「そう…ワーバットは倒されてしまったのね…」
「予想外でしたか?」
「想定の範囲内よ…あの程度で倒れられても困るわ。」
「ですが、次は少々苦戦すると思いますよ。」
「あの子ね…私もあの子は苦手だもの…」
「彼があの子をどう突破するか…それとも、健闘空しく力尽きるか…」
「ここまで来てもらわないと困るわ、私達の楽しみが無くなってしまうもの。」
「おっ、海が見えるである。」
立地条件はどうにも出来ないほどに悪いが、窓から見える景色はなかなかいいであるな。
現在進行形で攻略中だということをうっかり忘れてしまいそうである。
しかし…やたらと窓が多いであるな…窓を突き破って魔物が登場!
流石にそこまでベタな登場はしないだろう…
「チェストォォォォォォォ!!」
「うおわぁ!?」
突然、我輩の近くの窓を突き破って何かが飛び込んできた。
無いだろうと思っているときにその方法で登場するのはやめてもらいたいである…寿命が縮んだ気がするぞ…
「覚悟しろ侵入者めっ…痛っ!」
「ん?」
「が…ガラス踏んだ…」
ガラスを突き破って勝手に悶えているのは、ブラックハーピーと呼ばれるハーピーの亜種の魔物であるな。
下手に構わずに通り過ぎてしまえばいい気もするが…
………はぁ…
「まったく…ほら、ちょっと見せるである。」
「くっ…その手には乗らんぞ…!」
「いいから見せろ!」
「っ!?……変な事をしてみろ…海に放り込んでやるからな!」
少しきつく言い過ぎたか……まあいい、さっさと治療してやろう。
……………
「終わったであるぞ。」
「そ、そうか…礼を言うぞ。」
さて、我輩はさっさと進むであるか。
なんだかブラックハーピーがもじもじし出したし、長居するとろくな事にならない気がしてならない。
「そ、その…助けてもらって何もせずに終わると言うのも納得がいかないから…お前がよければ…その…わ、私の巣に遊びに来ない…か……?」
この階段を下りればいいのか…構造が複雑で迷いそうである…
「ち、ちょっと待て!話くらい聞いて…痛っ!またガラス踏んだ!お願いだから待ってぇぇぇ!!」
階段を下りると、やや広めの水路へとたどり着いた。
この城の主は水路等も清潔にするようにしているのであるな、不快になるような臭いもしない…むしろ、ここで生活が出来そうである。
水路の水も透き通っており、以前に釣りをした小川と比べても大差が無いほどである。
…故に、何かが潜んでいても丸見えなわけで…
「…不意打ちが出来ない…」
「だろうな。」
以前出会った者とは別固体のサハギンと目が合い、暫く見つめ合った後に彼女がぼそりと呟いた。
「まあ、住むのに問題の無い水質なのだろう?」
「…そうだけど…」
「水周りが綺麗な所は住人の心も綺麗であるからな、この城の持ち主の心も水晶の如く透き通っているのだろうな。」
「…凄く良い人だよ…あっ…良い魔物?…」
「…その辺は良いとして、通っても問題ないであるな?」
「…不意打ちはしろって言われたけど…通すなって言われたわけではない…」
…知能が高いのか低いのか分からんな…
我輩としては、普通に通れるなら問題はないであるが。
「…やっぱりだめ…貴方を私の巣に持っていく…」
「そう簡単にはいかないか…仕方が無い。」
確かこの辺に…………あったあった。
「このデフォルメリリム人形を譲るであるから見逃してもらえんか?」
「……可愛い…欲しいけど…ここは通せない…そんな人形の1つや2つでは…」
「デフォルメスライム人形(ややひんやり)とデフォルメデュラハン人形(首着脱可)もつけるぞ?」
「…どうぞお通りください…」
こうして強敵を退ける事に成功した我輩は、無事に水路を抜けることが出来た。
「…えへへ…」
くっ…あれは可愛すぎるであろう…
「むっ…外か。」
さらに進むこと数分、今度は外に出た。
この先は中庭だろうか?格子戸の向こう側には随分と背の高い植物が見えるであるしな。
瞬間、背後から凄まじい殺気を感じ取り扉から離れる。
我輩が飛び退いた直後、扉を突き破って鍵を持った手が現れた。
「追いついたぞ!鞭を返してもらおうか!」
雰囲気的に鞭の方が良いかと思って奪っ…借りたのだがそれがいけなかったのか。
見たところ、彼は勇者クラスの実力を持っているように見えるな…正面から挑んで勝てるかどうか…
「さぁ、覚悟sぶっ!?」
「ぬおっ!?」
こちらへ近づいてくる男の上に、地面にめり込む勢いで人型の何かが降って来た。
辺りに砂煙が舞い、息が苦しくなって咽せる。
「見つけたよ侵入者!ここから先には行かせないよ!」
少しずつ視界が良くなっていき、声の主の全体像が見えてくる。
人間のような耳は無く、代わりに獣の様なふさふ
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