4羽:幸せに必要な物

「訓練やめ!全員集合しろ!」

何時もの様に訓練をしていると、突然隊長の声が訓練場に響き渡った。
訓練をしていた兵士達が、訓練を中断して隊長の前に横一列に並んでいく。

「えー…お前達を集めたのは他でもない…あー…なんだっけ?」
「えっと、今月の大会が後数日したら始まるので、参加したい人は一歩前に出て下さい。」
「質問してもいいでありますか!?」

その時、一人の兵士が声を張り上げ挙手をした。

「なんだ?」
「参加表明をすると何か変わるのでありますか!?」
「あぁ、私が直々に指導する。」

隊長の一言で、兵士達全員が驚きの声を上げる。
無理も無いね…隊長って…その…すごく厳しいから…

「それじゃあ、大会に出る意思のある人は一歩前に出てくれ。」

騒がしかった場内が、一気に静まり返る…
皆、どうしようか悩んでるようだ…僕は強制的に出させられるだろうけど。
覚悟を決めたのか、僕とフェイさん以外全員が大きく足を振り上げ…

一歩、後ろへと下がった。

「………お前等…」

…まさか、下がるとは…

「お前等には後でお仕置きをするとして、二人はどうする?でるか?」
「僕は…たぶん、ここで出ないって言っても出させられると思うので…」
「俺は出るぞ。」
「わかりました、フェイさんはこちらで手続きをしておきますね。」

フェイさんも出るのか…うん、なんとなく展開が読めてきた。

「よし、とりあえず今下がったやつ全員尻出して並べ。」
「じゃあ、俺達は二人っきりで訓練しようか…ふふふ…」
「変な所は触らないでね?」


その数分後、訓練場からは尻を押さえながらぎこちなく歩く兵士達と、フェイにさらわれるアルト…
そして、やたらとつやつやした隊長とげっそりした副隊長が出て来るのが目撃されたという…





「もちろん、アルトには出てもらうぞ?」
「やっぱりそうなるよね…」

仕事を終え、アイリスに今日の事を話したら想像通りの言葉を聴けて安心した。
…反面、非常にがっかりもしてるけど…

「前は竜姉妹に敗れたが、今度は負けないのじゃ!」

そう言えば、アイリスの本気を見た事がない気がする…
…やっぱり強いんだろうな…正面から挑んだら勝てそうに無いや…

あ、竜姉妹に聞いてみれば何か分かるかもしれないね。

「リーラ、ミーヤ、ちょっといいかな?」
「ん?どうした?」
「お呼びですか?アルト様。」
「二人って、アイリスと戦ったことがあるんだよね?どれくらい強いのかなって…」
「アイリスか…正直、勝てたのが不思議だよ。」
「たった一人で、私達二人と互角の力を持ってましたから相当なものだと思います。」
「アイリス曰く、あれでも本気ではないといっていたがな…」

竜姉妹二人と互角…しかも本気じゃない状態で…
でも…二人が出てくれたらある程度は何とか…

「あ、私達は今度の大会は出ませんので…他の皆さんの為に、豪華な食事を用意しておきますね。」
「心配無い、アルトは私達を打ち負かした程の実力の持ち主だからな。」
「それに、負けてしまっても私達が慰めてあげますから安心してくださいね。」
「うむ、私達の胸に飛び込んで甘えるといい…なんなら、今からでもいいぞ?」
「今は…うーん…す、少しだけ…」

リーラの胸に、そっと寄りかかる。
すると、後ろからミーヤが抱きついてきて、二人の間に挟まれてしまった。

「こうやって抱きしめてやる、とても心地いいだろう?」
「うん…凄く幸せ…」
「アルト様なら優勝できます、自信を持って挑んでください。」

二人が応援してくれるなら…僕もがんばれるかもしれない。
優勝は難しいかもしれないけど、持てる力を全て出し切ろうかな。

「…お兄様も出るの…?」
「うん、今回は自分の意思も含めて出るよ。」
「…一緒に出る…?」

一緒にか…でも、2人以上だと道具を使えなかったような…

「何を心配しているか知らんが、ルールが変更されて道具に制限は無くなったぞ?」
「え?そうなの?」
「うむ…一部の参加者から苦情が来たらしくての…開催者が犯されて手篭めにされたという噂もあるが…」

…理由はどうあれ、道具は使えるのか…なら大丈夫かな。

「よし、一緒に出ようか」
「…うん…♪」
「大会まではまだ時間があるからの、じっくり準備するといいのじゃ。」

準備か…特にする必要はないけど何かしておいた方がいいかな…?

「…明日…一緒に買い物行く…?」
「買い物か…あまりお金が…」
「…私が出す…」

妹にお金を払ってもらうか…なんだろう…凄く情けない気分になってくるよ…
買い物に行く前に、お金を手に入れておきたいな…

「うん、明日買い物に行こうか。」
「…分かった…♪」
「ふむ…ワシも行くかの。」
「アイリスも行くの?」
「うむ、アルトと一緒にいたいか
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