さて…軽く状況を整理しようか…
ワーウルフをやり過ごした我輩は、先へ進むべく中庭へと足を踏み入れた。
そのままの勢いでサクサク行ければよかったのだが…案の定、背の高い植え込みが視界を塞いでいて自分がどこにいるのかがまったく分かってない。
これが、1時間ほど前の出来事である。
「ぬぉぉぉん!出口はどこであるかぁぁぁ!?」
普段の冷静でかっこいい我輩は見る影も無く…すっかり見た目相応まで退行した哀れなショタがそこにいた。
「うー…凄く帰りたい…でも迷ってるから帰れない…ぬおぉぉぉ…」
歩き疲れ、何もする気が起きなくなってその場に座り込む。
このまま我輩は迷い続けて植物の肥料になってしまうのだろうか…なんと呆気ない最後なのだろう…
半ば諦めかけていた時だった…
「……ん?…何であるかこの匂いは?」
どこからともなく、ふわりとした甘い香りが漂ってきた。
普段なら怪しい物には近づかないのだが、判断力が欠けていた我輩は自分でも気が付かないうちにその匂いを辿って歩き始めていた。
暫く歩き続けていると、開けた場所へとやってきた。
この匂いは、中央にある大きな花から発せられているようであるな…花自体はつぼみの様になっているが…
「近くで嗅いだらどんな匂いがするのであろうか…気になるである…」
もっと匂いを嗅ぎたい…その思いが我輩の心を埋め尽くし、まともな考えが出来ない。
花によじ登り中に手を入れた時、何か柔らかい物に手が挟まれた。
「きゃあっ!?いきなりどこを触ってるのよ変態!」
突然上がった悲鳴と同時に花が開き、我輩はバランスを崩して開いた花の中に落ちてしまった。
花の中にはねっとりとした液体が大量に入っていたので怪我はしなかったが、全身が謎の液体塗れで身動きがとり辛い。
しかもこの液体……凄く甘いし…匂いを嗅いでると、変な気分になってくるである…
「もうっ!いきなりレディの胸を触った上に、中にまで入ってくるなんて…強引過ぎる子は嫌われるわよ?」
「す…すまない…頭がふわふわしてて…」
「はぁ…出口を教えてあげようかと思ったけどやめようかしら…」
「っ!?た、たのむ!何でもするから教えてくれ!」
「ちょっ!?わ、分かったから離れなさい!胸が服に擦れて…んっ!」
彼女の甘い声が聞こえたところで我に返り、すまないと言いながら彼女から離れる。
彼女は一瞬残念そうな表情になったが、直ぐにそっぽを向いてしまった。
とりあえず、かのじょがどんな魔物か……考えるまでもないであったな。
我輩の知識に間違いがなければ、彼女はアルラウネと言われる魔物であろう。
「それで…出口への道を教えて欲しいのだが…教えてもらうだけでは我輩の気が済まん、何か出来る事はないか?」
「中々いい心構えね…それじゃあ、探し物をしてもらえるかしら?」
「探し物…であるか?」
「えぇ…鍵を落としてしまったのよ…とても大事な鍵をね。」
…と言う事は、我輩が泣きながら彷徨っていた場所のどこかに鍵があったかもしれないということであるか…
普段の我輩なら気づけたであろうな……くやしいのう…くやしいのう…
「探しに行くのは構わんが…正直に言って迷いそうな気しかしないである…」
「しょうがないわね……これを使いなさい。」
そう言って、我輩に畳まれた羊皮紙を渡してきた。
これが地図なのだな…うむ、確認してみたが地図だった。
…地図があっても、我輩は迷える自信があるがなっ!
「その地図に、貴方の血を一滴垂らして見なさい。」
「ほう…」
懐から小太刀を取り出し、指を浅く切って言われたとおりに垂らして見る。
我輩の血が地図に染みを作った…が、直ぐにその染みは消えてしまった。
変わりに、地図の中央部分…我輩がいるであろう箇所に赤い矢印が現れた。
「これは………」
「魔法の地図って言う魔道具よ、特殊なインクを使うことで現在いる場所の地形を勝手に書き込んでくれるの。」
「そんな便利なものがあったのか…今後の研究材料として幾つか仕入れておきたいところであるな。」
「現在地の表示は一回成功すれば問題無いのだけれど、人間では使えないのよ。」
………今何と?
「貴方って、どう見ても人間よね?」
「あ、当たり前である!自分でも疑いたくなるが、一応人間である!」
「…まぁ、私は発明家でも何でもないから何とも言えないわ。」
「……とりあえず、鍵を探してくるである。」
植え込みに手を触れ、感触を確かめる…ふむ、これならいけそうだな。
我輩は植え込みの上に飛び乗り、鍵のありそうな場所を目指して飛び移って行く。
…なんで最初からこうしなかったのだろう…
暫く探し回っていると、どこかで見た奴を見かけた。
「そんなところで何をしているであるか?」
「うおっ!?お前こそ何を
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