「…そっか…今日の夕方には行っちまうのか…」
「短い間だったが世話になったな…貴殿に学んだ技術、大切につかわさせてもらうである。」
長いようで短かった講習期間を終え、夕方には出発すると言う話をミラル殿にしている。
もう暫くここに留まっても良いかもしれない…しかし、我輩がいるといろいろと迷惑をかけることになってしまうだろう…
我輩を狙っている連中がいると分かった以上、被害を増やさないためにも早めに出た方が良いだろうしな…
「あたしもついていく!………なんて、気軽には言えないからね…」
「またこの街に来る事があれば、必ず会いに来ると約束するである。」
「その時は皆で歓迎しないとね…そしてどさくさに紛れて着床キメれば…フフフ…」
「……今のは聞かなかった事にしておこう。」
次来た時もこんな感じだったら帰ろう…我輩の身が危険だ…
「今日の分の仕事はまだ終わってない、さくっと片付けてしまおう。」
「そうだね…仕事終わったら飲むとしようじゃないか、輝の奢りでね。」
「うむ、盛大にやるであるか…我輩の奢りで。」
…小遣い足りるだろうか…
まぁ、我輩の少ない小遣い程度で足りるわけもなく…
「んんー…プッハァァ!いやー今日はほんまにツイてるな、輝はん自らうちの胸ん中に飛び込んで来てくれるなんてな。」
「…こうなる事は予想出来たはずだ…我輩はどこで道を踏み外したのだ…?」
流石に払い切れない額になってきて頭を抱えている所へ弥生が現れ、酒代をポンッと払ってくれた。
…のはいいのだが、次の街に着くまで抱き枕になると言う条件を押し付けられてしまったである…
我輩的には、夜の睡眠は非常に重要なので何としても守りたいが、断って払うだけの金があるはずもなく…
「弥生様…偶にはご一緒させてもらってもよろしいですか?」
「ええでええで、桜花はんやアレクシアはんも遠慮せずに添い寝しに着てええで♪」
「…輝…あんた、男からもげろとかよく言われたりしないかい?」
「……いっそ、もげた方が平穏な生活が送れるかも知れん…」
「もげたらダメです師匠!そんな事したら赤ちゃんが………あっ…」
「ん?赤子がどうかしたのか?」
「な!ななな何でもないです!」
リシェル殿の顔が真っ赤だな…少々飲みすぎではないだろうか?
あっ、言い忘れたが我輩がこの街で世話になった者達も呼んでいるであるからな。
それ故に小遣いが足りなくなったわけなのだが…理由はもう一つある。
「まったりとして飲みやすい…もっとじゃ!もっと持ってくるのじゃ!」
…いったい誰がこんな逸材が埋もれていると気づけるだろうか…
我輩が弥生に泣きつく原因になったもう一つの理由…バフォメット殿の存在だ。
あんな小さな体のどこに流し込んでいるのかは知らんが、この店で最も高い酒を樽飲みしているである…
アカオニ殿とアオオニ殿が見たら歓喜しそうであるな…絶対に会わせたくないであるが。
「…ねえ輝ちゃん?」
「ん?」
考えるのをやめてちびちび飲んでいると、アレクシアが声をかけて来た。
「リシェルちゃんの事…どうするの?」
「………何もせずにそっとしておくのが良いだろう…」
「…本気で言ってるのそれ?」
「彼女の様な真面目な者には真っ当な道を進んで欲しいだけだ…我輩といる事は彼女にとって悪影響になりかねん。」
「…そう言う心配なら要らないと思うわよ?とっくに手遅れだと思うし。」
「ん?どう言う事で…」
「や、やめてください…」
詳細を聞こうとしたその時、リシェル殿の声が聞こえてきた。
振り返って見ると、リシェル殿が高級そうな服を着た長身の男性に纏わり付かれているのが見えた。
「貴方の様な美しい女性に傍にいて欲しいのです…さぁ、僕の手を取って。」
「わ、私は…その…ごめんなさい…」
「何故です?僕には使い切れないほどの金に国一番の実力…そして何よりも、他の追随を許さぬ美しさがある…こんな完璧な僕に不満があるのですか?」
「うぅ…助けて師匠…」
…なんだか知らんが、今無性に腹が立っているである…
「さて、どうするのかしら?」
「…我輩は彼女を弟子にした覚えはないし、彼女の事を特別気に入っているわけでもない……だが。」
弥生から木刀を借り、ゆっくりと席を立ち上がる。
「個人的にあの男が気に食わない、理由はそれだけで十分だ。」
「ほう…面白そうな事をしているな、私も混ぜろ。」
「むっ?……っ!?お前は…!」
我輩にそう提案してきた奴は……この前の襲撃者だった。
何故奴がここに…
「どう言うつもりであるか…」
「別に貴様をぶち殺しに来たわけじゃぁない、たまたまここで酒を飲んでいたら五月蝿いのがやってきて物凄く機嫌が悪いだけだ。」
そう言う彼女はかなり殺気立っているようで、今近づいたら両断されかね
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