「そう言えば…輝様は何故旅をされているのですか?」
次の町へと向かう道中、ふと琴音がそんな事を尋ねてきた。
「うむ、わっちもそれは気になるな。」
「そうね…夫のしている事を知るのも妻の役目だものね。」
「誰が夫であるか!…まあいい…我輩の崇高なる野望を教えておこう。」
三人の視線が我輩へと向けられる。
ククク…我輩の野望を知った3人がどんな顔をするか…楽しみである。
「我輩の野望…それは…この世界の全てを手中に収める事で…」
「無理ね。」
「無理ですね。」
「無理じゃな。」
…………えっ?
「いや…あの…」
「私が認めたと言っても、勇者の足元にも及ばないと思うわよ?」
「いくら強くても、人間には限界がありますもの。」
「ただの人間には埋めようも無い差があるからな、素直に諦めい。」
………我輩…旅を続けて行ける自信が無くなってしまったである…
「…こんな時…どんな顔をすればいいのか分からないである…」
「ひれ伏せ!そして命乞いをしながらあたいの足を舐めな!」
「俺の胸に飛び込んでいっしょに寝ろ!」
「闘志を燃やせ!私と勝負してその気持ちをぶつけろ!」
草むらから3匹の魔物が飛び出し、一斉に喋ってくる。
「待て待て、我輩はいっぺんに話しかけられても理解出来るような耳はしてないである。」
「「「私達と戦え!話はそれからだ!」」」
…どうやらただの脳筋だったようだ…
まあいい、憂さ晴らしついでに蹴散らすであるか。
「で?何で我輩に襲い掛かったのであるか?」
「…輝ちゃんって意外と強かったのね…」
「(ピッー)年間貞操を守り続けてきたであるからな、その辺のゴロツキや魔物には負ける気は無い。」
数分後、そこには頭にこぶを作って正座させられる3匹の魔物がいた。
まったく…少し攻撃しただけで気絶するとは…鍛え方が足りんである。
決まり手?倍速 2回攻撃 妖刀かまいたち(その辺で拾った物)である。
「と言うよりも、後ろの3人がいるのによく襲う気になったであるな…」
「えっ…?ひっ!?リ、リリム!?」
「な、何でこんなところにリリムが!?」
「いちゃ悪いのかしら?それ以前に本当に気付いてなかったの?」
「すみません…戦う事で頭が一杯で…」
本当に気付いてなかったのか…気付いてたら襲って来なかったのであろうな。
まぁ、少し体が暖まる程度に運動が出来たから良しとするか。
「しかし…そっちの魔物は見た事がないのだが…」
「サラマンダー殿から見て右にいるのが稲荷、左にいるのが龍である。」
「稲荷と龍……こっちは妖狐に似てるし…そっちはラミア?」
「らみあとは蛇の事か?わっちは蛇の様に見えるがどらごんとやらと似た種族らしいぞ?」
「ドラゴンっ!?あわわわ……」
オーク殿が酷く怯え、今にも泣き出しそうな表情で桜花を見つめている。
…そりゃな…いくら害が無いと言っても、ドラゴンと同じ種族だなんて言われたら普通はこうなるであろうな…
「安心せい、わっちは無益な争いは好まん…余程の事が無い限りは手出しはせんから安心しろ。」
「は…はひ…」
「オークは性格が極端だと聞いたが…噂通りであるな。」
「輝様…これはちょっと違う気がしますよ…」
「む…そうか…」
「輝ちゃんのそういうところが可愛いのよね〜♪」
そう言って我輩を抱き締めるアレクシア。
その直後にずるいだの離れろだの聞こえてくるが、毎日こんなやり取りを見てきているので正直に言って喜べん…
オーク殿とサラマンダー殿は羨ましそうに見てきているであるが…ミノタウロス殿はまったく動じてないであるな…
………んっ?これってもしかして…いや、そんなはずは…
「ちょ、ちょっと離れるである!」
「きゃっ!?もう…痛くしないで…」
「う…羨ましい…はぁはぁ…」
「ん?ミノタウロスがどうかしたのか?」
「………こいつ…立ったまま寝てる…」
「…なんて器用な…」
食う事と寝る事とヤる事意外に興味を示さない魔物と言う事は知っていたが…流石にこれは…
悔しいが我輩の負けである…立ったまま寝るなんて流石の我輩でも出来ん…
「あ、輝様落ち込まないで下さい…練習すれば出来るようになりますから…ね?」
「そもそも、それが出来るようになって得られる物が無い気がするのじゃが。」
「我輩は世界を手に入れるためにありとあらゆる技術を身につけなければいけないのである!くだらないと言われようとも我輩はやり遂げて見せるである!」
「フフッ、貴方といると退屈しないわ…でも、世界は諦めなさい。」
「な、何故であるかぁ…」
「貴方には荷が重過ぎる…ただそれだけよ。」
「世界などどうでも良いではないか、わっち等が傍にいるだけでは不満なのか?」
「それはっ…むむむ…」
そんな事を言われたら…どう答えて言いのか分
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