。」
「………はい………。」
一人でぶつぶつしゃべり、へんに悟ろうとしていた俺を宿屋のおかみさんが抑える。今日で何回目のやり取りになったであろうか…。
遺跡での出来事が終わり、町に戻ってきた俺たちは、今日出発する予定だった。しかし、ここ二日の行動は、平和な日本で過ごしてきた自分にとっては無理があったみたいだ。前いた世界でも味わったことの無い高熱に襲われている。
とはいっても………。
「ビアンカさーん、やっぱり若いものに暇を与えるのはいいことじゃないと思いまーす。だから ゲホッ!ここは若いものの意思を尊重してさ…」
「馬鹿いってんじゃないよ、風邪を引いてる奴を動かすほうがよっぽどいいことじゃないさ!だいたいその言い方じゃ、まるであたしが若くないみたいじゃないか。あの嬢ちゃんにも心配かけたくないだろ?」
「…はい。」
この宿屋「ルーン」の料理長兼宿屋の店主の妻、『ビアンカ』さんは、今日の朝いち早くに俺の体調の悪さを見抜き、こうやって看病してくれている。料理だけでなく、部屋の掃除やシーツの洗濯などもしているというのに、自分の世話までしてもらっている。ありがたいことなのだが、さすがに悪い気がしてくる。
一度は断ったのだが、半ば強引に宿にもう一泊させられる事となった。店主の方も「家内はこうなったら梃子でも動きません。こちらとしては宿代さえもらえればいつまでもいていいですよ。」と言ってくれていた。ただ、いろんな客を迎える場所に病人を置いてもいいものだろうか?
「それじゃ、下に行って来るけど…くれぐれも抜け出そうとするんじゃないよ。」
「はい…ゲホッ ウェッホ!」
そんなこんなで、現在に至る。今の状況、非常に暇である。
そして、もうひとつの暇な原因…旅仲間であるロルが、朝から町に出て行ってるということ。
「ケホ……ロルの奴…大丈夫かな……ゥゲホッゴホッ ウッホ”!」
心配しても仕方が無いことだが、危なっかしい娘なので心配するなというほうがおかしい。
「……ふぅ…しゃーない……もう一度寝るか……」
全く眠たくないが、目を閉じていればそのうち意識はなくなるだろう。今はおかみさんの言うとおりさっさと体を治すことだけを考えよう。
※
「…ふぅ…。」
今回の遺跡騒動で、自分がどれだけ迷惑を掛けたかを振り返る。
半ば強引に仲間にしてもらい、生活費を払って貰っているばかりか…敵の罠にはまり、慕っている相手を危険な目にあわせ、そんな自分を助けてもらい…
「…かぜ…つらそうだった…な・・・。」
私、ロル=マシュティは自分の不甲斐なさに嘆かざるを得ません。
「さんざんめいわくかけて…おいて………きょうだって………。」
翔一の体調が悪いのだって、ビアンカさんが気づいてくれなかったらきっと気づかなかった。ああなったのだって、自分のせいなのに…気づいてあげれなかった。そんな自分が、翔一の傍にいることが、嫌になって……
「…しょういち…しんぱいしてるかな……。」
宿屋から飛び出して、現在に至る。現状、非常に気まずいです。
「…いちおう…ビアンカさんにはくすりのかいだしって…いって…る・けど…」
魔物になったためか、風邪薬なんて知らず、街をブラブラするしか出来ていない。おまけに周りの視線の中に、ちらほらと思い出のある視線が含まれている。
(………この視線…やっぱりヤだなぁ……。)
自分の服装は周りと大した差は無い。ただ、顔と腕の殆どを覆っている包帯が、否応にも存在感をだしてしまう。
当然、この包帯は怪我などではない。…自分が、『魔物』である証と言ってもいいものだ…。
(包帯を取ることが出来れば…この視線も…なくなるのに…)
いつも思っていることだけど…それが出来ればこんなに悩まなくてもいいのに…。しかし、この包帯が無ければ服を着ることも、歩くこともままならない。私達マミーの体は特別敏感なため、こうした特殊な包帯で覆うことで生活することが出来る。もしこの包帯が無ければ、吐息が肌に触れるだけで、快感と刺激によってまともに意識を保っていられなくなる…。
(………やっぱり……私みたいな魔物が…普通の生活なんて…恋なんてしちゃいけないのかな…)
さっきからこんな考えばかりしている。そしてとてもいたたまれなくなる…。この感情に嘘がないがために、辛くて、悲しくて、虚しくなる。ただでさえ異端な存在である自分は、傍にいるだけで迷惑をかけているのに
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