先日の事故から早くも一週間が経った。
怪我の具合も良くなってきて、今ではすっかり元の生活を送れるまでに回復した。
闘技大会の準決勝と決勝戦は、事故の影響で一週間延期になった。
つまり、今日が残りの試合がある日だ。
「アルトよ、絶対に無理をしてはいかんぞ?」
「大丈夫だよ、今度は危険になったら棄権するから。」
「それは洒落か?」
「ち、違うよ!僕が駄洒落を言うとでも思ったのかい?」
「フハハハ!言って見ただけじゃよ、それよりもアルトの赤くなった顔、なかなか可愛らしいぞ?」
そう言ってさらに笑うアイリス、自分の表情は見えないからわからないけど、多分耳まで真っ赤になっているだろう。
そんな他愛もない話をしているうちに、いつの間にかクリスが起きて来ていたようだ。
「・・・お兄様・・・大丈夫?・・・」
「おはようクリス、体の方は大丈夫だよ。」
「・・・手加減・・・しよっか?・・・」
「本気の方が嬉しいかな、クリスの強さを知りたいし。」
「・・・わかった・・・一緒に行く?・・・」
「そうだね、兄妹仲良く一緒に行くのもいいかもしれないね。」
「ふむ、ワシも行くかの。」
「え?アイリスも出てたの?」
「密かにな、アルトが勝ち進んだ上でワシも勝ち進めば戦うことになるの。」
・・・本当に棄権したほうがいい気がしてきた・・・
クリスの時点で大分辛いのに、アイリスまで出てくるなんて・・・勝ち目がなさ過ぎる。
「さあいくぞ!誰でもいいから優勝を目指すのじゃ!」
「・・・うん・・・」
「どうしてこうなったの・・・」
アイリスとクリスが楽しそうに走っていくなか、僕だけはガックリとうなだれながら歩いていった。
『さあ!皆さんお待ちかねの準決勝・決勝戦が、今まさに始まろうとしています!』
観客席から大きな歓声が上がった。
一週間も待たされたのだから無理もないだろうけど。
『それでは!準決勝第一回戦!選手の発表です!
奇跡の復活を遂げた走る古代兵器!アルト=V=ラグナロック!』
芸も無くお辞儀をする、それだけでも歓声が上がる。
・・・もう少し何かしたほうがいいのかな?
『続いては!
小さな体で破壊の限りを尽くす最終鬼畜兵器少女!クリス=V=ファーレンハイツ!』
クリスが観客席に向かって手を振ると、観客席からより大きな歓声が聞こえてきた
流石に妹には負けれないよなぁ・・・でも強さがわからないし・・・
『準決勝一戦目・・・始め!』
一際大きな歓声が辺りに響き渡り、少し耳が痛くなってくる。
とりあえず槍を構えて様子を伺う、クリスも大剣を構えて様子を伺っている。
騒がしかった会場が、少しずつ静まっていき、やがて何も聞こえなくなった。
僕とクリスは、互いの目を見詰め合ったまま動かない。
少しでも気を抜いたら、一瞬で勝負が付いてしまうだろう・・・それくらいに、クリスから発せられる威圧感は、強大なものだった・・・
額から汗が流れ落ち、地面に触れた瞬間、僕は地面を蹴ってクリスとの距離を一気に詰めた!
クリスが大剣を振るって来るが、瞬時にかわし、素早く背後に回って槍を振るう。
しかし、いつの間にか後ろを向いていたクリスの大剣の一振りで、あっさりと弾かれてしまう。
そして槍を弾いた勢いのまま、僕に向かって大剣を振るってくる。
反応が遅れ、回避出来ずに槍で防ぐも、凄まじい勢いの前になすすべも無く、槍が弾かれてしまう。
弾かれた槍が、回転しながらリングの下の地面に突き刺さる。
「・・・降参・・・する・・・?」
「まさか、槍が無ければ鞭を・・・」
そういって鞭を取り出した瞬間、クリスの振るった大剣によって鞭も弾かれてしまった。
鞭は、綺麗な放物線を描きながらリング下へと落ちていった・・・
ゆっくりとクリスの方へ向き直ると、クリスはほんの少しだけ笑みを浮かべながら、
「・・・降参・・・する・・・?」
と聞いてきたのだ。
僕の答えは・・・既に決まっている。
「もちろん・・・NOだ!」
そう言うと同時に後ろへと飛び、複数のナイフを投げつける。
しかし、あっさりと切り払われてしまい、クリスには届かない。
もちろん当てるつもりは無い、クリスがナイフに気を取られている間に、魔力をチャージしながらクリスの背後に回り込む。
ある程度溜まった魔力を解き放とうとした瞬間、クリスの頭上から蒼い弾が大量に飛んできた!
突然のことで避けきれず、何発か被弾してしまったが、後ろへと飛んでクリスとの距離を離した。
「・・・お兄様・・・無理はしないほうがいいよ・・・?」
「・・・兄としても負けを認めたくないからね、悪いけど即効で決めさせてもらうよ!」
ポーチの中からアラクネの糸を取り出し、クリスに向かって思いっきり投げつけた!
空中で解れて
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