三日目の朝、今日も一波乱ありそうな良い天気である。
「…何をしているんだあいつは…」
「むっ?どうしたのであるか?」
「寝てる奴を起こしに行ってもらったんだが戻りが遅くてな。」
「見に行った方がいいのではないか?」
「…その考えは思いつかなかった。」
「言いたくなかったが貴殿は馬鹿か?」
「言われなれたよ。」
「何故ベストを尽くさないのか…」
そんなことを話しつつ、問題の男が寝ているテントへと入る。
もう一人がやたらと大きな寝袋を揺すったり蹴ったりして起こそうとしているが、ビクンッと震えるだけで起きそうに無い。
「蹴るのは流石にどうかと思うぞ。」
「全然起きないのでつい…」
二人が話している間に我輩が起こすであるか…摩り下ろしたわさびを鼻の下に塗って………んっ?何かがはみ出してるな。
これは……包帯か?
「仕方ないですね…もうちょっと強めに…」
「待った、その前にちょっと中を覗いてみるである。」
そう言いながら寝袋の中を覗き込む。
中には熟睡している男と、中を覗いた我輩を涙目になりながら見つめてくる女性…もとい、魔物がいたである。
先ほど見えた包帯と同じもので全身を覆っているが、一部分は素肌が露出しているな。
特に詳しく解説する必要も無い、マミーという名の魔物であるな。
どうでもいいが、無口で無表情な女性が布団などに包まって見つめてくる姿と言うのはとても可愛らしいものがあるであるな。
「…痛かったであるか?」
「……かなり…」
「それはすまないことをした…お詫びにその男に好きなだけ甘えると良いである。」
「…持ち帰っていいの?」
「流石に、本番はその男が起きてからにしてやって欲しいであるがな。」
「…分かった…」
そう言うともそもそと寝袋から這い出し、男が逃げれないように寝袋を閉じて遺跡の奥へと持ち去っていった…
「…仲間がさらわれたと言うのに、何故だか知らんが嫉妬心が沸いてくるようになってきたのだが…」
「安心するである、貴殿にもいつかは素晴しい出会いがあると思うである。」
「正気を保ってくださいよ…相手は魔物なんですよ?」
「俺も最初はそう思っていた…だが、実物を見てそんなに危険な存在ではないのではないかと思うようになったんだ。」
「まぁ、つかまったら人生の墓場まで一直線であるがな。」
「ダメだこの人達…早く何とかしないと…」
我輩までまとめてダメ扱いされたである…泣きたい…
探索を開始して約十分…ひたすら一本道を進んでいるである。
遺跡の壁には松明が設置されているので視界は良好、誰かの手で整備されているのか床や壁面などに苔や傷は見当たらない。
見当たらないと言えば、本格的に探索を始めてから今まで魔物の姿を見ていないである。
マミーの一人や二人位いてもおかしくないものなのだがな…
「この通路は何処まで続いているんだ?」
「歩いていればその内何か起こるんじゃないかしら?」
「僕としては魔物に会わずにお宝だけ手に入れて帰れるとうれしいんですが。」
「何の苦労もせずに手に入るものなんてゴミと変わらんである、苦労して手に入れるからこそのお宝だろう?」
「お金になればそれで良いんですよ……おっ?」
話している途中で男が何かを見つけたようで、一人で奥の方へと走って行った。
流石に単独行動をさせるのは不味いので我輩達もその後を追う。
「あはは!やりましたよ!お宝ですよ!!」
男に追いついた我輩達は、やや小さめな空間へと出た。
目の前には木製と思われる扉があり、その両脇には犬の様な動物の像が設置されている。
そして、彼が一心不乱に袋に詰め込んでいる財宝はその犬の像の周りに置かれていた様だな。
「見つけたのは僕ですからね?一つたりとも渡しませんよ?」
「……はぁ…我輩は別にかまわん…好きにするといい。」
「俺もいらない…何となくだがそれは拾ってはいけない気がするからな…」
「私もいりませんよ、奥にはもっといいものがあるかもしれませんし。」
「欲がないなぁ…そんなんじゃこの先生きのこれませんよ?」
まぁ、彼がそれでいいのならこれ以上言うことはないだろう…変に係わると何かあったときに面倒だろうし。
とりあえず、彼が財宝を詰めている間に扉の奥の様子を見てみるか…
「……鍵はかかっていないようであるな…罠の様な物もないようだ。」
「ならさっそく…」
「待った、罠は無いが何かの気配がするである…行くなら慎重に…だ。」
「分かった……開けるぞ。」
なるべく音を立てないようにゆっくりと扉を開けていく…
扉の先は小部屋になっているようで、部屋の中心には魔物が横たわって寝ているのが見えるであるな。
それ以外は特に何も無いようで、さらに奥へと続く扉があるだけである。
音を立てないように扉を閉めようとしていた矢先、突
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