「おいボウズ、危ねえから中に入っとけ。」
船に揺られながらうとうととしていると、体格の大きい船員に怒られた。
人が気持ちよく寝ようとしているのを、邪魔するなんてとんでもないやつであるな。
「断るである、我輩は寝るのに忙しいのである。」
「そこで寝られると邪魔なんだよ、さぁ行った行った!」
有無を言わさずに船内に押し込まれる。
もう少し、外の空気を楽しみたかったであるなぁ…
「まぁ、船内でも寝れるであるがな…」
我輩としては、船内は酔っ払った商人だとか血気盛んな傭兵だとかがいるので、極力避けたかったのであるが…
まぁ、巻き込まれないであろう場所を探せばいいのであるが…
人の少ない適当な所へ腰掛け、目を閉じる。
「久しぶりであるな…故郷へ帰るのも…」
名前でも分かる通り、我輩は大陸出身ではないである。
ジパングと言う小さな島国であるが…貴殿等の中にもジパング出身者はいるであるか?
…いたとしても、我輩にはそれを確認する術は無いのであるがな。
「おいてめぇ!もういっぺん言ってみろ!」
「何度でも言ってやるよ!お前が居ると酒が不味くなるからさっさと出てけっつってんだよ!」
「上等だコラァ!今すぐ抜け!ブチ殺してやる!」
それにしても…騒がしいであるな…
放って置いてもいいであるが、安眠を妨害されたくないし…
面倒くさいが…ちょっと黙らせるであるか…
「おい貴様等。」
「あ?何だてめぇは?」
「さっきからずっと、ごちゃごちゃと五月蝿いであるぞ。」
「関係無い奴は引っ込んでろ!細切れにするぞ!」
「口で言ってもだめなら…少し痛い目に遭ってもらうであるか…」
言ってる内に、2人の間に移動する。
背丈は大体同じ…左側はやや細め…右側は太め…それだけ分かれば十分であるか。
「…よし…ハンデとして、我輩は武器を使わないである。」
「なっ!?舐めてんのかこのガキ!」
「上等だ!てめぇから血祭りにあげてやる!」
それぞれが、自前の武器を取り出す。
左が槍…右が斧…どちらも、狭い船内では扱い辛い武器である。
そもそも、手を伸ばせば届く様な距離でそんな武器を出されても…
まあいい…お仕置きの時間である。
「忠告する、死ぬほど痛いぞ!」
言うや否や、体を捻りながら宙返りをする。
それと同時に開脚し、両者の顔面に蹴りを叩き込む。
回転によって勢いの付いた蹴りを喰らい、左側の男はバランスを崩してテーブルに突っ込み、右側の男は鼻から血を出して仰け反った。
「ぐっ…このクソガキがぁぁ!!」
顔を攻撃され、怒り狂った男が滅茶苦茶に斧を振り回してくる。
我輩は、あえて男に接近し、振るわれた斧を踏み台にして男を飛び越した。
着地と同時に後ろの壁を蹴って跳躍し、振り向いた男の顔面目掛けて蹴りを加えた。
「がはっ!?は、鼻が…鼻がああぁぁぁ!!」
我輩の着地と同時に倒れこむ男。
これで一人…残りの方は、今やっと起き上がったようであるな。
「畜生…蜂の巣にしてやる!」
槍を構え、一直線に突っ込んでくる。
…槍でどうやって蜂の巣にするのであろうか…余程の腕前の持ち主でもない限り無理だと思うのであるが…
…っと、今は無駄なことは考えない方がいいであるな…
男の攻撃を見切るべく、身構える。
「死ねええぇぇぇ!!」
男の渾身の力が籠められた一撃が、我輩に向かって放たれる。
力み過ぎてて突きの狙いが少しずれている…持ち方が浅い…
こんな突き方でよく生きて来られたであるな…ある意味、賞賛に値するレベルであるな…
「その程度の突きでは、我輩を貫くことは出来んであるぞ!」
軽く手で払い、槍の中腹辺りに手刀を加えて叩き落す。
そのままの勢いで男に接近し、みぞおちにも手刀を加える。
男が膝を付いたのを見計らって、顎に正拳突きを叩き込んだ。
何とも形容し難い悲鳴を上げて倒れこむ男…
そのまま動かなくなったが、急所は外してある筈なので問題は無いである。
「ふん…何も得ないつまらん戦いだったである…」
こんな所で無駄な体力を使う羽目になるとは…先行きが不安であるな…
ところで、こいつ等はどうするであるか…
「…こいつ等どうすればいいであるか?」
「海に捨てとけ、その辺の魔物が勝手に拾うだろうから心配ない。」
「あー…運ぶのを手伝ってもらえないであるか?」
「よし分かった、おい!お前等も手伝え!」
男の呼びかけで、一部始終を見ていた者達が倒れてる男を運び始めた。
これで少しの間は平和な船旅になりそうであるな。
…ジパングへ着くまでに、何人の乗員が海に放り込まれることやら…
「…む?早速来てるであるか。」
「…ネレイスか…こんな奴等にはもったいねぇくらいだな…」
我輩達が船上へ出ると、そこには既に魔物が待機していた。
船と並んで
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