一時的ではあるが、大幅に同行者が増えた我輩の旅路。
流石にこの人数では動き辛くてかなわん…早めに何とかせねば…
無論、町に着いた途端にはいさようならなんて訳にはいかんであるからな…むぅ…
「次に行く町はどんな町なのかしら?」
「レイナードという町であるな…観光案内書によると、町全体が良い香りに包まれており、食事も美味いと書いてあるな。」
「どんな町なのでしょうか…楽しみです。」
「異国の料理か…どんな物があるのか楽しみじゃ。」
「レイナードね…何年か前に妹と共に訪れた事があるわ、人間共の作り上げた町にしてはなかなか良かったわ。」
ヴァンパイアを納得させるほどの町か…楽しみであるな。
「あの町になら…永住してもいいかも知れませんね。」
「人間の作り上げた町に暮らすのは良い気分ではないが…まぁ、あの町なら良いかも知れん。」
「レイナードで家の確保が当面の目的になりそうだ…どれくらいかかるだろうか?」
「うーん…早くて2・3日くらいじゃないかしら?奇跡でも起きない限り、簡単には見つからないと思うわよ。」
2・3日か…まぁ、それ位はかかるであろうな。
急ぐ旅でもないであるし、休暇だと思ってじっくりと探すであるか。
「ふぅ…久々に一人の時間を作れたであるな。」
太陽が煌々と輝く昼過ぎの町を歩く我輩。
宿は既に取ってあり、夜まで自由行動をすることになったのでこうして歩き回っている。
無論、歩き回るだけではなく、有用そうな素材や面白そうなものが無いかと目を光らせているが。
そんな中で、気持ちの良い位元気な声で商品の自慢をする声が聞こえてくる。
「そこのお嬢さん!美容と健康にとってもいい果物があるけど買っていかへんか?」
「…試食も出来るぞ?」
「そこまでしてもらえるなら…はむっ……あら、美味しい。」
「中々手に入らない貴重な品物やけど、今日は特別にお安くしまっせ?」
「そ、そう?なら買わせて貰おうかしら?」
「まいど!他のお客さんも売り切れる前に早めに買ってってなー。」
…何処かで聴いた事のある気がする話し方だ…
と言うより、あの果物って虜の果実では…
「んっ?お兄さんも気になるんか?彼女にあげれば喜んでもらえるで。」
「そういうのも良いであるが、我輩としてはもう少し別の物が見たいであるな。」
「んー…それなら、もう少し待っててなー。」
そう言って、商売に戻る行商人の女性。
付き添いと思われる無表情な女性は、我輩の方をじっと見つめている…が、行商人の女性に小突かれて接客に戻っていった。
もう少し後になったら来て見るか…それまで何をしようか…
そう言えば油を切らしていたな…後、インクも無かったか………
「うーん…いい天気じゃのぉ。」
「そうですねぇ…あまりにも気持ちよくて眠くなってきましたよ。」
「たまにはエッチ以外の事を楽しむのも悪くないわね。」
少し眠くなるような日差しの下、暇を潰す為に町を歩き回っている私達三人。
大陸では滅多に見れない魔物と、数そのものが少ない魔物が並んで歩いてる姿が珍しいのか、様々な思いが籠められた視線が私達に向けられる。
その大半は、私達の体を撫で回すようないやらしいもの…
見られる事は嫌いではないけど、やっぱり輝ちゃんに見てもらいたいわね。
「そう言えば、輝ちゃんって何で旅をしてるのかしら?」
「世界征服とやらのためではないのか?いつもそんな事を言っているし。」
「輝様は気まぐれですから…本当は、世界征服なんてどうでも良かったりするのかもしれませんね。」
世界征服ねぇ……それって、直接的にお母様を敵に回しますって言っている様なものよね…
そんな事をするくらいなら、妻を迎えていちゃいちゃすればいいと思うのよね…
私とか、琴音ちゃんとか、私とか、桜花ちゃんとか、私とか、私とか、私とか。
「輝様の考えは私にもよく分かりません……ですが、輝様の行く所どこにでも着いていく覚悟は出来ています。」
「輝一人では心配じゃからな、わっちがそばに居てやらんと何をやらかすか分からん。」
「輝ちゃんもよく好かれるわねぇ……いつか干からびそうで怖いわ…」
この場に居ない輝ちゃんへの心配をしながら空を見上げると、見えない筈の星が一際強く輝いた……様な気がした。
「へっくしっ!……あー…風邪でも引いたかな…?」
鼻の辺りを擦りながらそう呟く…が、特に熱っぽいとか体が痛いとかそういうのは感じられないな。
気のせいならそれでいいか。
「しかし…なかなか見つからんであるなぁ…家を売ってる店…」
必要なものを集めつつ、空き家を扱っている所は無いかと聞いて回ったが、どこで聞いても「町長に聞いてくれ。」ばかりである。
一軒くらいあっても良さそうなのであるがなぁ…家を扱う店…
等と考えながら先程の場
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