「綺麗な川であるな。」
思わず見とれてしまうような美しい川を横目に、次の町へ向かって歩を進める我輩。
川の水はとても澄んでおり、飲めそうな感じが…あー、うん…美味しかったのである。
まぁ、それだけ綺麗な水だからこそ気になるのであって…
「…………」
…さっきから、無表情で我輩の後をつけてるそこの魔物、ばればれであるぞ。
…後、もう一つ気になるのが…
「…………」
こっちは隠れるのが旨いが、殺気でばればれなのである。
…困ったである…正体を詳しく知らないうえ、二人も相手となると我輩でも分が悪いのである…
こんな時はどうすれば良いのであったか…
うむ、とりあえず飯を食うのである、腹が減ってはいい知恵は浮かばないのである。
「さて………」
袋を開けてびっくり!パン以外何も無かったのである!
…さすがにこれでは貧相すぎるのである…
「他に何か無いか………む?これは…」
我輩の目に留まったものは、釣り用の生餌のミミズだった。
…いやいや、流石にこれは食わないのである。ちゃんと竿があるから、魚釣りでもするのである。
この時既に、不振な魔物の事など頭の中から消えてしまっていたのである。
「…釣れないであるな…」
釣りを始めてから数分、竿はピクリとも動かないのである。
このままでは、我輩の昼ご飯はパンだけになってしまうのである……むむっ!?
「おっ!おっ!ついに来たのである!」
確かな手応えとずっしりとした重み、相当な大物みたいである!
「ぬおぉぉぉ!!」
懇親の力を籠めて、竿を思いっきり引いた。
水飛沫を上げて水面から現れたのは、見たことのあるものだった…
……なんでさっきの魔物が釣れるのであるか…
「………」
「………」
凄く…気まずいである…
とりあえず、籠の中に入れておくのである。
「………」
籠の中から、我輩の方をじっと見つめてくる魔物の娘。
…ちょっと可愛いと思ったのは内緒である…
「…むっ!?早速来たのである!」
今度は、一分も経っていないのに魚がかかったのである!
遠慮なんて要らない、思いっきり釣り上げるのである。
「どりゃあぁ!…大きいねぇ!」
なかなかの大きさの魚が釣れたのである!この調子でたくさん釣るのである!
「ふぅ…これ位にしておくであるか。」
十分な量は釣れたと思うである、そろそろ焼いて食べ…
「……(モグモグ」
「……(モグモグ」
…凄まじい殺気を発していた魔物と釣り上げた魔物が、我輩の釣った魚を豪快に食べてるのである…
…まさか…!
「…ぜ、全部食われてるである…」
我輩の釣った魚は、全部彼女達に食われてしまったみたいである…
仕方が無い…パンだけでも…
「…あーっ!パンまで無いのである!」
「なかなか美味だった。」
「…ご馳走様…」
さっきまで美味そうに魚を食べていた無口な魔物達が喋ったのである。
…って!そうじゃないである!我輩のご飯が無いのである!
「お前を襲って食料を奪うという面倒が省けた、感謝する。」
「…ご飯…ありがとう…」
我輩に礼を述べ、片方は森へ、片方は川へと帰って行ったのである。
「…次の町まで我慢であるか…うぅ…」
苦情を出す腹を押さえながら、重い足取りで次の町を目指す。
あぁ…これが現実であるか…なんとも無常である…
「…やっと着いたのである…」
何とか迷うことなく次の町に着いたのである。
…流石の我輩でも、一本道では迷えないのである…
「…む?」
家と家の小さな隙間に、黒っぽい服装の少女がいるのである。
何かを見ているようであるが…ん?
「あれは…カップルであるか?」
少女の視線の先には、一組の男と女がいるのである。
…もしかして…告白の瞬間であるか?
大きな声で何かを言っているようであるが、周りが騒がしいので良く聞こえないのである。
あ、女の方が男に抱きついたのである。
「……はぁ…」
一部始終を見ていた少女が溜息を吐く。
もしかして、あの男の事が気になっていたのであろうか…?
「何をしているのであるか。」
「ひゃぃ!?」
我輩が声をかけると、びっくりして結構な高さまで飛び上がったのである。
…見ていて面白いのである。
「えっ…あの…その…これには訳が…」
「言い訳はそこの茶屋で聞くのである、いいから来るのである。」
「そ、そんなこと…あうぅ…」
なすがままになって我輩に連れられていく少女。
…なんだかいけないことをしているような…気のせいだと思いたいのである…
その後、彼女の話によって分からなかった事が詳しく分かったのである。
この少女は、ドッペルゲンガーという魔物で、女性にフラれた男の前に男の好きな女性と同じ姿で現れる魔物らしい。
見た目だけでなく
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