10話:再戦?ドラゴン姉妹

「ここが奴の家か…」
「そのようですね。」

二匹の、黒い鱗と大きな翼を持つドラゴンが大きめな屋敷の前に立っている。
どうやら、彼女達はこの家にいる人に用があるようだ。

「よし、乗り込むぞ。」
「お姉様、一箇所だけ色の違う壁がありますよ。」
「む、少し離れていろ…ハッ!」

気合を籠めて放たれた一撃が、ドアを正確に打ち抜いた。
轟音と共に、打ち抜かれたドアが無残な姿となって床の上に散らばった。

「流石お姉様、無機物相手でも容赦無いですね。」
「私の行く手を遮るものは全て破壊するだけだ。」

得意げに笑う大きなドラゴン、尊敬の眼差しで大きなドラゴンを見つめる小さなドラゴン。
いざ、屋敷へと入ろうとした時、奥から小さな魔物の少女…もとい幼女が走ってきた。

「一体なんじゃ!?今の騒音は!?」
「む?お前はこの前の…」
「お主は大会の…人の屋敷のドアを木端微塵にしてどういうつもりかの?」
「ふむ…壁ではなかったのか…それは失礼なことをした。」
「…まあよい、要件を聞こうかの。」
「アルトという男は今いるか?」
「この前の試合に納得がいかなくて、再戦を申し込みに来ましたの。」
「ふむ、アルトなら今出かけておるぞ。」

アイリスの言葉を聞き、ゆっくりと振られていた二人の尻尾が、ガックリと垂れ下がった。

「そういえば…道具屋に行くと言っていた気がするの。」
「ほ、本当か!?情報感謝する!」
「お姉様!急ぎましょう!」
「あ、待つのじゃ…行ってしまったか…」

一気に元気を取り戻した二人のドラゴンは、ドアが無くなり大きく開いたままの入り口をさらに広くしながら走って行く。
壊れたドアと、さらに広がった入り口を見て、アイリスは静かに涙を流した。





「アルト?…あぁ、あの小さな子供か。」
「何処にいるか知らないか?」
「さっきまで商品の宣伝とかしてたけど、少し前に出て行ったよ。」
「そうですか…」

店主の言葉を聞いてガックリとうなだれるドラゴン姉妹。
ちなみに、今度はドアを粉砕せずに、窓を粉砕して入ったみたいです。

「どこに行ったか知りませんか?」
「うーん…鍛冶屋でも探してみたらどうだ?いるかどうかはわからんが。」
「そうか…迷惑を掛けたな、失礼した。」

そういうと、入ってきた窓とは別の窓を突き破って飛び出していく。
ドラゴンの飛び出していった窓を眺めながら、店主は静かに涙を流した。





「アルトか?さっきまでいたぞ。」
「またか…」
「お姉様…今日はもう諦めませんか?」
「ここまで来て引き下がれというのか…?」

親方の話を聞いて落胆するドラゴン姉妹、そこの人、ワンパターンとか言わない。
今回は壊すドアも窓も無く、ごく普通に入ってきたらしいです。

「あんた等そんなにアルトに会いたいのか?」
「うむ、どうしても再戦したくてな。」
「なにがあったか知らないが…酒場で待っていれば来るんじゃないか?」
「酒場…ですか?」
「ああ、アルトはワインが好きだとか行ってたからな。」
「でも、確実にいるという保障は…」
「外出した時はいつも寄っているらしいぞ?」
「むぅ…行ってみるか。」
「情報ありがとうございました。」
「また何かあったらいつでもきな、力になるぜ。」

ガハハハ!と豪快に笑って、ドラゴン姉妹を見送る親方。
その笑い声は、店内にいた客が耳を塞ぐ程、豪快に響き渡っていた。
















「あ〜…やっぱり、売り込み後のワインは格別だねぇ♪」
「ふふふ、お疲れ様。」

今日は、朝早くから自分で仕入れた商品を道具屋などに売って回ったりしてたから、凄く疲れた…
その分、大好きなワインがもっと美味しく感じるんだけどね。

「ルイスさんのところのワインって凄く美味しいよね、どこで仕入れてるの?」
「企業秘密だから教えられないわ、その代わり、アルト君にはお安く提供してあげるわ。」
「ありがとうございます、何か必要なものがあるときはいつでも言って下さいね。」
「また何かあったらお願いするわ、ふふふ♪」

ほろ酔い気分で雑談をしていると、入り口から誰かが入ってきた。
二人組みの魔物のようで、僕から三席ほど離れたところに腰掛けた。
あれ…?どこかで見たような…?

「いらっしゃい、なににする?」
「ワインを頼む…」
「私も同じ物を…」
「分かったわ、少し待ってて。」

ルイスさんがグラスにワインを注いでいる間、彼女達は疲れ切った表情でグラスを見つめていた。
うーん…何処で会ったのかいまいち思い出せない…

「お待たせしたわね。」
「それほど待ってない。」
「ありがとうございます。」

そう言って、ワインを飲み始める二人組み。
黒い鱗に大きな翼…鋭い爪がある手足に長い尻尾…

「元気が無いわね、悩みがあるなら聞いてあげるわ
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