5羽:呪われた剣と白い悪魔

「今日も賑やかじゃの。」
「港町だからね。」

僕達は、先日の約束通りにアクアリウムへとやってきた。
露天には、珍しい商品がたくさん並び、大変賑わっていた。

「…お兄様…早く…♪」
「クリスも楽しそうにしてるね。」
「うむ、大変良い事じゃ。」

見たことも無い商品を見て、目を輝かせているクリス。
今日来て正解だったかな…クリスの笑顔って中々見れないもの。

「……♪」
「それ気に入ったの?」
「…うん…♪」

クリスが見つめる先には、可愛らしい人形が置いてあった。

「買うかの?」
「…いいの…?」
「よいよい、これくらい気にしないでいいのじゃ。」

そう言いながら、商人にお金を渡すアイリス。
買ってもらった人形を大事そうに抱きしめているクリス。

「…ありがとう…♪」
「…竜姉妹ではないが…ちょっと襲いたくなってしまったのじゃ…」
「…ここでやらないでよ?」
「…宿屋…行く…?」
「アルト、金をやるから色々と見てくるといい。」

そう言って、僕に金貨を2枚渡して、クリスを連れてどこかへ行ってしまった…
しばらくは戻ってこないだろうなぁ…はぁ…

仕方が無い…戻って来るまで適当に見て回ろう…





「ふぅ…これだけあれば大丈夫だね。」

手持ちの袋一杯に詰まった荷物…中身は鉱石類ばかりだけど。
その中で一番入手に苦労したのは水晶だね…不純物がまったく入ってない水晶は流石に高かった…

値引き交渉しなかったら、だいぶお金取られてただろうなぁ…

「…手元には銀貨が5枚…どうしよう…」

普通にアイリスに返してもいいけど…うーん…
もう少し見て回ろうかな…ん?

「…路地裏……」

普通なら、誰もいない路地裏なんか気にも留めないだろう。
でも…何故だか分からないけど…この先に行かなくちゃいけない気がする…
気がつくと、僕は路地裏の方へと歩き始めていた。

「…誰もいない…分かってたんだけどね。」

最奥へ着いたが、やはり誰もいない。
さっきの変な感覚は何だったのだろうか…
まあいいや…アイリス達と合流しよう…

そう思って振り返ると、直ぐ目の前に何かがいた。

「うわぁ!?」

驚きのあまり、バランスを崩して尻餅をついてしまった…
さっきまで、まったく人の気配がしなかったのに…

「…アルト=V=ラグナロック…間違いありませんね?」

この人…なんで僕の名前を…?

…あぁ、そういえば指名手配されてるんだったか…

「そうですけど…貴方は一体…」
「私の名はエリザロッテ…ただの魔物です。」

エリザロッテと名乗った魔物は、僕を見て優しい笑みを浮かべている。
たったそれだけで、胸が張り裂けそうなくらい高鳴る…
彼女は…何かが異常だ…具体的には言えないけど、とてもただの魔物には見えない…

「貴方に、これを授けに来ました…受け取って下さい。」
「これは…?」
「これは……剣です。」
「僕は剣が使えないのですが…」
「そうだったのですか…すみません、別の物に…」
「あ、大丈夫ですよ。僕、今日から剣も使って見ようかなって思ってたので。」

エリザロッテさんの悲しそうな表情を見て、思わずそんな事を口走ってしまった。
…もう、後には引けないよなぁ……

「それならよかった…あ、その剣の扱いには十分に気をつけてくださいね?」
「それは…どういうことですか?」
「この剣は、絶対なる勝利を約束する代わりに、使用者の魔力を根源無く吸い続ける呪われた剣…使い方を誤れば、自らを滅ぼす事になります…」

呪われた剣…そんな剣を僕に使えと言うのか…?

「…恐れているのですか?」
「………」

彼女の言う通り、僕は恐れているのかもしれない…
この剣を持つ事を…使う事を…
誰が何と言おうと断るべきなのだろう…扱えるかすら分からない代物は持つべきじゃない…

…だけど…

「…貰います。」
「…本当にいいのですね?」
「はい。」

試さなければ扱えるかどうかなんて分からない…使って見なければ恐ろしさなんて分からない。
皆を守る…その為にも、僕はこの剣を取る。

その為に必要だったのは…勇気と探究心と信念…そして、ほんの少しの気紛れだ。

「鞘に収まっている間は安全ですので、どうぞご安心下さい。」
「使って見るまでは、本当に安全かどうかなんて分かりませんよ…重っ!?」

剣を受け取った瞬間、僕は凄く驚く事になった。
まず重い…剣自体は、僕の3分の2位の大きさなのだが、それを考慮しても重過ぎる。
次は彼女…彼女はこんなにも重い剣を、表情一つ変えず、片手で持っていた。

本当に何者なんだこの人は…

「では、私はこれで…」
「あ、待って下さい。」
「ん?どうしましたか?」
「あの…貰いっ放しは何か悪い気がするので…これを。」

そう言って、袋の中から水晶を取り出
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