11話:最弱と最凶と電波とその他


「暇じゃな。」
「…うん…」

紅茶を飲みながらそう呟く。
今日は珍しく、アルトよりも早く起きることができた。
と言っても、早起きしても特にやることが無いので暇なのに変わりはないが…
クリスも早起きしてしまったらしいので、二人でなにをするか10分ほど悩んだ結果、こうして一緒に紅茶を飲んでいる。

「やることが無いのう…」
「…トランプは?」
「トランプか…二人では面白くないかも知れんのう…」
「…玩具遊び…」
「おもちゃか…どんなものじゃ?」
「…太くて硬い棒。」
「クリスにはまだ早い!没収じゃ!」
「…しゅん…」

まったく…こやつは何時もこんなもので遊んでおるのか…
…べ、別にこの棒であんなことやこんなことをしようとしているわけではないぞ!

「…じゃあ…お勉強…」
「勉強か、何か習いたいことでもあるのかの?」
「…料理…」
「料理か…すまん、料理は苦手なのじゃ…」
「…一緒に…練習しよ?…」
「なるほど、なら食堂に行くかの。」




「と言うわけで食堂じゃ。」
「…小説って便利だね…」
「クリス、その辺は気にしてはいけないぞ。」
「…うん…なにを作るの?…」
「そうじゃな…」

なにを作る…か…全く考えておらんかった…

「何がいいかの…」
「…お菓子?」
「ふむお菓子か…じゃが材料が無いの…」
「…召喚…」
「そう都合よく召喚できるものでもないじゃろうが…まあやってみるかの。」
「…レシピも…」
「うむ…ぬぅぅぅぅん!」

ワシの前に魔方陣が展開され、その上に空間の歪みが生まれる。
そして、歪みの中から材料とレシピが…

「あいたっ!?」

出てくる変わりに、ワシの頭に落ちてきおった。

「くっ…まさか上からとは…予想外じゃった…」
「…中にレシピと材料が入ってる…あと道具も…」
「なんと、それなら直ぐに作れそうじゃな…だが…」
「…?」
「ワシはオリジナルのお菓子を作りたいのじゃが…」
「…ダメ…まずは練習から…」
「う…うむ…」
「…レッツ…クッキング…♪」




「…まずは…バターを常温で柔らかくして…ヘラでクリーム状に練る…」
「うむ…これくらいかの。」
「…次は…砂糖を加えて…すり混ぜる…」
「うむ…出来たぞ。」
「…次は…裏ごししたゆで卵の黄身を加えて…よく混ぜる…」
「ゆで卵?無いぞ?」
「…そう言うと思って…用意しておいた…」
「やけに手際がいいの。」
「…なんとなくこうなりそうだったから…」
「さりげなくワシのことを小馬鹿にしておらぬか?」
「…気のせい…」
「まあいいかの…こんな感じかの?」
「…グッド…」
「白身が残ったが…食べるかの?」
「…半分ずつ…」
「この食感が癖になるの…♪」
「…うん…♪」
「そうこうしている内に混ぜ終わったのじゃ。」
「…小麦粉とコーンスターチを…ふるいながら加えて…ざっくり混ぜ合わせる…」
「このバニラオイルとか書いてある物はどうするのかの?」
「…私が入れる…」
「いい香りじゃのう…混ぜ終わったぞ。」
「…一つにまとめて…薄い布でくるんで…1時間くらい冷やす…」
「とりあえず、この木箱に入れて凍らせておくかの。」


〜1時間後〜


「いい具合に冷えてるの。」
「…冷えたら…20等分にして丸めて…真ん中をへこませる…」
「うむ…コネコネ」
「…コネコネ…」
「コネコネ…グニグニ…」
「…グニグニ…」
「グニグニ…コネコネ…」
「…プニプニ…モミモミ…」
「ナデナデ…スリスリ…」
「…ムニムニ…ギュゥ…」
「…///」
「…♪」


〜5分後〜


「ふぅ…何とか20等分出来たの。」
「…うん…はふぅ…」
「次はどうするのかの?」
「…170度の熱で…焼き目をつけないように…15分くらいこの箱の中で焼く…」
「むぅ…温度調整なぞ上手く出来んぞ?」
「…頑張って…私の魔力もあげるから…」
「そこまで言われたら仕方がないの…」


〜15分後〜


「焼き目もついておらんし、中まで火が通っておるようじゃの。」
「…完成…♪」
「レシピ通りに作ればこんなに美味そうに出来るのか…ジュルリ…」
「…味見…」
「うむ、はむっ!」
「…パクッ…」
「…おぉ!美味い!」
「…♪」
「これだけあるし、皆やオリファーやルイスにも分けてやるかの。」
「…うん…♪」




「…アイリスはいないな…」
「…いませんね…」

アルトとアイリスの寝室に、静かに入り込んでくる二つの影…
特注のメイド服を着た彼女達は、スカートに開けられた穴から飛び出した尻尾を嬉しそうに振っている。

「いいか?今からすることは、メイドが主にやらなければならないことだからな?決して自分の意思ではないからな?」
「お姉様、頬を赤く染めて尻尾を激しく振りながら言っても説得力がありませんよ。」
「ま、まあそんな
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