1ページ:マタンゴ・ドリアード・おおなめくじ

心地よい風、済んだ空気、木々の間から射し込む淡い光…
森というのは実に良いものである、荒んだ心を優しく癒してくれるのである。
だが、今の我輩にとって、森は心を荒げる原因にしかなっていなかった。

何故かって?それはもちろん…

「出口はどこであるかー!!!」

我輩が現在進行形で迷っているからである。



「このままでは…日が暮れてしまうのである…」

森を抜けるのに1時間もかからないだろうと舐めてかかったのがいけなかった…
食料をまったく用意してなかったのは、自分でも愚かだったとしか思えないのである…

「何か食えそうな物がどこかに落ちていれば…」

そう思いながら下を見て歩いているから余計に迷う。
…最悪、魔物が通りかかってくれればいいのであるが…

「…む?」

彷徨っているうちに、不自然に開けた場所に辿り着いた。
中央に大きな樹がある以外には、特に何も無いようだ。

よく目を凝らしてみると、樹に大きなキノコが生えているのが見えた。

「おぉ!キノコであるか!早速食べるのである!」

道に迷っていることなどすっかり忘れ、キノコに向かって走っていく。
遠くから見ても大きかったが、近くで見ると見上げるほどの立派なキノコだったようだ。

「調理器具が無い…普通に焼いて食べるであるか。」

そう言って、キノコを取ろうと手を触れた…が。

「ひゃん!どこ触ってるんですか!?」
「………」

キ…キノコが…

「キェァァァァアアアアアアアアアアアキノコガシャベッタァァァァアアア!!!?」



「…申し訳ないのである…」
「まったく…今回は多めに見ますが、今度からは気をつけてくださいね?」

あの後、我輩の悲鳴で起こされたドリアードに軽く説教をされたのである…
キノコも、マタンゴという魔物だったらしく、食えないようなのである。
今は、親切なドリアード殿が出してくれた紅茶を飲んでいる所なのである。

…胸を触ろうとしたら、睨まれたのは内緒なのである…

「私は食べても美味しくないですよ!あ、こっちの方は美味しいですけど♪」
「それは遠慮しておくのである、我輩はまだ人間をやめるわけにはいかないのだ。」
「残念…でも!人間をやめたくなったら来てね!」

楽しそうにはしゃぐマタンゴ殿。
胞子が飛ばないようにしてもらっているので危険は無いが…やはり、少し怖いのである…

「そう言えば…おおなめくじちゃんは?」
「上で葉っぱを食べてますよ…あと、そこ危ないと思いますよ?」
「ぬ?それはどういう…」「きゃ〜〜!」「っ!?」

突然、上の方から悲鳴が聞こえ、何かが降って来た。
咄嗟に腰を少し浮かし、地を思いっきり蹴って後ろへと飛び回避する。
その直ぐ後に、私のいた場所に何かがベチャっと音を立てて落ちてきた。

「あうぅ…落ちちゃいました…」
「大丈夫?おおなめくじちゃん。」
「平気ですよ〜♪」

見た限りでは、相当な高さから落ちてきたような感じがするのだが…やはり魔物はいろいろな意味で強いのである…

「あれぇ?この人は誰ですかぁ?」
「えっとね、私の事を食べようとした人だよ。」
「それってぇ…えっちっち〜なこと?」
「そっちの方ではないのである!」

魔物の考える事はどうにも理解しがたいのである…
もっとも、我輩の考えがおかしいだけなのかも知れないのであるが…

「えっとぉ…まだだれともしてないの?」
「うむ、胸すらさわらさせてくれないのである…」
「じゃあわたしとしよ〜♪」
「こ、こら!抱きつくなである!本番までするつもりは無いのである!」

結局、おおなめくじ殿を引き剥がすのに小一時間かかったのは内緒なのである。



「また遊びに来てくださいね。」
「今度は一緒にキノコになろうね〜♪」
「さようならぁ〜♪」

三人に見送られながら、教えて貰った通りに森の中へと歩き出す。
たぶん、もう会うことは無いのだろう…

何故なら、我輩は自他共に認める方向音痴であるからな。

「お、道が見えてきたのである。」

やれやれ…無理に近道をしようとするのはやめたほうがいいであるな…
まぁ、これで次の町まで行けるであるな!

…………

「…目的地は…どっちの方向であるか…?」





〜今日の観察記録〜

種族:ドリアード
基本的に温厚だが、怒らせてしまうと怖いのである。
紳士的な振る舞いをしていれば、襲われる事は無いと思われるのである。
樹液は、甘くてとても美味だったのである。

種族:マタンゴ
胞子に気をつける必要があり、専用の対策をしないと危険である。
性格自体は温厚で、話してると意外と面白かったりするのである。
ろれろほげー

種族:おおなめくじ
動きも遅く、のんびりとしているので離れていれば危険は無いのである。
が、一旦捕まると粘液によって
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