青い空、白い雲、緑の草原…
視界の届く範囲には目立った障害物も生物もいない。
そんな草原を割るかのように続く道を、我輩達はゆっくりと進んでいる…
…というのも…
「あ〜…楽ちんやわぁ〜…」
「覚えておくといい…弥生が楽をしている下で、無い力を振り絞って汗水流して運んでいる者がいる事を…」
「昨日の飲み代、店への迷惑料。」
「たまにはこういう運動もいいであるな!」
「師匠…かわりましょうか?」
「あかんあかん、これは輝はんがうちに泣きついた分の対価…輝はんが背負ってるのは、昨日の分の金の重みと同じなんよ。」
「…ずいぶんと重いのだな…」
「荷物もぎょうさん背負ってるしな♪」
言ってる事に間違いがない分、反論出来ないから性質が悪い…
悩んでいても仕方が無い、さっさと先に進もう。
そう思って一歩足を踏み出した瞬間、いきなり我輩にかかる重圧が増した。
「………何をやっている?」
「えっと…弥生さんが羨ましくてつい…」
「リシェル様が乗るなら私も…」
「むっ!いつも乗せてやってるのじゃからわっちも乗せるのじゃ!」
「輝ちゃんに騎乗出来ると聞いて。」
次々と我輩の上に乗ってくる仲魔達…
耐えれるわけも無く、我輩は仲魔達に押し潰されてしまった…
「ありゃ?輝はん大丈夫か?」
「むぎゅぅ……」
「あかん…ちとやりすぎてもうた…」
口々に謝罪しながら我輩の上から降りていく仲魔達…
最近ろくな目にあってないであるな……少しで良いから良い事はおきないものだろうか…
等と思いつつ立ち上がろうとすると、激しい痛みが我輩を襲った。
「いだっ!?くぅ…」
「ど、どうしたの輝ちゃん?」
「先ほどの転倒で足首を捻ってしまったようですね…」
「大丈夫か?歩けそうに無いならわっちが運ぶぞ?」
「すまん…たのむである…」
桜花に抱き抱えられる我輩に、弥生とリシェルが言い辛そうに話しかけてくる。
「その…ごめんなさい…私が悪乗りしてしまったせいで……」
「堪忍な…ちょっとやりすぎてまった…」
「我輩に全員を背負えるだけの甲斐性が無いのが悪い、皆は悪くないである。」
「…捻挫用の薬…サービスしとくな。」
今思えば、捻挫してよかったかも知れん…
普段強気な弥生のしおらしい姿が見れたであるしな。
「ここをキャンプ地とするわ!」
「アレクシア様は元気ですね。」
「出番が欲しいだけじゃろう。」
「そこ!どうせなら聞こえないように言って頂戴!」
空に赤みが差してきて、今日はこれ以上は進めないだろうと判断して野営の準備を始めた。
我輩があまり動けないのでどうしようかと悩んでいたが、リシェルが数分でやってくれたである…
「おぉぉ…たった数分で終わるとは…」
「一人用のテントしか使ったことが無かったのでちょっと不安でしたけど、大体の部分が同じようなものだったのであっさりと出来ました。」
「すまんな…何か礼が出来ればいいのだが…」
「そ、それじゃあ……ナ…ナデナデ……してくれますか?」
顔を赤くしつつ、消え去りそうなほどの小さな声で頼んでくるリシェル…
その可愛らしい仕草に我慢が出来ず、返答をする前に彼女の頭を撫でてしまう。
「んっ……ふにゃ…」
今にも蕩けてしまいそうな表情で撫でられている…
何というか……うーん…何とも言い表せない、そんなの良いからもっと撫でたい。
「…輝様…私も撫でてください…」
「うむ、いつもありがとうであるな。」
「はふぅ…♪」
「わっちにはナデナデしてくれんのかの?」
「輝ちゃん…その…」
「二人も、いつもありがとうである。」
「ん…ありがとうなのじゃ。」
「んふふ…なんだかとても落ち着くわ…」
後は弥生だけであるが…隅の方でじっとしてるだけでこちらに来る気配がないであるな…
昼間の事を気にしているのだろうか…むぅん…
「弥生さんも撫でてもらったらどうですか?」
「へっ!?う、うちは…そんな…」
「昼間の事を気にしているのであるか?我輩はそんなに気にしてないぞ。」
「でも…」
「むしろいつも助けてもらってるのだし、撫でるくらいはさせてほしいのである。」
「…ええの?また迷惑かけるかもしれんのやで?」
「迷惑だなんて我輩が一言でも言った事があるか?」
「うー……せやけど………ひゃっ!?」
何時までも似たような反応しかしないので、やや強引に弥生を抱き寄せた。
そのまま、彼女の頭を優しく撫でる。
「あ…輝はん…」
「むしろ、迷惑をかけてるのは我輩の方である…弥生は気に病む必要はないであるぞ。」
「うー…」
「それにまぁ…なかなか撫で心地が良いであるからな…」
「輝はん…そ、そういう事やったら撫でてもええで?今日は特別に御代はいらんで♪」
暗い表情は消え、満面の笑みで我輩に抱きついてくる弥生。
うむ、やはり弥生は笑
[3]
次へ
ページ移動[1
2 3 4]
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録