「アルト、闘技大会に参加するのじゃ。」
「いくらなんでも唐突過ぎるでしょうよ、その提案。」
魔石騒動が起こった翌日の昼、僕が商品の整理をしていると、突然アイリスがそんなことを言って来た。
言いたいことはいろいろあるけど、とりあえず一番知りたいことを聞いてみる。
「何故に闘技大会に出ろと仰るんですか?」
「アルトの強さを磨くためじゃ。」
「僕の魔法や能力では、予選すら勝ち抜けないと思うけど。」
「ならば、修行をすればいいであろう?簡単なことじゃ。」
だめだ、この人出場させる気満々だ。
何とかして断れないかと、策を練っていると、お父さんが余計な提案をしてくれた。
「遺跡にでも行って、武器か何かを調達するのもいいと思うぞ。」
「ふむ、アルトよ、早速行ってくるのじゃ。」
「・・・僕の意思は無視ですか・・・」
強制的に、遺跡行きと闘技大会出場が決定されたらしい。
・・・たまには泣いてもいいよね?
「アルト・・・大変そうだな・・・」
「兄さんもこんな扱いされたことある?」
「無いな。」
きっぱりと否定されて、目に涙が滲んでくる。
こうなったら、凄い物を見つけて見返してやろうか。
そう考えながら、僕は身支度を済ませるために、自室へと向かった。
自室へ入り、持っていく物を確認する。
投げ用のナイフやハンマー。
ランプと詰め替え用のオイル。
応急治療道具と美味しくない応急薬。
小型のピッケル。
そして、普通の槍と鞭。
「随分とボロボロになってきたな、修理しても直るかどうか・・・」
長年使い続けてきたためか、どちらの武器も随分とくたびれてきている。
新しく買うのもどうかと思って、修理してもらいながら使ってきたが・・・そろそろ買い替え時かな。
「よし、準備も出来たし行こうかな。」
用意した道具を持ち、僕は屋敷を出た。
人工的に作られたであろう道を歩いていくと、目的の遺跡に到着した。
お父さんの話では、道らしい道は無いと聞いていたのだけど・・・まあいいか。
そんなことを考えていると、遺跡の中から人が出てきた。
とっさに身を隠し、様子を伺う。
「これで全部か?」
「いや、まだ取り残しがあるが、時間が無い。」
「奴らに見つかったら大変だしな、早くリーデルn」
「馬鹿!誰かに聞かれたらどうするつもりだ!」
「す、すまん。」
「とにかく、急いで此処を離れるぞ、見つかると不味いことになるからな。」
直ぐ横の道を、二人の男と荷物を載せた馬車が通っていく。
・・・何とかばれずにやり過ごせたらしい。
先客がいたと言うことは、遺跡内のお宝が、いくつか持っていかれたと言うことになる。
「いいものが残っているといいけど・・・」
一欠けらの希望を胸に、僕は遺跡の中へと入っていった。
アルトが遺跡に入ってから、約20分後・・・
遺跡の入り口には、新たな力を求めてきたロイド達一行がいた。
「此処がその遺跡かぁ、結構大きいね。」
「この遺跡には、古代の武器やらお宝が眠っているらしいな。」
「もしかしたら、私達でも使える武器があるかもしれないね。」
「とにかく中へ入ろう。」
そう言うと、ロイドはランプを取り出して火を灯し、遺跡の中へと入っていく。
サラとユリアも、後を追うように遺跡の中へと入っていった。
やはりと言うかなんと言うか・・・
遺跡の中は、先客がいたという事もあって、見事なまでに空っぽだった。
どうやら、もっと奥のほうも調べなければいけないようだ。
「ん?宝箱か。」
歩き回っているうちに、豪華な装飾が施された大きな宝箱を見つけることが出来た。
早速開けてみようと、蓋に手をかけて少し考える
(こんなに目立つところに宝箱なんて置くだろうか・・・罠かもしれないし・・・でも開けたい・・・)
そんなことを考えているうちに、僕なりの名案が浮かんだ。
正面は危険だから、後ろから開けよう。
僕は、宝箱の裏側に回って、宝箱を開けた!
「なんと!宝箱はミミックだった!・・・あれ?」
どうやら、宝箱はミミックだったようだ。
しばらく笑いを押し殺していると、宝箱の蓋が閉められた。
・・・ちょっと悪いことしたかな・・・?
でも、ここで冒険を終わらせるわけにはいかないので、可哀相だけどここに放置しておこう。
さっきは誰もいないのに、蓋が開いてびっくりしたけど、次こそは・・・!
そう意気込んでいると、誰かが近づいてくる足音が聞こえてきた。
今度こそは・・・絶対に成功する!
「ロイド!宝箱があったよ!」
「中身はなんだろう?武器かな?防具かな?」
「そんなに都合よく良い物があるわけないと思うぞ?」
宝箱の前ではしゃぐユリア、何が入っているか想像を膨らましているロイド
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