「迷子になったのは何時以来であろうか…」
森に着くまでは何とかなった、問題はその後である。
遺跡で貰った宝を寝袋に詰めて運んでいたのだが、それのせいで寝ることが出来なかったのだ。
その場で仮眠をすればいいとも思ったのだが、少しでも早く帰ろうと焦った結果、真っ暗な森の中で右も左も分からなくなっているという状況になったである。
「このままでは哀れにも我輩は骨になってしまう…いや、スケルトンか?…魔物になってみると言うのもそれはそれで……いやいやいや、何を考えているんだ我輩は。」
我輩はまだ死ぬわけにはいかん…世界を統べると言う目的を達成していないであるからな。
………まぁ、今だから言えるが…本当はもっと別の目的があったりするのだがな…
等とどうでもいい事を考えながら彷徨っていると、僅かな光が見えてきた。
誰かいるのだろうか…こんな時間に森の中にいるなんて随分と物好きな者がいるのだな。
光は少しずつ強くなっている…このままだと何者かと鉢合わせる事になるな…
その辺の木に上ってやり過ごすか…
「今日は大漁だな。」
「ついに私にも夫が出来るのか…これで安心して狩りに出れるようになるな。」
「…私は収穫なしだがな…」
「族長娘様…大丈夫です、貴方様も必ずいい夫を見つけられますよ。」
「族長様のお墨付きですからね、優秀な夫を見つけれますよ必ず。」
「そうだと良いのだが……ん?」
三人の魔物が二人の男を担いでいるみたいだ…どこからかさらって来たのだろう。
サキュバスに近いものを感じるが…角や翼と思われる部位が片方しかない…退化したのか、元々無いのかはわからないな。
褐色の肌には見たことも無いペイントがされているが…何の意味があるものなのだろうか?
なんという魔物だったか…アマゾネス…だったかな?
その内の一人が立ち止まり、何かをしているが…まさか見つかったか?
「…人間の気配がするな。」
「こんな所でですか?」
「ただの人間ではなさそうだ…気配を消すのが相当上手い…」
「でも、いったい何処に…」
「………」
何も言わずに、我輩の隠れている木を見つめるアマゾネス…
…何となく何をするか分かったである。
「…はぁっ!!」
深呼吸をした後、思いっきり我輩の隠れている木を蹴り飛ばしてきた。
彼女が蹴り込む寸前に我輩は軽くジャンプをし、振動で下に落ちるのは回避できた…
…だが、乗っていた枝が荷物を持ったまま跳んだ我輩の重さに耐え切れず、枝の根元から折れて下へと落ちてしまった。
…どうやっても落ちるのか…
「うわっ!?本当にいた!?」
「いたたた…もう少し丁重に扱って欲しいである…」
「ふむ………」
「むっ?我輩の顔に何か付いているであるか?」
我輩を蹴り落としたアマゾネスが、何かを考えながら我輩の全身を隅々まで見ていく…
………こんなに見られることなんてあまり無いからちょっと恥ずかしいである…
「…そんなに見られると恥ずかしいである。」
「…ただ見ているだけなのに恥ずかしいのか…お前なかなか可愛い所があるな。」
「我輩が可愛い?医者に目を見てもらうことをお勧めするぞ。」
「…くっ・・・はっはっはっ!面白い奴だな気に入ったぞ、里に連れて行ってやる。」
「アマゾネスの里か…寝る所もないし観察の為にも寄っておきたい…お言葉に甘えさせてもらおうかな。」
我輩はアマゾネス自体見たことも聞いたことも無いからな…見た目の特徴は聞いていたが。
彼女達の里に行ければ詳しい事も分かるであろうな。
やはり休まずに進んでよかったな、知らない魔物の生態を知る機会が手に入ったのだからな。
少なくとも、今この時の我輩はそう思っていたである…
歩く事数分、彼女達の里と思われる場所へと着いた。
何と言うか…思っていたよりも普通であるな。
里の中心にあたる場所にしっかりとした造りの広場の様な場所がある以外は、何処にでもあるような村のように見えるである。
周りから娘様と呼ばれるアマゾネスに案内され、比較的大きな家へと案内された。
「おかえり…むっ?そっちの男は…」
「木の上に隠れているのを見つけて落とした。」
「そうか、よくがんばったな。」
「母様…」
「そうなると今夜は宴を開かないとな…そこのお前。」
「むっ?我輩であるか?」
「里の男達と共に宴の準備をしろ。」
「宴か…流石に何もしないわけにはいかんだろう、引き受けよう。」
宴か…今日も今日とて酒が飲めるであるな!
彼女の夫と思われる男に案内されて家をでる瞬間…
「中々素直ないい男じゃないか…流石私の娘だ、いいのを捕まえてきたじゃないか。」
「今日は運がよかっただけです…これで私も母様の様な……に…」
最後の方は聞き取れなかったが…捕まえた?
案内されて来ただけなのだが…むーん…?
「君は
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