村に響き渡る、コカトリスの喘ぎ声で目が覚める。
毎朝お盛んな事で…おかげで、早起き出来るんだけどな…
カーテンを開け、朝一番の日光をたっぷりとあびる。
大分意識がはっきりしてきた所で、服を着替えるべく、クローゼットを開いた。
台所へ行き、戸棚の中を漁る。
パンは…うん、足りるな。
トースターに二枚のパンを放り込み、焼き始める。
その間に、パンの上に乗せるハムエッグを二つ作る。
ちなみに、俺は朝からトーストを二枚も食べるほど大食漢ではない。
ならなんで二つも作るのかって?
理由は…言わなくても、そろそろ分かるだろう。
「魔界の覇王バフォメット参上!今日こそは儂のものになってもらうぞ!」
ドアを勢いよく蹴り開け、近所迷惑な大声を出しながら現れた幼女。
そう、もう一つのトーストはこいつの分だ。
「朝っぱらからでかい声を出すな、コーヒーと紅茶どっちにする?」
「元気が良いことに悪い所なぞない!儂は紅茶で頼む。」
そう言いつつ椅子に座る幼女の前に、淹れたての紅茶を置いてやる。
「砂糖はどうする?」
「多めに貰うかの。」
砂糖の入った容器を渡してやると、可愛らしく両手で受け取り、スプーンで紅茶の中に入れていく。
っと、そんな事をしているうちにパンが焼けたようだ。
焼きたてのパンを皿に乗せ、その上にハムエッグをのせていく。
そうして出来たトーストを、俺と迷惑な客人の前に置く。
「ほれ、出来たぞ。」
「ん、すまんの。」
「まったく…簡単な朝食でもそれなりに金は掛かるんだぞ?紅茶熱くないか?」
「儂に食べてもらえる名誉が一食分の食事で得られるのだ、ありがたく思うのじゃな、出来ればフーフーしてほしいのじゃ。」
「そんな名誉いらん、フーフー…これでいいか?」
「お主は本当に素直じゃないのう…うむ、幾分か飲み易くなった、礼を言うぞ。」
こいつが来るようになってから、毎日こんな調子だ。
こいつか俺の家に入り浸るようになった理由?そんなこと、俺にもわからん。
「なあ…一つ聞いていいか?」
「むぐむぐ…ごっくん…なんじゃ?」
「何で俺に付きまとうんだ?他にもいい男はいくらでもいるだろうに。」
「む…お主はもう忘れたのか?儂を助けた時の事を。」
「あー…そういえばそんな事あったな…」
遡る事約一ヶ月前…
俺とこいつが出会った場所は、鬱葱と茂る森の中だった。
その時、空腹で行き倒れになっていたこいつに、弁当をやって立ち去ったのだが、その次の日に突然家に押しかけてきて、婿になれとか言い始めた。
あまりにも突然すぎたため、驚きを通り越して溜息しか出なかった。
その時にやんわりと断った筈なのだが、それ以来毎日の様に俺の家に乱入してはご飯をねだったり無理やり襲いかかろうとしてきたりしてくる。
以上、回想終了。
「ご馳走様なのじゃ。」
「お粗末様、食器は流しに置いといてくれ。」
「この儂に片づけをさせるとな?」
「タダ飯喰らってんだからそれくらいはしろ。」
「ふん!今回は特別に片付けてやろう!儂の優しさに感謝するのじゃ!」
「はいはいありがとうございます偉大なるバフォメット様。」
「…何という棒読み…儂のガラスのハートに大きなヒビが入ったぞ…」
「ガラスはガラスでも、ハンマーで叩いてもビクともしない強化ガラスの間違いだろうが。」
なにやらブツブツ言いながら食器を片付けに行くバフォメット。
食事の度に、こんなコントのような事をやっているもんだから、もう慣れてしまった。
最近では、周りから仲の良い夫婦ですねとか言われる始末。
どう見ても仲良くなんかねぇよ、むしろ夫婦って何だ、俺とこいつはそんな関係じゃねぇ。
「さて、片付け終わったぞ。」
「ん、ご苦労さん。」
ソファーを乗り越えて、俺の隣にやってくる。
本当にこいつは俺の隣に座るのが好きだな…暑苦しいし可愛いし狭いしで迷惑なのだがな…
「本当にお前は俺の隣が好きだな…今日は何をするんだ?」
「ここは、儂の特等席じゃからの。二人の今後について話すかの?」
「勝手に特等席にするな、どうやってお前を追い出すかについてか?」
「ふん、この儂に隣に座ってもらえるのじゃ、ありがたく思わんか。いくら追い出そうとも毎日会いに来てやるから安心せい。」
「どちらかというとありがた迷惑だな。どうやって安心しろというんだよ…」
「素直じゃないのう…儂の包容力にじゃよ。」
「素直になっているからそう言うんだよ。そんな事よりどうするよ?」
「まあ、儂のものになったらもっと素直になれると思うぞ?隣町にでも買い物に行くかの?」
「どう転んでもならねぇよ。そうだな…行くか。」
こんなやり取りも、俺の日常として定着しつつある。
最初の内は、本気で追い出そうとあれこれやったりしたのだが…何をやってもこいつは毎日家に来る。
最
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