朝日がテントの中へ差し込み、雀の鳴き声が外から聞こえてくる。
昨夜は激しかったであるな…紅茶に合う菓子論争…
ゆっくりと起き上がって体を伸ばしていると、外から声が聞こえてきた。
「む…困った…」
テントの外に出ると、腕を組み難しい顔をして唸っている桜花がいた。
彼女が悩む所を見た事がないのだが…それほど重要な悩みなのだろうか?
「どうしたのであるか?」
「輝か…今日の食事当番はわっちなのだが…いつの間にか食材が無くなっていた様なのだ…」
「食材が無い?5日はもつ様に買い込んだはずであるが…」
「…一人旅が染み付いていたのではないか?」
あー…そう言われてみれば、いつも通りの5日分で買っていたかもしれん…
「仕方が無い、食えそうな物を探してくるである。」
「大丈夫か?重度の方向音痴と聞いたのじゃが…」
「大丈夫だ、問題ない。」
「…急に不安になってきたのじゃが…」
むぅ…そんな事を言われたら我輩まで不安になるではないか…
食材を手に入れても、真っ直ぐ戻って来れそうな気がしない…どうしたものか…
「お困りの様ね?」
声のした方に振り向くと、少し眠そうな表情のアレクシアが立っていた。
…下着姿で。
「なっ!?なんと言う格好をしているのだ!」
「輝ちゃんの寝顔を見てたらムラムラしちゃってつい…ね?」
「答えになってないだろう!あと輝にナニをした!?」
「やぁね、寝込みを襲ったりなんかしてないわよ?ちょっと一人遊びが過ぎて寝衣が汚れちゃっただけよ。」
我輩が寝ている間にそんな事が…我輩とした事が…
良い子の諸君も、たまには夜更かしをするのもいいと思うぞ。
「まぁ…手伝ってくれるのはありがたいが、ちゃんと服は着て欲しいであるぞ。」
「着るに決まってるじゃない、私はそんな性癖は無いわよ。」
「えっ!?そ、そうだったのであるか!」
「うわぁぁぁん!輝ちゃんが苛めるわぁぁぁ!」
「よしよし…輝、あんまり苛めないでやってくれないか?アレクシアのカリスマはとっくに0じゃ。」
「何気に桜花ちゃんも酷いっ!」
嘘みたいだろう?リリムなんだぜこれ。
普段の余裕のある雰囲気が欠片ほども感じられない…
なんと言うか…うん、何とも言えんである。
そんなこんなで道なりに進むこと数分、特に食料らしき物は見つかっていない。
「何で森の中を探さないのよ?」
「我輩に遭難しろと言うのか?」
「そうじゃないけど…こんな所に食べ物なんて…」
「奇跡的にパンとか握り飯が落ちているかもしれんではないか。」
「…輝ちゃんの体が心配だわ…健康的な意味で。」
冗談のつもりで言ったのだが…真に受け易いのか天然なのか…
…ほ、本当に冗談であるぞ?いくら我輩でも、埃くらいはちゃんと払うである。
さらに歩く事数分、周囲に変化を感じて足を止める。
「…早速お出ましか?」
「そんなに身構えなくていいわ、スライムとレッドスライムよ。」
「いくら凄い魔物とはいえそこまで分かるはずが…」
最後まで言い終わらない内に、木陰から女性の形をした青色と赤色の半液状の物体が出てきた。
…流石はリリム、こんなのでも能力は一流か…
「こんなのなんて言う悪いお口は塞いじゃった方がいいかしら?」
「見られながらする趣味は無い、後心を読むなである。」
「輝ちゃんは表情に出しすぎよ?」
むぅ…そう言われると反論出来ん…
もう少し、考えを表情に出さないようにする練習をせねばならんな…
「それで、貴方達は何か用があって出てきたのでしょう?言ってみなさい。」
「えっと…最近、男の人がこの辺りを通らなくて…」
「ご飯になりそうな物も無いの…」
「お腹が空いてるのね…でも、輝ちゃんを貸すわけにはいかないし…」
「我輩達も空腹であるからな…どうしたものか…」
スライムの食べ物はどんな物だろうか…是非とも知りたいであるな。
教団発行の魔物図鑑は、大体の種族が人間の血肉を喰らうとか書いてあって参考にならん。
まぁ、観察をするにしても生贄…もとい、快く手伝ってくれる人がいないであるからな…
「っ!輝ちゃん隠れて!」
「うわっぷ!いきなり何を…」
「静かに…見つかっちゃうわよ?」
アレクシアの指差した方へ視線を向けると、1台の馬車がこちらへと向かって進んで来ていた。
奴らの装備を見る限りでは、教団の騎士の様であるな…
…護衛を含めても2人しかいない…片方は少しだけ老け始めてきた感じの青年、もう片方は…我輩より少し大きいくらいの少年だ。
んっ?話し声が聞こえてくるな…
「ごめんなさい…僕のせいで…」
「気に病む事はありませんよ、物資の輸送も我々の仕事の一つですから。」
「でも…僕が失敗をしなければこんな事には…」
「君は失敗すると分かった後でも何とかしようと努力していました、そんな
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