職人の朝は早い。
一時的とはいえ、ミラル殿の弟子(と言う事にされている)である我輩も例外ではない。
「…どうであるか?」
「……教えた私が言うのもなんだけど、短期間でよくここまで出来るようになったね。」
「ミラル殿の教え方が良かったからである。」
「そんなことはないさ、素質があったからここまで出来るようになったんだと思うよ。」
そう言うミラル殿の表情は、嬉しそうに見えるがどこか寂しそうな雰囲気が見て取れた。
人並みに出来るようになった以上、刀を返してもらってアレクシアの腰が良くなったら旅に戻るであるからな…
…まぁ、早急に旅に戻らねばならん理由も特に無いのだが。
「そんな悲しそうな顔をしないで欲しいである…何も、今すぐに旅に戻るわけではないのであるぞ?」
「…もう少し居る?」
「この町で出来ることはたくさんあるからな…出来ることをやり尽くしてからでも遅くはあるまい。」
「そっか、まだ居てくれるのか…えへへ…」
今にも泣き出しそうだった事もあってか、彼女は目に涙を溜めながら笑い掛けてきた。
文句なしに可愛い…可愛いのだが、何と言うか…こう…胸の辺りが痛むであるな…
「さぁ!そうと決まったら既成事……ゲフンゲフン!…みっちりと修行をしようか!と言うわけで奥の部屋に…」
「ミラル様、お客さんが来てますよ。」
「…呼ばれてるぞ。」
「いいところだったのに…はいはい、今行くよ。」
不機嫌そうな顔をして工房を出て行くミラル殿…
逆が来なかったら我輩は何をされていたのだろうか…
まぁいいか、ミラル殿が戻ってくるまでこっそりサボるか。
「失礼しま……だ、大丈夫ですか?」
「前が見えねぇ……」
サボっている途中で眠ってしまったらしく、思いっきり殴られた上に説教までくらってしまったである…
読者の諸君…人に向かって金槌を振ってはいけないであるぞ…
「…その…これを鍛え直して欲しいのですが…」
「うむ、少し待っていてくれ…」
「あの…本当に大丈夫なんですか?」
「問題ない、戻って来るころにはギャグ補正で治ってる。」
「えっ?」
「いや…なんでもない。」
さて…サイクロプス殿のところへ持っていくとしようか。
そう言えば、我輩の刀を預けたままだったな…調査とやらはいつ終わるのだろうか。
「状態は悪くないとの事でそんなに時間はかからないと言っていたな、万全の状態になるまで大体1時間かかるがいいであるか?」
「それではお願いします……本当に治ってる…」
ギャグ補正ゆえ致し方なし…
なんて冗談を言ってる場合じゃないな…接客中だし、真面目にやろう。
…それにしても、目の前の女性…人間のように見えるが……何と言ったらいいのだろう。
人間の女性にはない何かを持っている気がする…我輩の勘はあまり当てにはならないが、なんとなくそんな気がするである…
「……あの…」
「ん?あぁ失礼した、あまり女性の顔をじっと見つめるものではなかったな。」
「いえ…ただ、貴方のお名前を聞きたいなと…」
「我輩の名であるか?鉄輝であるが。」
我輩の名を聞いた瞬間、彼女の表情が先ほどよりも明るくなった。
…んん?我輩って名を知られるようなことをしたであるっけ?
「やはり貴方でしたか!こんな所で出会えるなんて非常に光栄です!」
「…すまん、我輩は過去に貴殿に出会ったことはないのだが…」
「初対面ですから…私は貴方に憧れて育ったんですよ。」
…本当にどういうことであろうか?……自分で言うのもなんだが、変態的な意味以外では有名になった覚えは無いのであるがな?
「どんな強情な魔物でも、胸を触られることを喜ぶように調教してしまう凄い人だと聞いています!」
「……それって凄いのか?」
「凄い事ですよ!私の友達も、貴方のような調教師になりたいと言っていましたから。」
「勘違いしている所申し訳ないのだが、我輩は世界せ……どこにでもいるつまらない学者であるぞ?」
「武術にも長けていると聞きました…一度手合わせしてみたいです。」
我輩の言ったことを聞いているのだろうか……うん、聞いてないなこれは。
早く誰か来ないかな…適当に押し付けて、戦利品の研究をしたいである…
「あきらー、お主の剣…もとい、刀の調査が終わったのじゃー。」
「む?そうか…それで、サイクロプス殿は何と?」
「武器として使うなら、これ以上のものは中々無いって言ってたの…彼女が認めるのだから、それだけ素晴らしいものだと言うことじゃろうな。」
「ふむ…流石父上の刀、サイクロプスにも認められるとは…」
これを八代目が聞いたらどう言うであろうか…流石に返せとまでは言わないだろうが…
まあ、埃を被せるほどなのだから彼には必要はないだろう。
さて…バフォメット殿に彼女を押し付けて逃げ…
「話は聞かせ
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