コツ…コツ…と、二人分の足音が薄暗い廊下に響き渡る。
「着きました。」
「すまんな…しかし、本当に良いのであるか?」
「私が良いと言うのですから問題はありません。」
ヴァンパイア殿に連れられて、我輩の仲間がいる部屋の前へとやってきた。
どうして案内してくれたのかを聞いたが、何度聞いても教えてくれなかった…
「失礼します。」
「どうぞー…あ、それダウト。」
部屋の中では、トランプ片手に紅茶を飲んで寛いでいる3人の姿があった。
…あれぇ?…誘拐ってこんなに穏やかな単語だったであるか?
「最初は強引に連れて来たのですが、事情を説明したら協力してもらえることになったのです。」
「事情?」
まぁ、誘拐した相手を協力させるほどだからそれなりの事情なのだろう…
「お姉様の暇潰しです。」
「だろうな。」
うむ、真面目に考えたら負けだ、人間の常識を持ち込んでも何の役にも立ちそうな気がしない。
「足止め要因として溜めて待ってたわ、私自身も輝ちゃんと直接戦ったこと無かったから調度いいかなって。」
「私は人員の配置を手伝ったりしましたね、いきなり入り口に全員を配置しようとしていたのを止めなければいけない気がして…」
「全員分の食事の用意の手伝いもしたの、流石にヴァンパイア殿一人にやらせるのはかわいそうでな。」
「足止め…もしかして、刑部狸のいた部屋の先にいたとか?」
「そうよ?黒い扉を選ばない限りは私に当たるはずなんだけど、来たのは泣きながら鍵を握り締めて殴りかかってくるむさ苦しいのだけだったわ。」
…鞭…持ってこない方がよかっただろうか…
「後残っているのはお姉様だけですが…輝相手ではお姉様に勝ち目はないでしょうね。」
「姉に対しての態度が酷すぎると思うのだが…」
「事実を言っているだけです、決してお姉様が憎くて言っている訳ではないのですよ?」
「…この際そういうのはどうでもいいが、ヴァンパイア殿の姉のいる部屋はどこであるか?」
「戦うのですか?」
「いや…この鞭を持ち主に返そうかなと…」
「そうですか…分かりました、こちらです。」
そう言って、部屋を出て行くヴァンパイア殿。
その後を追い、我輩も部屋を後にした。
…のはいいのだが…
「なぜ着いてきた…」
「「「面白そうだったから。」」」
「皆さんお静かに…見つかってしまいますよ。」
今、我輩達はヴァンパイア殿の姉のいる部屋の上の部屋にいる。
そこから、床にこっそりと穴を開けて、中の様子を観察しているところだ。
「輝様が戦わない場合は、もう一人の方が戦うのですよね?」
「たぶんそうだろう…今更だが、他人の戦いをじっくりと見るのは初めてかも知れん。」
「わっちとしては、争いで人が傷つくのは見ていて辛いのじゃが…」
「大丈夫よ桜花ちゃん、危なくなったら輝ちゃんを放り込むから。」
「我輩は消化剤か何かか?」
「ふふっ、中がよろしいのですね。」
「素直に喜べん…お?来たみたいであるな。」
「『滅びよ!ここは、お前の住む場所ではない!』」
「私は自らの力で蘇るのではない…欲深な人間共の力で蘇るのだ…力が唯一の正義なのだからな。」
「『それはお前の勝手な言い草だ!人々は、同じ信念の下に求め合い、集い、そして歩んで行く。』」
「だが…現に人間共は欲望によって発展し、信仰によって統率されてきたではないか。」
「『人々は力だけでは統率出来ない!敬い、慈しむ心があるからこそ統率できるのだ。』」
「くだらん…どちらが正しいか…死をもって分からせてやる!」
「……」
「ククク…私のカリスマの前に言葉も出せないか…」
「…俺の想像していた吸血鬼と何かが違う…」
「何が違うと言うのだ?言葉を解せぬ下等な存在だとでも思っていたのか?」
「そういう意味じゃないが……カリスマが欠片ほども感じられない。」
「なっ!?私のどこにカリスマがないというのだ!?溢れ出るほどのオーラが見えんのか!?」
「本当にカリスマがあるなら、ドアの前に『このメモの内容を間違えずに読め。』なんて書かれたメモ書きは用意しないと思うのだが…」
「わ、私が寝ずに考えた演出を愚弄する気か!?やはり、人間如きに私の偉大さは分からないのか…」
「分かってたまるかそんな薄っぺらい威厳なんか。」
「うー…こうなったら、我が力を見せつけ、平伏させてくれる!」
「………何あれ?」
「ヴァンパイア殿の姉はいつもあんな感じなんであるか?」
「恥ずかしながら…」
「…まあ…その…何じゃ?強く生きるのじゃぞ…」
「それよりもどうしますか?派手に戦ってますけど。」
「我輩としてはあまり関わりたくない…と言うより、あの男結構強かったのであるな…」
「とてもそうには見えないけど、あんなのでも本物の勇者だったわよ。」
「…我輩は貴重な経験をし
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